思わず息をのんでしまうほど、美しく繊細な“ギョウシェ”装飾! フェイス上部の、アーチ状にあいた窓に時刻が表示される「ルイ・ヴィトン」の独創的な本格機械式ウォッチコレクション、『タンブール コンバージェンス』から、芸術品と讃えるにふさわしい新作が誕生しました。

独創的な時刻表示を優美に演出する、圧巻の“ギョウシェ”装飾

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「時の流れとさまざまな要素の融合(コンバージェンス)」というテーマを深く掘り下げ、独創的な時刻表示で表現した『タンブール コンバージェンス』の最新作。(C)Chelsie Craig

時刻を表示する“文字盤”のほとんどをゴールドに代表されるプレシャスなメタルで覆い、上部にあけられたアーチ状の小窓の上部に時(アワー)、下部に分(ミニッツ)が表示される ── そんな大胆な意匠の『タンブール コンバージェンス』が登場したのは2025年。それから約1年を経て、今回発表されたのは、“ギョウシェ”装飾という伝統技法を讃えるアートピース。

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サイドから見ると、職人の手仕事による“ギョウシェ”装飾の芸術的な美しさがより際立つ『タンブール オトマティック コンバージェンス ギョーシェ』。

いわゆる“高級時計”の主に文字盤に用いられることが多い“ギョウシェ”装飾は、この連載をはじめPreciousの時計の記事でもよく目にすると思います。しかし、そもそも“ギョウシェ”装飾とは? シルバーやゴールドといった金属の表面に、規則的に繊細なパターンを彫り込む手法で、一般的には“ギョウシェ彫り”と呼ばれることが多いかもしれません。

考案したのは「ブレゲ」の創業者であり天才時計師であるアブラアン-ルイ・ブレゲ。彼が18世紀に生み出したこの伝統的な装飾技法は、現在も実に多くのウォッチメゾンがそのクリエイションに採用しています。ただ、現在の“ギョウシェ”装飾、表現はあまり美しくありませんが、そのクオリティは実は“ピンキリ”というのが実情。

本来の“ギョウシェ”装飾を施すには、“手動旋盤”という専用の機械と、それを使いこなす高度な職人技が必要です。そのため、それらを所有していないメゾンは、機械で加工したり型押しして量産しています。もちろん、その出来栄え、美しさは、伝統的な手法で施される“ギョウシェ”装飾とは違い味気ないものに。

なので、昔ながらの“手動旋盤”という機械も、それを使いこなす職人の存在もとても貴重なもの。ジュネーブに構える「ルイ・ヴィトン」のウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」は、そのどちらも擁しており、伝統的な“手動旋盤”で掘られる“ギョウシェ”装飾の技巧を讃えるべく、今回のこのクリエイションを生み出したのです。

メゾンの情熱を語る確かなサヴォアフェール(匠の技)

2種類の“ギョウシェ”装飾を施した『タンブール オトマティック コンバージェンス ギョーシェ』。

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ふたつの窓の間にあしらわれたマーカーによって直感的に時刻を読み取ることができるという実用性も、デザインの一部に溶け込む。

ひとつ目は、外周に光の輪のように広がる同心円状の波紋。この装飾によって新たな立体感が生まれ、直径37mmというサイズより引き締まって見えるように感じます。そしてふたつ目は、時刻表示窓から放射状に広がるグラマラスな曲線。実際に手にすると、まるで小さな太陽のような強い輝きと存在感に圧倒される一方、常に移ろいゆく陽光の強弱のような繊細なニュアンスに胸が高鳴ります。

驚くことに「ルイ・ヴィトン」のウォッチメイキングアトリエでは、このクリエイションを実現するために、19世紀半ばから20世紀初頭のアンティーク機械の修復から着手。機械1台につき約1年もの期間を要したといいます。

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使用されているふたつの“手動旋盤”のひとつ、1935年製の機械。今作の中心にある模様などの、直線的モチーフに使われている。(C)Piotr Stoklosa

“手動旋盤”を用いての作業後、さらに手作業で研磨するため、最終的なエングレービングの深さは、一般的な文字盤の“ギョウシェ”装飾のほぼ3倍に。より深く彫ることで線のシャープさと明瞭なエッジが生まれ、鮮やかなコントラストと豊かな質感が唯一無二のクリエイションを創出しているのです。

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ケースバックはサファイアクリスタル製。“ローター”と呼ばれる扇状の部品のデザインにもエレガンスが香る。

『タンブール コンバージェンス ギョーシェ』1本につき、エングレービング作業の時間だけでも約約16時間に及びます。そう、このケースは「メティエダールを現代のウォッチメイキングのビジョンに完全に組み込む」というメゾンの情熱の証となっているのです。

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『タンブール オトマティック コンバージェンス ギョーシェ』¥8,965,000 ●ケース:ローズゴールド ●ケース径:37mm ●ストラップ:カーフレザー ●ムーブメント:自動巻き (C)LOUIS VUITTON

前述したように、アンティークの“手動旋盤”を修復することから始まった『タンブール オトマティック コンバージェンス ギョーシェ』のメティエダールの物語。もしかしたら、「現代のテクノロジーをもってすれば、そんなアナログなこと必要ないのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれません。私も以前はそう思っていました。

でも、驚くことに、アンティークの“手動旋盤”でしかかなえることができない装飾表現というものは、このように確かに実在しています。その証拠に「ルイ・ヴィトン」同様、世界の頂点に立つ名門ウォッチメゾンでは、長い間受け継がれてきた“手動旋盤”とそれを扱うことができる職人を自らの至宝として重んじ、次の世代への継承に尽力しているのです。


今回はメゾンの卓越した“ギョウシェ”装飾が目を奪う新作、『タンブール オトマティック コンバージェンス ギョーシェ』をご紹介しました。2026年はさらに意欲作の発表が控えている「ルイ・ヴィトン」。ニューモデルが発表され次第お届けする予定です。お楽しみに!

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ルイ・ヴィトン クライアントサービス

TEL:0120-00-1854

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この記事の執筆者
東京都出身。大学在学中から雑誌『JJ』などで執筆活動を開始。女性向け本格時計のムックに携わったことから、機械式時計に開眼。『Precious』などの女性誌において、本格時計の魅力を啓蒙した第一人者として知られる。SIHHとバーゼルワールドの取材歴は、女性ジャーナリストとしては屈指のキャリアの持ち主。好きなもの:海、ハワイ(特にハワイ島)、伊豆(特に下田)、桑田佳佑様、白い花、シャンパン、純米大吟醸酒、炊きたてのご飯、たまご、“芽乃舎”の野菜だし、“エルメス”のバッグと“シャネル”の靴、グレーのパーカー、温泉、スパ、素敵旅館、村上春樹、宇野千代先生、神社、日本の陶器(特に唐津焼)、朝ドラ、ドラミちゃん、長文のインタビュー原稿