「共存」と「多様性」の価値観を明確に打ち出したファーストコレクション
2026年2月25日、「フェンディ」本社にあるショー会場に一歩入ると「Less I, more us(“私”よりも、“私たち”)」という大きな文字がグラフィカルに、ステージに描かれているのが目に飛び込んできました。
2026年秋冬から「フェンディ」のチーフ クリエイティブ オフィサーになったマリア・グラツィア・キウリが初のコレクションに掲げたモットーです。
マリアらしい仕事への姿勢を表すこのモットーは、同時にフェンディ家の5姉妹が築き上げた伝統を再確認させる重要な言葉でもありました。
共に働くことの価値、共通の目的と願望、お互いの価値観を共有する多様性。それはまさにマリアが目指すこと、フェンディ家がこれまで成し遂げてきたことのエッセンスでもあります。
フェミニンとマスキュリンの概念が共有された注目のクリエイション
かっちりした黒のスーツからスタートしたコレクションは、マスキュリンな形式を取りながらも、フェミニンな軽やかさ、艶やかさを巧みに取り入れ、時には、若々しいベストとキュロット、ボヘミアン風のカラフルな刺繍なども入り、とても女らしく繊細で官能的でさえありました。
カラーは絞られ、黒を中心に、スキンベージュ、黄色のアクセント、オリーブを少し。黒のテーラードスーツが、スカート、パンツと変化し、白のシャツは黒のレースのスカートと合わされ女っぽく、胸元にはチョーカーのアクセントを。
今季はほとんどのルックにチョーカーやペンダントがつけられたのが印象的でした。なかでも特筆すべきはシャツ襟のチョーカー。
素肌の上に羽織ったジャケットにシャツの代わりに襟だけをチョーカーにして、あたかも「フェイク」シャツのように着こなすアイディア。マニッシュの象徴のようなシャツを逆手に取って、上質のエロティシズムに変換したマリアの手腕は、ベテランであるからこそ、品よくスタイリングできたものでしょう。
もう一つはカッティングの美しさ。唯一登場した「赤」のドレスは。優れたカッティングのみで作られたと言っていいほど、シンプルありながら、妖艶で驚くほどのフィット感。アトリエの職人技なくしては作ることができない、完成度の高さを感じさせました。
そして、マリアによる今季の最大の見どころは、毛皮に対するさらなる親密なアプローチにあるでしょう。「フェンディ」の真髄は毛皮にあります。コレクションには常に必ず、何かしら女心をときめかすファーの提案がありました。
今季は、いきなりゴージャスな毛皮のコートを出すわけではなく(メンズは大胆なコートが提案されていましたが)、ウイメンズでは、それを一層きめ細やかに華やかに、チョーカーなどのアクセサリー、スタッズ付きのファーベスト、トリミングなどに用いたコートなど、若々しい日常のワードローブに落とし込んで見せたのです。
毛皮の魅力をマリアのスタイルで、静かになじみやすく語り始めたのです。
フェンディ5姉妹が生み出したシスターフッド(女性同士の絆)に、マリア・グラツィア・キウリの伝統へのリスペクトと共感が加わり、「美しさへの探究」の物語が再出発する、始まりのコレクションだったと言えるでしょう。
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- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)

















