サインボードもない入口は、なんともクール。しかし、ガラスの扉を開けると、視界に入る白壁と明るい木目の色調の北欧風インテリアに心が和む。そして、カウンターの向こうから軽い会釈で歓迎してくれるのは店主の加瀬健二さんだ。
ソムリエの資格を持つ店主が自らおもてなしをしてくれるプレシャスなワインバー『バパパ』
時が経つのを忘れさせるゆったりとした6席のカウンター
『バパパ』のある千代田区一番町は、メインの通りから少し奥に入れば、瀟洒な屋敷やマンションが並ぶ高級住宅街。そんな土地柄から、凝ったワイン・ラヴァーが常連の敷居の高い店かも、という先入観を抱く。ところが、「ワインのウンチクにこだわる方は、それほど多くはありません」と加瀬さん。ならば、肩の力を抜いて、一杯目のワイン選びの相談から店主との会話が始まる『バパパ』での時間を楽しんでみよう。
ワインラヴァーたちの間で評判のコラヴァンを使う
『バパパ』のワインセラーに用意されているワインは、基本、一杯ずつ楽しむグラス•ワインのためのもの。。集められているのは、国や地方にはこだわらないが、若いワインではなく、こなれた味わいが楽しめる年代のもの。もちろん、セレクトはソムリエ歴10年の店主・加瀬さん。ちなみに、取材当日のおすすめワインには、1989年から2011年までワインが並んでいた。
『バパパ』のもうひとつの個性は、ワイン・バーにしては珍しく、品数は多くはないが前菜やメインの料理がメニューに並ぶこと。その料理をつくるのも加瀬さんなのだ。
カウンターの席に着いたら、まずは、その日に気分にあったグラス・ワインを一杯。美味しいワインで気持ちも疲れもほぐれてきたら、深夜とはいえ食欲も出てくる。加瀬さんの料理は、旬な季節の食材を使い、ソースや出汁も手作りという丁寧なもの。彩りも美しく、なにより優しい味わいがある。そのせいか、仕上げの料理の定番“カニライス”まで、しっかり食べる客も多いという。
彩りも美しい旬の食材を使った料理
実は、ソムリエとして必要とされる高いワインの知識の習得も、料理についても、まったくの独学という加瀬さん。そんな秘めたプロフィールも、通ううちに会話にのぼるかもしれない。それもまた楽しみだ。
ひとつおすすめの情報を。それは毎日夕方6時頃にフェイスブックに更新される加瀬さんの書き込み。ある日のコメントはこんな一文。
「2000 クロ・ド・ラ・ロッシュ/ルイ・レミー ごく一部のワインの、ある限られた季節にはワインというカテゴリーを超えた魔法のような魅力があるものですが、こちらのワインは今まさにそんな頃合いかも知れません。きっと、人生に余韻を残すワインです。本日もよろしくお願いいたします。」
仕事が長引いた日や、会食のあとにひとりで飲みたい時などに、こんな魔法のような魅力のあるワインのコメントに心惹かれて『バパパ』に向かうのもいい。気づいたら、いつか常連になっている、そんな店なのだ。
※価格は税込みです。
問い合わせ先
- バパパ bapapa TEL:03-3238-0155
- 東京千代田区一番町23-2 番町ロイヤルコート101
営業時間/月:18時~26時 土:18時~24時
定休日/日曜日
アクセス/半蔵門から徒歩約2分
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 小倉雄一郎