今月のMs.Precious……千葉県のとある寺院に嫁いで来年で20年を迎える45歳。昔も今も、クルマがなくては生活できないエリアで暮しているため、18歳で免許を取得してからずっと何かしらに毎日乗ってきた。子供たちの塾や習い事の送迎もあり、現在実用車として使っているのはアルファード。住職である夫は自動車雑誌を5誌定期購読するかなりのクルマ好きでレア車を買っては手放してを繰り返すものの、檀家まわりをする際には世間体を気にしてもっぱらプリウスかスーパーカブを繰る常識人。自宅から少し離れたところにガレージがあり、所有するスポーツカーやビンテージカーを常時5台ほど保管している。最近になって「もう”若い嫁”というわけでもないし、レンジローバーに乗っていても嫌味な感じはしないでしょう」と、日々の足の買い替えを画策中。声高には言えないが、息抜きはひとりで巡る神社&パワースポット探訪。

今月のクルマ……【RANGE ROVER SPORT SV EDITION TWO P635】
時は1948年。泥と砂利道のために生まれた無骨な実用車の誕生から、ブランドの物語は始まります。当時、世界の僻地を走り抜けた「タフな英国車」が、やがて比類なき格を纏うことになるとは、その頃誰が想像したでしょう。転機は1970年の初代レンジローバーの登場。ここから実用の領域を静かに越え始めます。洗練された乗り心地が英国上流階級の心を掴み、ロイヤルファミリーが私有地で駆る姿が、いかなる広告よりも雄弁にブランドストーリーを表現して見せたのです。2001年の第三世代で技術水準がぐんと上がると、メカニズムの精密さと英国貴族のオーラが共存する唯一無二の個性が完成します。グローバル・ラグジュアリーSUVとしての地位を確立してなお、世界屈指のオフロード性能を内に秘めていること――それは、オーナーだけが噛みしめる静かな矜持となりました。今回登場するレンジローバー スポーツは、ブランドの系譜からすれば最も「はみ出した」1台と言えるでしょう。まるでクチュールメゾンが発表したストリートラインが本家を超える熱狂を生むかのように、アグレッシブなフォルムと研ぎ澄まされた走りは、「イメージのギャップそのものがクール」と世界のリッチなアスリートやクリエイターたちを虜にしました。レンジローバーとは、品格とともにそれを体現できる稀有なブランドなのです。

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「レンジローバーならレンジローバー スポーツ、その中でも一番運動性能のよいモデルに乗りたいのです」――Ms.Precious

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「いつもすれ違うたびに大きいなあと感じていましたが、間近で見るとやっぱり迫力あります。マット✕ネイビーが素敵です」(Ms.P)

Ms.Precious はじめまして、よろしくお願いします。

松任谷 よろしくお願いします。いきなりですが、このSVエディション2をご指定になった理由をお聞かせいただいてもいいでしょうか?

Ms.Precious はい。今から数年前にエディション1を注文出来なかったからです。

松任谷 ほお、もう高性能モデルに的は絞っていらっしゃったんですね?

Ms.Precious そうですね。レンジローバー・ブランドならレンジローバー スポーツだったし、レンジローバー スポーツだったら一番運動性能のいいモデルにしたかったんです。

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「直線基調のデザインがシンプルで好みです。スポーティかつモダン、かつ上品なイメージです」(Ms.P)

松任谷 失礼ですけれど、現在は何にお乗りですか?

Ms.Precious よく乗っているのはポルシェです。

松任谷 モデルは?

Ms.Precious 911カレラ4です。

松任谷 ということは何台かお持ちということですね?

Ms.Precious そうですね。主人もクルマ好きですし、古いクルマを合わせると何台になるのかしら……。

松任谷 それは失礼しました。そんなエンスージャストだったとは知らず。

Ms.Precious いえいえ、私の方はそんなに詳しい訳でもなく、単純にクルマ好き夫婦というだけです。

松任谷 古いクルマの方も運転なさるのですか?

Ms.Precious 私に動かせないクルマもありますけれど、アルファロメオ スパイダーなんかはたまに動かしてます。

松任谷 コーダトロンカですか?

Ms.Precious いえ、デュエット。古いやつです。

松任谷 ああ、あの丸いお尻は可愛いですね。

Ms.Precious 私もそう思います。あれが一番きれい。ただ、シフトは1速に入れる前に2速を舐めないとギア鳴りがするとか、いろいろ作法がありますよね。

松任谷 ええっ……そんなことまでご存じなんですね。これは参ったなあ。

Ms.Precious マニュアル車がなくなっていくのは寂しいですよね。

松任谷 本当にそうですよね。でも電気自動車の時代になって、シフトがあったら何だか変ですよね。そういうギミックは出てくるのかなあ……。

Ms.Precious 現代のスポーツカーの多くが作られている音を出しているって聞きますけど。

松任谷 そうですね。それを専門でやっている技術者達もいるみたいですね。

Ms.Precious どうやってわかるんでしょうか。

松任谷 それはメカニックに聞けば分かると思いますよ。音を出すためには音を出す装置とスピーカーが必要ですからね。

Ms.Precious やっぱり音はクルマには必要だと思われますか?

松任谷 難しい質問ですね。僕なんかは運転していると音からの情報はありがたいと思うけど、ドライバー以外は静かな方がいいですよね。

Ms.Precious このクルマはどうなんでしょうか?

松任谷 実は分かってないんですけれど、スポーツモードにした時に勇ましい排気音が後からではなく、クルマの中心あたりから聞こえてくるのでスピーカーかな、とちょっと思っているんですけど。

Ms.Precious それって専門家でも分からないものなのですか?

松任谷 今は巧妙に出来ているので自信ないですね。それに僕は音楽を作る人間であって音の技術者とはちょっと違うし。

Ms.Precious このクルマは数日お乗りになってたって聞きましたけれど、どれくらい乗られたんですか?

松任谷 いや、ちょっとだけです。それでも箱根程度までは行ってきましたし、渋滞もひととおり経験したので、ある程度はお話し出来ると思います。とりあえず運転席の方にどうぞ。

Ms.Precious きれいな色ですね。

松任谷 ブルーネブラ、と言うらしいです。マット塗装はお好きですか?

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「マットなクルマは最近よく見かけますが、ほとんどがラッピングだそうで。この後1日お借りしたのですが、これはちゃんとマット塗装だね……とクルママニアの夫が感心していました」(Ms.P)

Ms.Precious 私には新鮮ですね。でもこれはワックスとかはかけられないですよね。

松任谷 かけなくていいような気がします。僕も1台マット塗装のものを持っているんですけど雑巾で拭くだけ。楽ですよ。

Ms.Precious でもちょっと擦ったら目立ちそう。

松任谷 ああ、それはあるかもしれませんね。でも真っ黒よりはいいんじゃないかな。そしてこれがキーです。この迫力のクルマにしては意外にコンパクトなキーですよね。

Ms.Precious シンプルでいいですね。これはキーを持っているだけで感知してドアノブが出てくるんですか?

松任谷 そうですね。ドアノブって案外空力に影響するらしく、最近このような埋め込み型が増えてきたように思います。

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「クラシックなクルマもよく乗るので従来のドアものに愛着がありますが、ドアハンドルが格納された時の平面デザインがシャープでモダンで素敵。そういったフォルムを表現するためにもこの機能は必要不可欠なのですね」(Ms.P)

Ms.Precious ドアを開けるとこのステップが出てきてくれるのはありがたいわ。

松任谷 そうですね。僕はもうこれがないとよじ登れないかも。

Ms.Precious 何をおっしゃってるんですか。まだまだお若いですよ。

松任谷 このあいだ人気の軽トラックに乗ったんですけど、乗りやすくて、お年寄りが軽に乗る気持ちが実は少し分かってきたんですよね。

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「このステップは本当に便利ですよね。あるのとないのでは大違い。車高が高いクルマって、運転席でも助手席でも乗り降りがストレス……と、ほとんどの女性が思っているんじゃないかしら」(Ms.P)

Ms.Precious まだ少し早いと思いますよ。運動はなさってないの?

松任谷 ジョギング程度は……。

Ms.Precious 走れているなら大丈夫。問題ないです。

松任谷 では気を取り直して……走りましょうか。

Ms.Precious 運転席周りはスッキリしていますね。ステアリングホイール上以外にボタンがひとつも見当たらないわ。

松任谷 スタートボタンがここに。

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「乗った瞬間わかる、ゆったりとした感じがいいですね。その広々としたところがレンジのよさなのかも。インテリアの配色もエクスクルーシブな感じがします」(Ms.P)

Ms.Precious あら、見落としていました。こんなところにあったのね。ではエンジン掛けてみますね。
 
ブロロロロ……
 
松任谷 結構勇ましいですよね。夜中や早朝とかはちょっと気が引けるんですが、モードをコンフォートにしておけば割合すぐにおとなしい音に変わります。

Ms.Precious 今はこういう感じの音のクルマが多いですよね。

松任谷 こういう感じというと?

Ms.Precious なんというのかな、吼えるというよりは唸るというか。

松任谷 やはり高性能車に乗られることが多いんですね。こういう音は高性能車の特徴でもありますから。でもやがてもっと静かになって行くような気がします。むしろエンジンはかからずに家を出て行く時はモーターだけで音もなくスルスルと出ていくようなスポーツカーも増えてきましたからね。

Ms.Precious でも、そういうクルマってエンジンの暖気はどうなるのかしら。

松任谷 うーん、さすがに古いクルマのこともご存じだから、そこは心配になりますよね。はっきり言って僕にも分かりません。最近のエンジンは制御とかでうまくカバー出来るのではないでしょうか。それに温まらないうちは回転を上げないようにウォーニングが表示されるクルマもありますよね。

Ms.Precious 走り出していいですか?

松任谷 もちろんどうぞ。

「コーナーでロールしないし接地感が抜群にいいからこんなスピードでも涼しい顔して曲がって行っちゃう」――松任谷

Ms.Precious あら、素敵。

松任谷 いい感じですか?

Ms.Precious 魔法の絨毯みたい。滑らかですね。

松任谷 これを硬い、というやつもいるんですよ。でも普段硬いクルマに乗り慣れてらっしゃるから、このクルマの真骨頂でもある特殊なサスペンションの感覚がお分かりになるんですね。

Ms.Precious どう特殊なんですか?

松任谷 同じ発想のものは昔からあるんですけど……アウディの高性能モデルとか、マクラーレンとかが使っているような、4輪のダンパーをオイルラインで結んでスタビライザーの代りにするんですよね。レンジローバーはこれを6Dダイナミクスエアサスペンションと呼んでいるみたいですけど。だから締ってはいるけれど流体の柔軟性があるんですよね。

Ms.Precious ただ、クルマは重く感じますね。

松任谷 実際重いです。2570キロありますから。それを635馬力のツインターボエンジンで強引に持って行くタイプだから。なにせ0-100キロ加速は3秒台ですよ。2570キロを3秒台ってポルシェならともかく、レンジローバーまでこんなクルマを作っちゃうんだ、って感じです。

Ms.Precious そうですね。レンジローバーはもっと穏やかなイメージですよね。英国王室がパレードでも使うようなクルマですもの。

松任谷 レンジローバースポーツって、割合立ち位置が難しいクルマだと思っていたんです。イヴォークが出たり、ヴェラールが出たりして、無くなっちゃうのかな、と思っていたら、こういうやり方で来たという……。

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「お借りした後、ガソリンスタンドで洗車に出したら、『このホイールのカーボンって貼ってあるんですか? 芯までカーボンですか?』って聞かれたの。オールカーボンですよって言ったらめちゃくちゃ驚かれました。この車重を支えているってすごい!と」(Ms.P)

Ms.Precious 燃費はどうなのかしら。

松任谷 実際計った訳ではないので何とも言えませんが、メーターの表示ではリッター4キロとか5キロとか、と出てますね。

Ms.Precious ガソリン代が急騰しているから、今の時代には逆行していますかね。

松任谷 それは微妙なところですね。でも今はクルマが狭間の時代だから、これはこれで時代を象徴しているような気もします。

Ms.Precious 普段は出来るだけ歩くようにしているので許してもらおうかな。で、これはモードスイッチですか?

松任谷 そうですね。今はコンフォートだけど、スポーツモードにすると音が大きくなり、足が硬くなり、アクセルのマッピングもシフトタイミングも変わります。その上のSVモードにすると、さらにそれが強調されますね。それでもやはりこのサスペンションのせいでゴリゴリにはならないんですね。どこまでもしっとりとした感覚です。

Ms.Precious 確かにそうですね。さて、と……峠道に来たので、松任谷さん、運転代わってもらえます?

松任谷 えっ? これこそ、このクルマの特徴が分かる場所ですよ? いいんですか?

Ms.Precious 助手席はどうなのか味わってみたいんです。

松任谷 わかりました。

・・・・・・・・・・(暫し沈黙)
 
Ms.Precious すごい、ですね。声が出ません。

「スポーティなのにラグジュアリー。僕はこれを“スポージュアリー”とでも呼びたい」――松任谷

松任谷 これ、僕が運転が上手い訳じゃなくて、クルマがすごいんですよ。コーナーでロールしないでしょ? そして接地感が抜群にいいからこんなスピードでも曲がって行っちゃうんです。しかも涼しい顔をしながら。

Ms.Precious ポルシェでもこんなに速くコーナーを曲がれるのかしら。

松任谷 そうですよね。スポーツカーも真っ青ですよね。こういうクルマを何と呼んだらいいのか本当に困るんです。

Ms.Precious で、私思ったんですけど、助手席が素晴らしくいいんです。運転席よりもさらにいいわ。

松任谷 そうですよね。ハンドルを握っていないぶん、振動は感じないですよね。手のひらってすごく敏感だったんだなって改めて思います。

Ms.Precious もう、これ欲しいってなりました。これで日本中の神社巡りとかしてみたいです。

松任谷 えっ? 神社がお好きなんですか?

Ms.Precious そうですね。日本のルーツが見えるような気がしませんか?

松任谷 なるほど、レンジローバースポーツで神社巡りはちょっと合っているかもしれませんね。

Ms.Precious これ、今注文出来るんでしょうか?

松任谷 分かりませんけどちょっと聞いてみましょうか?

Ms.Precious よろしくお願いします。

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今月のクルマ
【RANGE ROVER SPORT SV EDITION TWO P635】

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,970×2,025×1,815mm
車輛重量:2,590kg(カーボンホイール装着時2,570kg)
車両本体価格:¥24,740,000(標準仕様車¥12,960,000[ベース価格]~)
※2026年4月1日以降価格改定あり 

今回の試乗車両は限定モデルですが、2026年モデルからカタログモデルとしてラインアップされ、現在も購入可能です。
RANGE ROVER SPORT SV P635、SV BLACK、SV CARBONの3種類があり、スタート価格は¥12,960,000~となります。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ジャガー・ランドローバー・ジャパン

TEL:0120-18-5568

この記事の執筆者
1951年、東京都生まれ。1974年 慶應義塾大学・文学部卒。4歳からクラシックピアノを習い始め、14歳の頃にバンド活動を始める。20歳でプロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド「キャラメル・ママ」「ティン・パン・アレイ」を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして松任谷由実、松田聖子、ゆず、いきものがかりなど多くのアーティストの作品に携わる。1986年には音楽学校「MICA MUSIC LABORATORY」を開校。ジュニアクラスも設け、子供の育成にも力を入れている。松任谷由実のコンサートをはじめ、JUJU、平原綾香など様々なアーティストのコンサートやイベントを演出、映画、舞台音楽も多数手掛ける。2021年よりバンド「SKYE」に参加。日本自動車ジャーナリスト協会に所属し、長年にわたり『CAR GRAPHIC TV』(BS朝日・毎週木曜23:00~)のキャスターを務める他、『日本カー・オブ・ザ・イヤー』の選考委員でもある。ラジオ『松任谷正隆のちょっと変なこと聞いてもいいですか?』(TOKYO FM・毎週金曜17:30~)にも出演。好きなもの:朝のお茶の時間、夜の昼寝。