日本全国に温泉宿は数多あれど、情報の海のなかから本当に満足度の高い一軒を見つけ出すのは至難の業。そこで、本連載では、国内外の温泉を巡りその神髄を知り尽くした温泉ジャーナリスト・植竹深雪さんに、自ら足を運び五感で確かめた上質な宿をピックアップしてもらいました。

極上の湯に癒されるのはもちろん、その土地ならではの美食やホスピタリティで心ゆくまでリフレッシュしたい! そんな大人の女性のニーズに応える至福の旅をナビゲートします。今回ご紹介するのは山形県・肘折温泉にある「丸屋旅館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の4000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『おとな「ひとり温泉旅」のススメ』(三笠書房)、『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

開湯1200年の歴史が息づく湯治場で体の内外からリフレッシュ

山形県最上郡、霊峰・月山の麓に位置する肘折温泉。開湯1200年を超える歴史を誇り、その名の由来は、肘を折った老僧が、この地に湧き出る湯に浸かったところ傷が癒えたという伝説にあるとされています。その素朴な湯治場の風景のなかで、ひときわ凛とした美しさを放つのが、今回ご紹介する「丸屋」。明治元年創業の老舗でありながら、現代の旅人にふさわしい意匠と快適さを兼ね備えた全7室の宿です。

外観
ノスタルジックな佇まいの玄関。
館内
玄関を入ってすぐの帳場。和紙照明が温かみのある雰囲気を演出する。

「こちらの宿は古きよき日本建築にリノベーションが施され、懐かしさとモダンさが融合した空間が魅力的。これからの季節はとれたての山菜料理もいただけるので、体の外側からも内側からもトータルでケアしたい人に好適だと思います。

泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。天然の保湿成分をサポートするメタケイ酸も豊富で、肌によくなじむ湯です。また、炭酸水素塩泉は三大美人の湯泉質のひとつで、湯上りにさっぱりとした清涼感を得ることができます」(植竹さん)

ひのきの湯
「ひのきの湯」。
檜葉の湯
「檜葉の湯」の内湯と露天風呂。

大浴場は、「ひのきの湯」と「檜葉(ひば)の湯」の2種。それぞれ名前のとおり、ひのきと檜葉が使われ、木の温もりや香りにも癒されます。宿全体の客室数が少なく大浴場でも混み合うことはありませんが、さらにプライベートな湯浴みを求めるなら、貸切風呂「幸鶴(こうかく)の湯」へ。人目を気にすることなく、ただひたすら名湯と対峙するひとときは日常の喧騒を忘れさせ、至福の境地へと導いてくれます。

貸切風呂「幸鶴の湯」
貸切風呂「幸鶴の湯」。
客室一例
客室一例。

山菜やきのこが主役!個室の食事処で季節の滋味を噛み締める

「丸屋旅館」の料理の主役は、霊峰月山から湧き出た水で育まれた山菜やきのこ。客室ごとに用意された専用の個室にて、周囲を気にせず落ち着いて山の恵みを味わうことができます。

個室の食事処
個室の食事処。
山菜一例
山菜一例。

こちらの宿では、春に収穫した山菜を塩漬けにして年間を通して提供していますが、4~6月はとれたてのみずみずしい状態をいただけるのが格別。ふきのとうやわらび、しおで、こしあぶら、ぼうな、しどけ、あいこ、こごみなど、種類ごとに異なる風味をたたえた山菜は、冬の間に溜め込んだものを排出して体を目覚めさせるデトックス効果も期待されます。

扱いの難しい山菜を丹念に下処理し、えぐみを抑えながら持ち味を引き出すのは、まさに料理人の腕の見せどころ。一皿ごとに素材の持ち味を余すことなく生かした繊細な仕事が感じられます。

山菜料理
山菜料理一例。
国産ステーキ
国産ステーキなどの提供もあるが、主役はあくまで山の幸。

また、地元の食文化をより身近に感じたいなら、ぜひ訪れたいのが肘折温泉名物の朝市。温泉街の通りに並ぶ素朴な露店では、とれたての山菜をはじめ、漬物や手作りの惣菜などが並び、地元の人々との温かなやり取りも楽しめます。丁寧に仕立てられた宿の料理と、土地に根ざした素朴な味わいの双方に触れることで、肘折温泉の奥深い魅力をより実感できるはずです。

肘折温泉の朝市
肘折温泉の朝市。

以上、肘折温泉「丸屋旅館」をご紹介しました。名湯と山の恵みにじっくり向き合って心身を整えたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 丸屋旅館
  • 住所/ 山形県最上郡大蔵村南山519
    客室数/全7室
    料金/朝夕2食付き 2名1室1名 ¥24,200~(税込)
  • TEL:0233-76-2021

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)