【目次】
【「美術展の日」とは?意味と由来】
■「いつ」?
「美術展の日」は、毎年4月9日です。
■「由来」は?
1667年4月9日に、フランス・パリで世界初とされる美術展覧会が開催されたことを記念する日とされています。
■「意味」
「美術展の日」の由来とされるのは、1667年4月9日、フランス・パリで開催された展覧会です。これは、王立絵画彫刻アカデミー(Académie Royale de Peinture et de Sculpture)が主催したもので、のちに「サロン・ド・パリ」へと発展していく、美術展覧会の原型のひとつとされています。
この試みは、芸術作品を広く公開するという点で画期的なものであり、現代の「美術展」のルーツとして位置づけられることもあります。ただし当時は、芸術が依然として王侯貴族や限られた階層のものであったため、一般大衆の関心は必ずしも高いものではなかったといわれています。
1667年といえば、「太陽王」の異名を持つルイ14世の治世下。フランスは政治・文化の両面で絶対王政の最盛期を迎えており、ヴェルサイユ宮殿の造営が進むなど、国家の威信を示す文化政策が推し進められていました。こうした時代背景のなかで生まれた展覧会は、やがて「芸術を公開し、共有する」という現在の美術館文化へとつながっていきます。
「美術展の日」は特定の公的団体によって制定された記念日ではありませんが、春の行楽シーズンと重なることから、美術館巡りを推奨する、文化的なトピックとして語られる記念日です。
【「美術展」とは?基礎知識と楽しみ方】
■そもそも「美術展」って何?
美術展の日をきっかけに、美術展とは何かを改めて理解しておくと、鑑賞の楽しみがより深まります。
「美術展」は「美術展覧会」の略称です。特定のテーマや作家を取り上げて美術作品を展示し、一定期間展示する催しです。主にふたつの形式があります。
常設展(所蔵作品展)
その美術館が所有しているコレクションを展示するもの。
企画展(特別展)
特定のテーマや時代、作家に焦点を当て、各地から作品を集めて期間限定で開催するもの。
■鑑賞をもっと楽しくする3つのポイント
音声ガイドを活用する
作品の背景や作者の意図、当時の時代背景などを専門家や著名人が解説してくれる、美術展の「音声ガイド」。最近ではアプリで自分のスマートフォンから聴けるタイプも増えていますね。「ややくだけたもの」と「専門的なもの」など、2種類の解説が用意されていることもあり、一緒に訪れた人同士、あとから内容を比べてみるのも楽しいものです。
「今日の注目作品」を決め打ちして臨む
特に、広い会場の場合、すべての作品を完璧に理解しようとすると疲れてしまいます。「本日の目玉展示」の前に集中力が切れてしまったり、時間切れになってしまうのを防ぐためにも、最初に展示内容をざっと把握しておくのがおすすめです。
図録やポストカードをチェックする
鑑賞後には、ぜひミュージアムショップへ。記念に気に入った作品のポストカードを手元に置くもよし、図録を購入するもよし、クリアファイルなど日常使いできるものを買うもよし。手軽な価格でセンスのよいものがあったら購入し、「ちょっとしたお礼」に活用するのも素敵です。
【「美術展の日」に訪れたい場所、過ごし方】
「美術展の日」である4月9日は、桜から新緑が目に鮮やかな季節へと移り変わる時期。この頃におすすめの過ごし方を提案しましょう。
■国立西洋美術館(東京・上野)
「北斎 冨嶽三十六景」6月14日(日)まで
江戸時代後期の代表的浮世絵師、葛飾北斎(1760-1849年)は、その斬新な構図と、自然や人物を生き生きと捉える卓越した表現力によって、日本国内にとどまらず西洋美術にも大きなインパクトを与えた人物です。国立西洋美術館の「北斎 冨嶽三十六景」は、2024年に井内コレクションより寄託された北斎の『冨嶽三十六景』(1830-33年頃)を初披露する展覧会です。
■東京国立近代美術館(東京・千代田区北の丸)
「美術館の春まつり」4月12日(日)まで
桜の絵を得意とした跡見玉枝《桜花図巻》をはじめ、雨にけぶる吉野の桜が抒情的な菊池芳文《小雨ふる吉野》、鮮やかなピンクの花弁が目をひく船田玉樹《花の夕》など、春にちなんださまざまな作品が一室に勢ぞろいするほか、水面に散る長瀞の桜を描いた重要文化財、川合玉堂《行く春》が公開されます。
■山種美術館(東京・恵比寿)
「花・flower・華 2026-横山大観の桜・川端龍子の牡丹・速水御舟の梅-」2026年5月10日(日)まで
朝日に輝く山桜を描いた横山大観《春朝》、雨上がりの陽光の中で咲く紫陽花をみずみずしく表した山口蓬春《梅雨晴》、色鮮やかな菊花が目を楽しませる酒井抱一《菊小禽図》、紅梅の咲く古木と白梅の咲く 若木とが対照的な速水御舟《紅梅・白梅》など、春夏秋冬それぞれの季節を感じさせる花の名画が一堂に会します。ぜひ多様に咲き誇る百花繚乱の世界を堪能してください。
■茨城県近代美術館(茨城・水戸)
「藤田嗣治 絵画と写真」4月12日(日)まで
藤田嗣治(つぐはる/1886-1968)氏は、エコール・ド・パリを代表する画家のひとり。 早くからカメラを愛用していた藤田氏は数千点の写真を撮影し、絵画制作にも活用しました。「藤田嗣治 絵画と写真」は、そんな彼の大規模な回顧展です。旅を愛した彼が各地で何を見つめてきたのか…その足跡を辿る貴重な機会となるはずです。
■堺市立文化館 堺 アルフォンス ミュシャ館(大阪府・堺市)
「ミュシャのある暮らし」7月26日(日)まで
淡く優しい色彩と繊細な線で描かれるミュシャの世界は、遠くから眺めるよりも、手の届くところに置いて楽しみたい──そんな思いを呼び起こします。この美術展では、最も身近な空間である「家」に焦点を当て、ミュシャがどのように家庭の日常を特別な時間へと彩ったのかが紹介されます。
■府中市美術館(東京都・府中市)
「春の江戸絵画まつり 長沢蘆雪」5月10日(日)まで
18世紀後半の京都の画家、長沢蘆雪(ろせつ/1754-1799)。ファンタスティックで不思議な風景、かわいい動物や子ども…。蘆雪が師と仰いだ円山応挙(まるやまおうぎょ)に迫る凄腕の絵もあれば、その正反対のへそまがりで愉快な絵もあります。また、蘆雪は禅の世界や仏の教えのもとに生きた画家でもありました。東京で64年ぶりとなるこの蘆雪展では、さまざまな角度から蘆雪の魅力に迫ります。
■アサヒグループ大山崎山荘美術館(京都府乙訓郡)
「開館30周年記念 没後100年 クロード・モネ展」 2027年4月11日(日)まで
開館30周年を迎える大山崎山荘美術館には、築100年を超える本館「大山崎山荘」から地下に続く通路の先に、クロード・モネの《睡蓮》を展示するためにつくられた、安藤忠雄氏設計の円形の展示室があります。この「地中の宝石箱」(地中館)に、コレクションの軸のひとつであるモネ作品が、30周年の1年間を通して全点展示されます。
■オンライン展覧会をチェック
遠方の美術館や海外の作品を、自宅にいながらデジタル鑑賞できるサービスも増えています。
Google Arts & Culture(グーグル・アーツ・アンド・カルチャー)
世界中の2,000以上の美術館・博物館と提携している最大級のプラットフォーム。ストリートビュー技術を使った館内散策や、超高解像度で筆致まで見える「ギガピクセル画像」での鑑賞が可能です。主な提携館は、ウフィツィ美術館、メトロポリタン美術館、東京国立博物館など。
ルーヴル美術館 オンライン・バーチャルツアー
フランス・パリのルーヴル美術館が提供する公式オンラインコンテンツ。「ミロのヴィーナス」がある展示室や、かつての城塞としての遺構など、テーマに沿ったバーチャルツアーが楽しめます。2021年からは全所蔵作品約48万点がデータベースで公開されており、研究者並みの検索も可能です。
かはくVR(国立科学博物館)
日本を代表する科学博物館の常設展示を、360度パノラマで楽しめるコンテンツ。誰もいない夜の博物館に忍び込んだような感覚で、恐竜の骨格標本や動物のはく製を好きな角度から鑑賞できます。VRゴーグルがあれば、より没入感のある体験が可能です。
e国宝(国立文化財機構)
国立博物館(東京・京都・奈良・九州)が所蔵する国宝・重要文化財を網羅した高精細画像サイトです。「展覧会」という形式を超え、日本の至宝を自由自在に拡大して鑑賞できます。多言語対応しており、作品解説も充実しています。
【知っておきたい「美術展鑑賞のマナー」】
美術館は、貴重な作品を未来へ引き継ぐための場所でもあります。自分も周りも気持ちよく鑑賞するために、基本的な約束事を再確認しておきましょう。
■作品にはむやみに触れない
現在、美術展ではさまざまなアプローチで美術に触れる取り組みが行われています。そのひとつとして、実際に触れて質感やかたちを味わう体験型の展示もあり、鑑賞の幅は広がっています。
とはいえ、一般的な展覧会では作品に直接触れずに鑑賞するのが基本です。彫刻や額縁も含め、手の脂や水分が付着することで、汚れや劣化の原因になることがあるためです。
展示ごとに設けられた案内表示やスタッフの指示を確認し、その場にふさわしい距離感で作品と向き合いましょう。床のラインや柵も目安のひとつ。鑑賞に集中するあまり、無意識に踏み込みすぎないよう意識しておきたいポイントです。
■写真撮影のルールを守る
近年では、館内や作品の撮影が可能な展覧会も増えています。ただし、撮影可否や条件は展示ごとに異なるため、案内表示やスタッフの指示を確認することが前提です。
フラッシュ・三脚・自撮り棒は一制限されることが多い
光による作品への影響や、周囲の鑑賞の妨げを防ぐためです。
シャッター音や操作音に配慮を
静かな空間では意外と響きます。可能であれば消音設定なども活用したいところです。
著作権と肖像権に配慮を
撮影が許可されている場合でも、SNSなどへの掲載は別ルールが設けられていることがあります。また、ほかの来館者が写り込まないよう配慮することも大切です。
■筆記用具は「鉛筆」が基本
美術館では、メモなどを取る際の筆記用具にも配慮が求められます。インクによる汚損リスクを避けるため、ボールペンや万年筆の使用が制限されている場合もあります。そのため、筆記する予定がある場合には、鉛筆を用意しておくのが賢明です。なお、シャープペンシルについては館によって扱いが異なるため、案内表示やスタッフの指示に従うようにしましょう。
■持ち物と身だしなみのマナー
大きな荷物はロッカーへ
多くの美術館ではロッカーが用意されています。大きなバッグやコートは、移動時に作品へ接触するリスクがあるため、預けておくと安心です。
足音にも気を配る
静かな展示空間では、足音が意外と響きます。歩きやすい靴を選ぶことで、鑑賞に集中しやすくなるだけでなく、周囲への配慮にもつながります。
濡れた傘は所定のへ
多くの施設で傘立てや傘袋が用意されています。水滴による床の滑りや湿度への影響を防ぐためにも、入口での対応を心がけましょう。
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かつては王侯貴族など限られた人々のものであった芸術も、いまでは美術館や美術展を通して、誰もが自由に触れられる存在となりました。なかでも近年は、オンライン展覧会の進化によって、場所や時間を超えて作品と向き合うことができる時代へと広がっています。
一枚の絵に静かに向き合う時間は、日常の速度をゆるやかに整えてくれるもの。「美術展の日」をきっかけに、芸術に触れるひとときを、自分のために設けてみてはいかがでしょうか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) :

















