【目次】
【第14回のあらすじ】
妹の市(宮崎おあいさん)を浅井長政(中島歩さん)に嫁がせ、上洛を果たした織田信長(小栗旬さん)。政略結婚でありながら、長政の人柄や穏やかに過ごす市の様子に安堵…したのもつかの間、なんと長政が織田家を裏切り謀反を起こしたという知らせが届く――と、ここまでが前回の第13回放送でした。
近江の小谷城で手元を見つめ「すまぬ」とつぶやいた長政。これは、義兄・信長から市への京土産だった銅鏡を火の中から救い出した際に負ったやけどの傷に、苦しい立場にある妻の市を重ねてのことでしょう。
金ヶ崎城の信長のもとには市からの陣中見舞い…は表向きで、織田家の窮地を無言の文にしたためたものが届きました。市は、“兄を裏切る夫”のもとに留まらねばならないのです。「命懸けでこの文を託されたのでございます。そのお市さまのお気持ちをむだにしてはなりませぬ」と小一郎(仲野太賀さん)に説得されるも、義弟の長政に亡き実弟を重ねて信頼していた信長は「なぜじゃなぜじゃなぜじゃーーーーーー」と激怒。長政の首をこの手ではねてやると言い出し、まずは朝倉を討つといきり立ちます。
この信長の怒り(悲しみ?)が沸点に到達するシーン、徳川家康(松下洸平さん)をはじめとする重臣たちの冷静さが、信長の怒りを際立たせていましたね。そして明智光秀(要潤さん)には「公方(くぼう)の飼い犬ごときがわしに指図をするな」「こたびのことも、よもや公方が仕組んだことでは?」と、それを言っちゃあおしまいよ的な暴言を吐いてしまいます。確かに足利義昭(尾上右近さん)はまったく信頼できませんが…。
結局、自ら足の甲に刀を立てて傷を負い、足手まといになる自分が金ヶ崎に留まり、敵を封じているうちに京へ戻るよう藤吉郎(池松壮亮さん)に説き伏せられ、信長は撤退を決意しました。生きて信長のもとに帰れる勝算がないにもかかわらず、「戦において最も大事なのはいかに勝つかじゃ。しかし、その次に大事なのは、いかに負けるかでござる」「殿(との)さえご無事なら、われらは何度でもよみがえりまする」この迫真の説得に、信長は鎧を脱ぎ捨て「京へ帰る!」と撤退を決意。
ここで、まだ若い家康のたぬきオヤジぶりが垣間見られましたね。「藤吉郎が名乗り出なければ自分が殿(しんがり)を命じられていたかもしれない。そうすれば生きては戻れなかっただろう、木下さまさまだ」と。底意地の悪さも秀逸! 痒み止めの薬を痛め止めだと偽って藤吉郎を労い、陰では「何事も念じれば通じるものよ」とほくそ笑む。「きぃ~っ家康め!」と思いましたが、いや待って、痛め止めだと信じた藤吉郎は結局もちこたえたのですから、ここは「家康さま、かたじけない」ですね。
暴言は信長の本心ではないと光秀に弁解する小一郎。せっかく信長が京へ戻っても義昭と仲たがいしては元も子もないからです。光秀は、この窮地を生き延びて帰京し、公方さまと信長の仲を取り成せと小一郎に告げます。しかしその後、義昭のスパイとして織田側に就く光秀はやがて…と、皆さん光秀の暗躍ぶりはご存知ですね。難しい役どころですが、要さんの光秀はグッときたりキュンとくるポイントが満載です。
殿(しんがり)という大役を果たすために必要な仲間、弟の小一郎、蜂須賀正勝(高橋努さん)、前野長康(渋谷謙人さん)、浅野長吉(大地伸永さん)、弥助(上川周作さん)、甚助(前原瑞樹さん)、そして竹中半兵衛(菅田将暉さん)と共に、金ヶ崎城に残った藤吉郎。もちろん戦略担当は半兵衛です。周辺の地形を利用しつつ、かかしの兵士や酒樽爆弾、倒木といった稚拙とも思える策は意外にも効果を発揮します。この策、勝算がない戦でも軍勢の士気を下げず、逃げ出す者を食い止めるためのものでもありました。
しかし、あと少しで信長が逃げ切れる二刻(ふたとき。約4時間)が過ぎるというころ、藤吉郎たち殿軍(しんがりぐん)の前に現れたのが長政です。和睦を勧める小一郎たちに鉄砲隊が銃口を向け、長政が「放て~!」と発砲を命じたそのとき、援護射撃に現れたのが光秀。なんと光秀も、信長から浅井軍を押しとどめるための“もうひとつの殿(しんがり)”を任されていたのです。藤吉郎は長政に「この戦はわしらの負けじゃ。だが、勝ちに等しい負けじゃ」と強がります。強がる…いや、藤吉郎の本心なのでは? 確かに信長は金ヶ崎から撤退せざるを得ませんでしたが、あの時点、あの状況での最善策を見事やり遂げたのですから。
敵の目につかないように馬を捨てて徒歩で京へ戻り、命を果たせなかったと義昭のもとへ報告に訪れた信長の血相がすさまじかったですね。「あれあれ~、戻らないと思ったから信長が気に入らない元号に替えることにしちゃったけど…」な義昭公方さまでした。右近さん演じる義昭も“食えない奴”ではありますが、なかなかいとしい。
かつて、藤吉郎と小一郎を自分のものにしたいと言っていた義昭。今回の、信長に対する兄弟の忠誠心と結果を出す無謀な働きぶりに、「そうか、信長のためにそこまでするとは。やはりあのふたりをわしのものにするのは難しそうじゃな。であれば光秀、そなたが信長のものになれ」と、光秀に命じるのでした。
薬(かゆみ止め)を返しに訪れた小一郎は、なんの疑いもなく家康に礼を述べます。家康も義昭同様「まさか生きて帰ってくるとは…」と、表情はクールでしたが心中穏やかではなかったでしょう。「人間は得体の知れないものを怖いと思うそうじゃ。わしは、あやつらが恐ろしい」とつぶやく家康。豊臣兄弟は“敵に回したらヤバい奴”というわけです。
寧々(浜辺美波さん)に「女狐」呼ばわりされるも、なか(坂井真紀さん)には「あんたはきっと、私たちにええことを運んでくれる弁天さまなんじゃわ」と喜ばれ、困惑顔の慶(ちか/吉岡里帆さん)。何かやらかしそうな気配はあるので、今後木下家の嫁としてどうふるまうのか、注目です!
【今も使える!武士の言葉】
第14回「絶体絶命!」では、金ヶ崎城から撤退するための戦が描かれました。言うなれば、「負けて生き延びるための戦いです。そこで「殿(しんがり)」を自ら請け負ったのが、“信長LOVE”な藤一郎。さて、「しんがり」を「殿」と漢字で書けますか? なんとな~くわかっているけれど、本当のところの意味をご存知ですか?
この章では、戦国時代によく使われていた「武士言葉」や、現代の私たちも使っている「もともとは武士言葉」について、さくっと解説しましょう。今後の『豊臣兄弟!』視聴にもきっと役立つはずです。
■殿(しんがり)
退却する軍列の最後尾を担当し、敵の追撃を防ぐこと。また、その部隊のこと。転じて、隊列や順番などの最後、最後尾をいう。「隊の殿を務める」「殿に控える」などと使う。文章では「との」と読んでしまいがちなので、書く場合には平仮名のほうが親切。
■一番槍(いちばんやり)
戦場で最初に敵陣に槍を突き入れること。また、その人を言う。転じて、最初に手柄を立てることや、その人のことも表す。
例)「今回も一番槍は〇〇さんにもっていかれた」
■物見(ものみ)
戦陣で、敵情を探ったり見張りをしたりすること。また、その人。「物見をやる」などと使う。「物見台」や「物見櫓(やぐら)」の略。また、物事を見ることや見物するという意味。
例)「物見に出かける」「物見遊山で息抜きする」
■単刀直入(たんとうちょくにゅう)
たったひとりで刀をとり、敵陣に斬り入ること、そのさま。転じて、前置きを抜いて直ちに要点に入ることを言う。また、遠回しな表現をしないで、直接問題点に触れることやそのさま。
■鎬(しのぎ)を削る
「鎬」とは、刀の刃と峰(みね)との境の少し角ばっている箇所のことで、互いの刀の鎬を削り合うような激しい斬り合いをすること。転じて、激しく争うこと。
■土壇場(どたんば)
近世、首切りの刑を行うために築いた土の壇(だん)のこと。転じて、決断を迫られる最後の場面をいう。進退きわまった状態のこと。
例)「土壇場で話がひっくり返る」「土壇場に立たされる」
■矢面(やおもて)に立つ
敵の矢が飛んで来る正面に立ちはだかること。転じて、質問や非難、攻撃などの集中する立場に身を置くこと。
■高みの見物
戦場を見渡せる安全な高い場所から、勝敗の行方を眺めること。転じて、第三者の立場から興味本位に物事の成り行きを傍観すること。
■お墨付き
室町・江戸時代、幕府や大名から、後日の証拠として臣下に与えた花押(かおう。署名)のある文書のこと。転じて、権力や権威のある人の与える保証を言う。「公認のお墨付きをもらう」
【次回 『豊臣兄弟!』第15回「姉川大合戦」あらすじ】
信長(小栗旬さん)は朝倉・浅井に反撃するため、義昭(尾上右近さん)や家康(松下洸平さん)に援軍を要請。だが、内心では信長の失脚を願う彼らの動きは鈍い。
一方、小一郎(仲野太賀さん)と藤吉郎(池松壮亮さん)は、市(宮崎あおいさん)を逃がすため、時間を稼ごうとするが、市の思いは長政(中島歩さん)と共にあり、策は実を結ばない。そんななか、信長は北近江へ進軍を開始。姉川を挟んで朝倉・浅井軍と対峙し、ついに両軍は対決の時を迎える。
※『豊臣兄弟!』第14回「絶体絶命!」のNHK ONE配信期間は2026年4月19日(日)午後8:44までです。
※宮崎あおいさんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。
- TEXT :
- Precious編集部
- WRITING :
- 小竹智子
- 参考資料:『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 前編』(NHK出版)/『大河ドラマ「豊臣兄弟!」完全読本』(産経新聞出版)/『大河ドラマ 豊臣兄弟! 超おもしろファンブック』(小学館)/『武士語でござる』(KKベストセラーズ)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館) :

















