第一印象は小柄で温厚なイメージの野崎シェフ。実際に話してみると芯が通ったしなやかな強さを感じさせます。数々のコンクールに挑戦し、2015年にはイタリア料理の新たな日本人シェフを発掘する「イタリア料理コンクール2015」(在日イタリア商工会議所主催)で優勝を果たします。つくる料理は女性らしい繊細さがあるものの、どこか大胆で力強い。そのわけはどこにあるのでしょうか。
日本イタリア料理界を牽引する鵜野シェフのパスタに出会い、イタリアンの世界へ
子供の頃から母親の料理を手伝うのが好きで、小学2年生のときに将来の夢は「コック」とすでに書いていた野崎シェフ。服部栄養専門学校へ入った当初はフレンチを志望していましたが、【リストランテ・キオラ】(現在は閉店)の鵜野秀樹シェフがつくるパスタに衝撃を受け、「イタリアンの道へ進もう」と決意します。
元ジョエル・ロブションの由井シェフに従事し学んだ、“華”のある料理
専門学校卒業後は、鵜野シェフの【イルマンジャーレ】をはじめ、都内の有名イタリア料理店を経て、中目黒にある【B.B.S.dining】へ。元ジョエル・ロブションの由井シェフに師事します。
イタリアンの料理人を目指していた野崎シェフにとって、フレンチの由井シェフの元で働いた経験は大きく、「目でも楽しんでもらえるような、フレンチの華やかさや繊細な美しさを学びました」。そこで得た経験によって、現在の色彩豊かな料理が生まれたのです。
由井シェフの元で働いていた2015年、半年という期限を決めてイタリアへ。フィレンツェにある料理学校へ通い、トリノのレストランでは郷土料理を学びます。
さらにピエモンテ料理を極めるため、修行先のお店を探してさまざまなお店を食べ歩き、【Ristorante Casa Vicina】というミシュラン一ツ星の店で修行を始めます。そこで、今まで持っていたイタリア郷土料理の概念を打ち砕かれるのです。
イタリア・ピエモンテ修行で学んだ、固定概念にとらわれない柔軟な発想
それまでの野崎シェフは、イタリアの伝統的な郷土料理にこだわっていました。実際にトラディショナルな料理をつくる店は数多くあり、伝統的な料理は大切にされていると肌で感じつつも、一方で、世界で戦う三ツ星レストランに目を向けてみると、彼らはもっと自由な発想で料理をつくっていたのです。
「イタリアの郷土料理に日本の食材を取り入れていたり、昆布茶やお茶漬けの素を出汁に使っていたことに驚かされました。それまでは、郷土料理の伝統的なつくり方にこだわっていましたが、『もっと自由でいいんだ、遊んでいいんだ』と考えがガラッと変わりました」
実際に働いてわかった、伝統を守りつつも自由な発想で料理に向き合う姿勢は、今の野崎シェフの料理に多大な影響を与えます。
様々な経験と独自の色彩感覚から生み出される、華やかで繊細なイタリアン
野崎シェフのつくるイタリアンは、色使いが華やかです。とくに鮮やかな食材が増えるこの時期は、お花畑のように色彩豊かなメニューが並びます。
それを最も強く感じられるのが、野崎シェフのスペシャリテ。色鮮やかで目を引く冷製パスタは、季節によって使う食材は異なり、春から初夏は旬の魚貝である桜エビや甘エビ、ホタルイカを。魚なら鯵や鰯などの青魚をマリネや燻製にします。「果実の酸味と蟹って相性がいいんです」と、桃やマンゴー、グレープフルーツなどに蟹を合わせることもあるのだそう。
2016年からは、麻布十番にあるプライベートレストラン【Cast78】のシェフに就任。オーナーの高岡さんはワインバーであった【Cast78】に、「もっと料理を楽しんでほしい」と野崎さんをシェフとして招きます。ディナーでは有機栽培の旬の野菜を使った、季節のコースを提供。ここでも野崎シェフらしい料理が並びます。
コンテストへの参加に加え、2018年6月末をめどに【Cast78】から新たなステージへと旅立つ野崎シェフ。今度の動向にも注目です。
【Cast78(キャストナナハチ)】
- Cast78 TEL:03-6659-7482
- 住所:東京都港区元麻布3-10-23 麻布ネストビル 1F
営業時間:[月~土]ランチ(要予約):12:00~15:00(13:30 L.O.)、ディナー/ディナー&ワインバー 18:00~翌3:00(コースL.O.21:00、最終入店 翌2:00) ※土曜のみ~翌1:00(最終入店 24:00)
定休日:日・祝日 ※貸切等の場合は要相談
記事元:ヒトサラ https://magazine.hitosara.com/article/1267/
- TEXT :
- ヒトサラ編集部
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- EDIT&WRITING :
- シマアキコ(ヒトサラ編集部)
- RECONSTRUCT :
- MEN'S Precious編集部