【目次】
【「八十八夜」とは?意味・由来を簡潔に解説】
■「意味」
「八十八夜」とは、雑節(ざっせつ)のひとつで、「立春」(例年2月4日頃)から数えて88日目にあたる日のこと。例年5月2日頃です。
唱歌『茶摘み』では「夏も近づく八十八夜」と歌われていますが、「夏の始まり」を意味する「立夏」は5月6日頃ですので、「八十八夜(5月2日頃)」はまさに夏の直前。「八十八夜」を目安にして、田の苗代を作ったり,畑作物の種まきや野菜の移植を行うなど、夏の準備を始める大切な指標として古くから親しまれています。
■「由来」
文字通り「立春から数えて88日目にあたる日の夜」であることが由来ですが、それだけではありません。「八十八」という漢字を組み合わせると「米」という字になる、また、末広がりの「八」が重なり、縁起がいいとされ、農業に従事する人々にとっては「非常に縁起のよい日」であると考えられてきました。特に、この時期に摘まれた新茶は縁起物とされ、例年5月上旬より各地で新茶販売が始まります。
■2026年の「八十八夜」はいつ?
2026年の「八十八夜」は5月2日です。
【「八十八夜」の背景〜なぜ農作業の目安とされてきたのか】
もともと「八十八夜」は「雑節」のひとつ。「雑節」とは日本の暦で、二十四節気 (せっき) 以外の「季節の移り変わりを示す日」のこと。節分や彼岸、入梅などもこの「雑節」にあたり、日本人の暮らしと密接に結びつき、特に農家にとっては死活問題に関わる「天候の転換点」を見極めるための目安となっていました。
■「忘れ霜」への警戒
「八十八夜=5月2日頃」の頃の農作業で最も恐れられていたのが、春の暖かさのなか、突如として降りる「遅霜」でした。せっかく芽吹いたばかりの稲の苗や茶の若芽も、霜に当たるとひと晩で枯れてしまい、その年の収穫に甚大な被害を及ぼします。「八十八夜の別れ霜」という言葉もあるように、この時期にはまだ霜が降りることもあり、農作物に大きな被害を与える恐れがあるところから、農家に注意を促すために暦に記載されていたのです。そして「八十八夜を過ぎれば、そろそろ霜が降りる心配はない」という、本格的な農作業開始のゴーサインの目安としての役割を果たしてきました。
■昔は「お茶」より「お米の日」だった?
前述の通り、「八十八」を組み合わせると「米」という漢字になるため、この日は稲の種まきをするのに最適な吉日とされてきました。また、末広がりの「八」が重なることから、農作物の豊作を祈願する行事や、田の神様を祀る慣習が各地に根付いています。厳しい冬を越え、安定した陽気へと移り変わるこの時期は、農家にとって一年の希望が始まる重要な節目なのです。少なくとも、江戸時代までの八十八夜は、お米をはじめとする農作物の種まきの時期として、広く認知されていたようです。
【「八十八夜と新茶」〜この時期に味わうお茶の魅力】
■そもそも「新茶」って何?
「新茶」とは、その年の最初に育った新芽を摘み採ってつくったお茶のことです。「一番茶」と呼ばれることもあり、以降、摘み採った順番によって、「二番茶」「三番茶」と呼ばれます。
■「八十八夜」のころの「新茶」はなぜ特別なの?
「八十八夜」の時期は茶摘みの最盛期。日本には古くから、「八十八夜に新茶を飲むと、その年を無病息災で過ごせる」という言い伝えがあり、不老長寿の縁起物として珍重されてきました。かつて医療が発達していなかった時代には、お茶は貴重な薬としても扱われており、その薬効への期待も大きかったのでしょう。縁起のよい言葉とともに、八十八夜の新茶を飲む文化が人々の間に広まり、現在まで大切に受け継がれています。
■エビデンスはあるの?
夏から秋の暑い日差しを受けてたっぷりと養分を蓄えたお茶の木は、気温が15℃以下になる11月ごろから休眠に入り、翌年の新茶に備えます。土の養分を十分に蓄えて成長した新芽を使った「新茶(一番茶)」には、その後の二番茶や三番茶と比べ、旨み成分であるテアニンをはじめとするアミノ酸が豊富に含まれており、苦味や渋みが少なく、まろやかで濃厚な味わいを楽しむことができます。
一番茶と三番茶の成分の違いは…
・アミノ酸………………一番茶には三番茶のおよそ4倍含まれる。
・カテキン………………一番茶より三番茶が多い。
・カフェイン……………一番茶と三番茶では差がない。
・水不溶性食物繊維……一番茶より三番茶がはるかに多い。(葉が硬い)
お茶には複数のアミノ酸が含まれていますが、その約50%以上をテアニンが占めています。テアニンの大きな特徴は脳の保護やリラックス効果です。
テアニンが脳内に入ると、リラックスしている時に出るα波(アルファ波)を増加させるとされ、その結果、
頭がすっきりする
イライラがおさまる
気持ちが穏やかに
睡眠の質が向上する
といわれいます。また、お茶に含まれるカフェインの「覚醒作用」を適度に和らげ、穏やかな気分にするはたらききも。
テアニンは茶の樹の「根」でつくられ、茎を通って「葉」に蓄えられます。 日光を浴びると、テアニンは分解されて渋み成分の「カテキン」に変化してしまいます。そのため、日照時間が短いうちに収穫される新茶や、日光を遮って育てる「玉露」などは、テアニン(アミノ酸)が豊富で旨味が強いのです。
■若葉ならではの清々しい香りを楽しんで!
新茶の最大の魅力は、封を開けた瞬間に広がる「爽やかです清々しい香り」香りです。摘みたての瑞々しい葉を加工して作られるため、新緑を思わせる爽やかな香りで、飲むたびに初夏の訪れを感じさせてくれます。
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古来より自然のサイクルに寄り添って生きてきた日本人にとって、「八十八夜」は一年の収穫を占う大切な節目でした。誰もが「八十八夜といえばお茶」を連想するものですが、この時期の新茶にはアミノ酸(テアニン)が豊富に含まれ、豊かな旨味だけでなく、リラックス効果まで期待できるとは、嬉しい限りですね! 爽やかな新緑の風が吹き抜けるこの季節。急須で丁寧に淹れた新茶の香りをゆっくり楽しんでみてはいかがですか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /国立天文台「こよみ用語解説」 /静岡県公式ホームページ「一番茶ってどんなお茶?」 /太陽化学株式会社「テアニンって何?テアニンでココロとカラダをサポート」 /伊藤園「お茶百科」 /茶の庭 /味の素「アミノ酸大百科」 :

















