どこかとらえどころのないミステリアスな雰囲気を纏い、映像メディアへの露出が多くないことも相まって、世間では孤高なイメージを抱く人も少なくない音楽家・岡村靖幸さん。しかしながら、彼をよく知る関係者やファンからは「岡村ちゃん」と呼ばれる愛すべき存在でもあります。

Precious初登場の好機を得て、知れば知るほど深掘りしたくなるその魅力に迫りました。

Vol.3とVol.4では、Webだけで読める独自インタビューとWeb独占カットをお届けします!

Vol.4では音楽家としての功績に加え、短歌や映画をはじめとしたカルチャー全般への深い造詣でも知られる岡村さんに、音楽の話から、今ハマっている海外ドラマ、さらにSNSとの付き合い方について伺いました。

岡村 靖幸さん
(おかむら やすゆき)1965年8月14日、神戸生まれ。5歳までロンドンで過ごす。19歳で作曲家として頭角を現し、吉川晃司や渡辺美里などへの楽曲提供を経て1986年、『Out of Blue』でデビュー。2026年6月12日〜8月2日まで、全国8都市12公演の夏のライブツアー『ピポット』を開催。

音楽家の岡村靖幸さん
スーツ¥737,000~・カマーバンド¥118,800/共にオーダー価格・シャツ/参考商品(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉)、蝶タイ、その他/私物

14歳の頃は、ビートルズと日本の歌謡曲に夢中

『The New York Times』に掲載された「音楽の好みに関する研究結果」によると「人は14歳の時に聴いた音楽に一生影響を受ける」ということでした。岡村さんにとっての“音楽のルーツ”はどこにあるのでしょうか。

──思春期の頃に夢中になっていたアーティストは誰ですか?

「その頃はビートルズを聞いていました。1965年生まれなのですが、僕の世代はまだ歌謡曲が全盛期でした。音楽番組『ザ・ベストテン』に出てきたアーティスト、特に松田聖子さんなどに夢中になっていました」

──以前、テイ・トウワさんとの対談で「K-POPも聴いている」とお話しされていましたが、気になるアーティストや好きな楽曲があれば教えてください

「K-POPに詳しいわけではないのですが、NewJeansの曲はいいなと思いました。 MVにトニー・レオンさんと『イカゲーム』のチョン・ホヨンさんが出演されていた『Cool With You』はカッコいいですよね。好きです」

ビートルズや昭和の歌謡曲を聞いて育ったという岡村さん。最近は韓国の作品や音楽にアンテナを張っているという。また、歌人の俵万智さんを通じて短歌の世界に出会った岡村さん。今や公式ファンクラブサイトにコーナーを設けるほど、その魅力にハマっている模様です。

「くどい言い方はNG!」短歌は“褒め”より“指摘”をもらえるから勉強になる

──短歌という「五・七・五・七・七」の定型で言葉をつむぐ経験は、岡村さんの作詞や、言葉選びに何か変化や影響を与えましたか?

「短歌を詠むことは、とても勉強になっています。(俵さんには)褒められるよりも、指摘されることの方が多いので、そこが良いレッスンになっていると感じますね」

──具体的にどのような点を指摘されましたか?

「くどい言い方!(笑)ですね。もうすでに説明しているでしょう? という内容や、表現のかぶりを指摘されます。あと、感情の入れ方です。例えば悲しい、嬉しいという表現を重複して入れない方が良いので、1か所にまとめましょう、というアドバイスもいただきました」

──ミニマルな世界の中で、「重なり」はNGということですね

「はい。そして今度、短歌の本を出版する予定があります。その本をご覧いただくと、さらに短歌の魅力を知っていただけるかと思います」

多くの人に支持されるのは、意外にも「7、8割の力で書いた歌詞」

──言葉の紡ぎ方にこだわりと美学を感じる、岡村さんの「歌詞」。独特なワードセンスや詞は、日常会話の中から、ふと生まれてくるのでしょうか?

「そういった部分もあるでしょうね。普段考えていること、なかなか上手くいかないな、と感じていること。誰にでもあるようなことが、歌詞になっているのだと思います」

──過去の作品から最新曲まで、ファンや評論家によって多くの「名フレーズ」が取り上げられてきましたが、岡村さんご自身が感じることは?

「自分としては7、8割程度の力で書いた歌詞が、案外多くの方に受け入れられるんです。皆さんが知っている曲ほど、そうかもしれません。逆に全力投球して書いた作品が思ったよりも…というケースはあります」

肩の力を抜いて取り組んだ仕事のほうが、意外と上手くいくことがある──働く人であればだれもが共感できる、“あるある”ではないでしょうか。

音楽家の岡村靖幸さん
ジャケット¥724,900・シャツ¥233,200・パンツ¥233,200(ザ・ ロウ・ジャパン)、その他/私物

岡村靖幸さんのマイブームはApple TVのドラマ!「自分のクリエイションに還元できている部分も」

──岡村さんのプライベートの時間は、勉強や学びに費やされることが多いのでしょうか?

「そうですね。最近テレビを見る時間が減り、よく配信ドラマを見るようになりました。(見た作品を)自分のクリエイションに還元できている部分もあるかもしれません」

──特に面白かった配信ドラマは?

「ここ最近、Apple TVの作品にハマっています。中でもエミー賞の複数部門を受賞した『セヴェランス』は夢中になって見ていました。あと、大ヒット作『ブレイキング・バッド』の制作陣による『プルリブス』という新作があるのですが、それも一気に見終えました。『ザ・スタジオ』というドラマも良かったです」

──数ある配信作品の中で、Apple TVの海外ドラマにハマったポイントはどんな部分ですか?

「Apple TVの作品はライバル社に対抗して、巨額をかけて制作しているのだろうなということが映像から伝わります。日本市場ではまだ、そこまで多くの人に見られている感覚はないのですが、海外だとエミー賞など、ドラマ関連の賞をApple TV作品が独占的に受賞しています。映画監督・マーティン・スコセッシのドキュメンタリー『Mr.スコセッシ』も面白かったです。全体的に編集も凝っているし、スゴイなと。とにかく『セヴェランス』はものすごくオススメです!」

「クリエイターのこだわりを感じられる作品に惹かれる」という岡村さん。自身の音楽にも惜しみないこだわりとパワーを注ぐからこそ、作り手の熱意や妥協の有無をリアルに感じられるのかもしれません。そして話題は“本、SNSとの付き合い方”へ。

ライブの後や、何かのリリース後はSNSで評判を見ています

──最近読んでいる本はありますか?

「細野晴臣さんの著書『映画を聴きましょう』が面白かったです。気になる本があれば、買って読みます。以前は書店へ寄って色々見て、調べることも多かったのですが、最近は友人や斉藤和義さんのお勧めを買って読むことが増えました。あとYouTubeなどで話題になっている本も読んだりしますね。紙だけではなく、電子書籍でも読みます」

──岡村さんがご覧になっているYouTubeチャンネルが気になります

「いろんなチャンネルを観ますよ。特に旅系のYouTubeチャンネルにハマっていた時期があります」

──最近は若い世代や海外の方が、YouTubeやSNSを通じて岡村さんの音楽を知ることも多いと聞きました。ご自身でSNSは見られますか?

「基本見ないのですがライブの後や、何かのリリース後はSNSで評判を見ています。SNSのDMを通じて他のアーティストさんから連絡をいただくこともあり、一種の連絡ツールにもなっていますね。TikTokはあまり見ないのですが、なるべくチェックしなくては、と思っています。他のアーティストさんは続々と始めていますから。そろそろ自分のアカウントも開設しようかな? と考えているところです」


インタビュー後、早速TikTokの公式アカウントを開設したというニュースが飛び込んできました。さすが、有言実行の岡村さん! 本、ドラマ、SNS、そして短歌まで──。あらゆるカルチャーやエンターテインメントを貪欲に吸収し、自らのクリエイションへと還元していく。その圧倒的なインプットの量とアグレッシブな姿勢が、常に斬新な音楽を生み出し続けるための“秘訣”なのかもしれません。

■岡村靖幸 TikTok公式アカウント
@okamurayasuyuki_official

■岡村靖幸 2026 SUMMER TOUR「ピポット」
6月12日の東京公演を皮切りに、全国8都市を巡る全12公演。
詳細は公式HPへ
https://okamurayasuyuki.net/

【岡村さんオススメ!ドラマ作品】

『プルリブス』Apple TVで配信中
出演:レイ・シーホーン、カロリーナ・ビドラ、カルロス・マニュエル・ベスガ
あらすじ:謎のウイルスが蔓延し、世界中の人間が人格を奪われてしまう中、偏屈なベテラン小説家のキャロルだけは感染をまぬがれる。日常を取り戻すべく、奮闘するキャロルだったが、感染者たちの強い同調圧力が彼女を追い詰めていく。

『セヴェランス』Apple TVでシーズン2まで配信中
出演:アダム・スコット、ザック・チェリー、ブリット・ロウアー
あらすじ:究極のワーク・ライフ・バランスを描くSFスリラー。仕事中の記憶と私生活の記憶を分離する「セヴェランス」という特殊手術を受けた人々の葛藤と、その裏にある製薬会社の陰謀を描く。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

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PHOTO :
TAKAY
STYLIST :
島津由行
HAIR MAKE :
マスダハルミ(M-FLAGS)
EDIT :
下村葉月、濱谷梢子(Precious)
EDIT&WRITING :
K-POPゆり子