【目次】
- 「写真の日」は誰が決めた?日本写真協会と記念日の背景
- 「日本初の写真に写った人物」とは?島津斉彬と写真の記録
- 「写真」という言葉の意味 “真を写す”という表現の奥行き
- 写真は何を残すのか。記録・記憶・感情をつなぐ力
- 銀板写真からスマホまで|写真技術の移り変わり
- ビジネス雑談に使える「写真の日」の豆知識
- 大人の写真整理術|撮った写真を美しく残すには
【「写真の日」は誰が決めた?日本写真協会と記念日の背景】
■「いつ」?
「写真の日」は6月1日です。
■「何の日」?
「写真の日」は、日本で最初に写真撮影が行われたことを記念した日です。
■「誰が」決めた?
写真を通じた国際親善の増進と、文化の発達に寄与することを目的として設立された「公益社団法人日本写真協会(PSJ)」が、1951(昭和26)年に写真の日制定委員会を開いて制定したのが「写真の日」です。
■記念日制定の背景と日付の由来
日本写真協会が6月1日を「写真の日」と決めた根拠は、幕末の歴史的な記録にありました。1951(昭和26)年の制定当時、江戸時代後期の1841(天保12)年6月1日に、薩摩藩(現在の鹿児島県)の島津家で「日本人が初めて写真撮影に成功した」という説が広く信じられていました。そこで、日本における写真の発祥を記念し、さらなる写真文化の発展や普及を願って、この日付が「記念日」として選ばれました。
■のちに「日付のエラー」が判明…!
その後の歴史研究によって、実はこの「1841(天保12)年6月1日撮影説」は誤りであったことが判明します。実際に日本人が初めて撮影に成功したのは、これよりも16年ほどあととなる1857(安政4)年9月17日だったのです。歴史的な事実とは異なることが明らかになったものの、すでに6月1日の「写真の日」が広く世間に定着していたため、日本写真協会は日付を変更することなく、現在も変わらず6月1日を記念日として継続しています。
毎年この日には、優れた写真家や写真文化に貢献した人物を表彰する「日本写真協会賞」の表彰式などが開催されています。
【日本初の写真に写った人物とは?島津斉彬と写真の記録】
■日本初の写真に写ったのは、薩摩藩第11代藩主の島津斉彬
薩摩藩主・島津斉彬(しまづなりあきら)は、西欧諸国のアジア進出に対応し、軍事のみならず産業の育成を進め、富国強兵を推進した人物です。実際に撮影が行われたのは、のちの研究で修正された1857(安政4)年9月17日で、斉彬の側近であった市来四郎(いちきしろう)や宇宿彦右衛門(うじゅくひこえもん)らの撮影グループが、鹿児島城内で斉彬の身なりを整え、見事にその姿を銀板に定着させました。
■唯一にして最古の日本人撮影の銀板写真
このとき撮影された島津斉彬の銀板写真は、日本人が撮影した唯一の銀板写真であり、なおかつ日本人が撮影した現存する最古の写真として、鹿児島市の尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)に保管されています。日本の写真史上、そして歴史資料として高い価値が認められており、映像資料としては日本で初めて、国の重要文化財に指定されました。写真には、裃(かみしも)を着けた斉彬の上半身像が肉眼で判別できる程度に写っています。
【「写真」という言葉の意味 “真を写す”という表現の奥行き】
■そもそも「写真」とは? 言葉の意味
もともと「写真」は中国美術で「肖像画」を指して用いられる言葉でした。中国では、肖像画は人物の外形を似せるだけでなく、その本質や精神性をも表現しなければならないという要求がありました。それが「真(まこと)」という文字に表れているのです。
日本画においても、目の前にある自然や人物などの対象を、主観を交えずに「ありのまま、リアルに、生き生きと描き写すこと」を「写真を撮(と)る」あるいは「写真を写す」と表現していました。
【写真は何を残すのか。記録・記憶・感情をつなぐ力】
■客観的な「記録」を残す
写真の基本的な役割は、目の前のリアルを寸分違わず描き留める「記録」としての力です。歴史的な大事件の決定的一瞬から、プロジェクト進行の記録、あるいは日々の料理の写真まで。言葉や文章だけでは再現しきれない「その時の具体的な事実(服装や天気、街並みなど)」を、写真は正確に「記録」してくれます。
実際にここ数年、日常、覚えておきたいもの、記録したいものを、「メモを取る」よりも、「スマートフォンで写真を撮っておく」ことのほうが、多くなっていませんか? たとえば電気製品を修理に出す際には、型板や品番などを写真でメモしたり、部屋の模様替えも、写真でサイズ感など添えてメモっておくのが便利です。
■曖昧な「記憶」を呼び覚ます
ある感動的な一日。「この瞬間の光景を一生覚えておこう…!」とは思っても、残念ながら人間の記憶は時間の経過とともに薄れていってしまうものです。でも、曖昧だった記憶が、1枚の古い写真を眺めた瞬間、鮮明にフラッシュバックしてくる経験って、ありませんか? 「そうそう。熱い日だった」「〇〇さんとこの場所で、こんな会話をしたな…」「このあと、海へ行ったんだよね…」などなど。ときにはその場で嗅いだ風の匂いまで、写真は私たちの脳内にある記憶の引き出しをカチリと開ける、強力なトリガーとしての役割を果たしています。
■「感情」をかき立てる
写真がもつ最もエモーショナルな力は、撮影された瞬間にその場を包んでいた「空気感」や「感情」をそのまま保存できる点にあります。ファインダー越しに向けられた眼差し、こぼれる笑顔、あるいは美しい景色に感動した心の高揚感…。写真は、時間が経っても、あるいは何十年後に別の人が見ても、その時確かにそこに存在した「感情」を追体験させてくれます。
【銀板写真からスマホまで|写真技術の移り変わり】
島津斉彬が写った幕末の時代から現代にいたるまで、写真技術は「誰もが手軽に、きれいに撮れる」方向へと進化を遂げてきました。その変遷をざっくりと4つのステップで解説します。
■銀板写真(ダゲレオタイプ)の時代【幕末】
銀板写真は、日本に最初に入ってきた写真技術です。発明したのは、フランス人のルイ・ジャック・マンデ・ダゲールです。銀メッキを施した銅板を感光材料として使用していました。複製(焼き増し)ができず、しかも左右が逆に写るという欠点もありましたが繊細な画像が得られたため、瞬く間に世界に広がりました。
日本へも19世紀半ばに伝わって研究が始められました。その指導的立場に立っていたのが、島津斉彬を中心とする薩摩藩の研究グループだったのです。彼らは銀板写真のことを「印影鏡」と呼んでいました。感度(光を感じる能力)が非常に低かったため、撮影中は被写体が数十秒から数分間、じっと静止していなければなりませんでした。
■「フィルム」の時代へ【明治~昭和】
19世紀の後半には、感光材料の改良が進みます。金属板からガラス板(乾板)、そして持ち運びしやすい「フィルム」へと進化しました。これにより、1枚の「ネガ(原板)」から、何枚でも紙に「プリント(焼き増し)」できるようになりました。1888(明治21)年にアメリカのイーストマン・コダック社が世界初のロールフィルム型カメラを発売すると、1960年代以降にはカラーフィルムが一般家庭に普及。「ファインダーを覗いてシャッターを押すだけ」の文化が定着しました。
■「デジタルカメラ(デジカメ)」の誕生【平成】
1980年代、フィルム全盛の写真技術に劇的な変化が起きます。写真技術の電子化です。デジタルカメラは最初はきわめて高価でしたが、1990年代にはさまざまな普及モデルが登場し、一般家庭でも普通に使える道具になっていきます。フィルムを現像に出す手間やコストがなくなり、撮影した映像をその場で液晶画面で確認できるようになりました。失敗したらその場で消去できるという気楽さが、撮影枚数を爆発的に増やしました。
■「スマートフォン(スマホ)」のインテリジェントカメラ【現代】
21世紀に入ると、同時期に普及した携帯電話に搭載されるなど、デジタルカメラはごくふつうの撮影装置として受け入れられ、現代の写真技術の中心的な存在になっています。そして今、私たちはスマートフォンで、かつてのプロ用機材を凌駕するような高画質な写真を撮影しています。現代のスマホカメラの凄さは、レンズの性能だけでなく「AI」にあります。シャッターを押した瞬間、暗い場所を明るく補正し、手ブレを抑え、肌を美しく整える処理までもが、一瞬にして行われているんですよ!
【ビジネス雑談に使える「写真の日」の豆知識】
■写真を撮るときのかけ声「はい、チーズ!」はなぜ?
少々、意外なことかもしれませんが、「はい、チーズ!」というかけ声は、もともとアメリカ人など、英語を話す人たちが写真を撮るときに、「Say cheese !」と言っていた習慣が、日本に伝わったものです。「チーズ」と発語してみるとわかりますが、「チーズ」の「イー」と言うときの口のかたちは、唇が左右に広がって、白い歯が見え、笑っているように見えますね。そのため、このタイミングで写真を撮ると、にっこり笑っているように見えて、楽しい雰囲気の写真ができ上がるというわけです。
このフレーズが日本で浸透したのは、1963年に雪印乳業(現・雪印メグミルク)のCMで『はいチーズ!』というセリフがあったからではないかといわれています。でも実は…英語では”cheese”の“se(ズ)”の部分ははっきりと発音しないため、“イ”のかたちの口がキープされるのですが、日本人の場合、「チー”ズ”」と最後までしっかり発音してしまうため、言い切った後の口のかたちが“ウ”になってしまい、「笑い顔」にはならなかった人も多かったようです。
ちなみに「はいチーズ」が日本で流行る以前は、写真撮影の際には「鳩が出ますよ」と声掛けされていたそうです。これは撮影対象者の目を、レンズに向けさせるためのかけ言葉だったのですね。
■昔の人の写真はなぜ「真顔」が多い?
幕末や明治、あるいは海外の古いモノクロ写真を見ると、写っている人は全員といっていいほど「真顔」をしています。「昔の人は写真を『魂が抜かれるもの』と恐れていたから笑顔になれなかった」という説が知られていますが、実はこれは歴史的な俗説です。
本当の理由として考えるのは、ふたつ…
・写真が「肖像画」としての意味合いが強かった時代は、格式や威厳を表す「真顔」が当然のことと考えられた
・当時は撮影時間に時間がかかったため、数十秒から数分間の間、自然な笑顔をキープするのは難しかった
実際には、技術が進歩して撮影時間が短縮されても、「写真は真顔で」という時代は長く続いたので、やはり写真は「公式な記録」であり、「気軽に笑うものではない」という意識が強く社会に根付いていたのでしょう。
■「写真」の普及を脅威と捉えたピカソ、意に介さなかったムンク
写真の発明によって、肖像画や風景画の需要が激減し、画家たちが「絵画の死」の不安におびえるなか、1912年のケルン国際美術展でムンクとピカソがこの問題について議論しました。
当時、31歳のピカソが写真による絵画の滅亡への不安と絶望を語ったのに対し、49歳のムンクは「カメラを持って天国や地獄に行けるようになるまでは、写真は絵画の脅威になどならない」と自信たっぷりに一笑に付し、正反対の感覚を示しました。
美術史的には、両者ともに、写真では絶対に撮影できない「イメージの世界」を描いて絵画の新時代を開いた巨匠です。伝統的な人間像やルネサンス以来の絵画手法を崩壊させるような作品を描いていたふたりが、写真という新技術に対する捉え方は対照的だったのは興味深いですね!
【大人の写真整理術|撮った写真を美しく残すには】
「写真はスマホで撮る」ことが当たり前になった現代。「手軽に記録や記憶を残しておける」のはとても便利になった一方で、撮影したままスマホに大量に溜まっていく写真の整理、どうしていますか? 見返したい写真がすぐに見つからないなどの悩みは抱えていても、「もはや整理する気にもならない」という気分の人は多いのでは?
記事の最後に、撮った写真を美しく残すための整理術をご紹介します。
■まずは「不要」な写真を削除する
写真整理の最初のステップは、保存する枚数を絞り込むことです。以下の基準で、不要な写真をこまめに間引きましょう。
・似たような構図の連写は、表情が良く、ピントが合っている「ベストな1枚」だけを残し、残りは削除する
・スクリーンショットやメモ代わりの写真など、「用件が済んだもの」はその都度消去する
・ブレた写真や風景は、見返すことはほぼありません。削除しましょう
■ シーンに応じて写真を「フォルダ」に分ける
「写真を美しく残す」ための最大のポイントは、「いつでも見返せる状態にしておくこと」。日々忙しく、写真整理にあまり時間を割けない大人の整理術としては「大切なイベント」ごとのざっくりとした分類をおすすめします。
■ 年に1冊の「フォトブック」で形に残す
デジタルデータは便利ですが、機器の故障やクラウドの容量オーバーで一瞬にして消えてしまうリスクがあるものです。そのため、データの保存場所は1か所では不十分。自分が管理しやすい端末やメディアを2か所以上選んで、複数箇所に保存しておくようにしましょう。
また、クラウドを組み合わせてバックアップしておくと安心ですね。そのうえで、1年ごとに大切な写真を選んでフォトブックを作成しておくのがおすすめ。本棚に並んだフォトブックは、友人やパートナーと思い出を語り合う大切なツールになってくれるはず。「データはバックアップ、思い出はカタチに」が、現代の大人の賢い写真の残し方です。
***
1枚の写真がもつ「記録」としての力は、ときに言葉以上に雄弁です。私たちにとって、写真は曖昧になりがちな大人の「記憶」や「感情」を、未来へ運んでくれるタイムカプセルのような存在です。
6月1日という記念日を機に、スマホに大量に溜まった写真データを整理する決心をしてはいかがでしょう? いつでも見返せるように、1度美しくファイリングしてみると、その先はこまめな仕分けが習慣になって、写真の整理がさほど苦にならなくなるものですよ! まずは「最初の一歩」を踏み出してみては。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /公益財団法人 日本写真協会(https://www.psj.or.jp/index.html) /尚古集成館 公式サイト(https://www.shuseikan.jp) /文化遺産データベース「銀板写真(島津斉彬像) 」(https://online.bunka.go.jp/db/heritages/detail/213559) /キヤノンサイエンスラボキッズ「カメラの歴史をみてみよう」(https://global.canon/ja/technology/kids/mystery/m_03_01.html) /ラジオ関西トピックスラジトピ「写真撮影の定番「はいチーズ」は日本人に“向いてない”? 使うなら/「キムチ」? ワケを専門家が解説」(https://jocr.jp/raditopi/2025/08/25/650171/) /学研教育情報資料センター「写真を写すとき、なぜ『はい、チーズ』と言うの」(https://kids.gakken.co.jp/box/nazenani/pdf/18_kurasi/X1190086.pdf) /西岡文彦 ビジネス教養のための タイパ 美術大学「美術史ミニ・トリビア 写真を絵画の脅威としたピカソと自信たっぷりのムンク」(https://note.com/genial_ivy4472/n/n41382f718f30) /brother at your side「【大切な思い出を】写真整理アドバイザーに聞く、写真の整理」(https://www.brother.co.jp/product/printer/home/magazine/kiji348/index.aspx) :

















