人にはそれぞれいちばん似合う年齢がある?

セレブ_1
ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された2026年メットガラに出席したアン・ハサウェイ。(C)Michael Loccisano/GA/The Hollywood Reporter via Getty Images

人にはそれぞれ、"年齢との相性"というものがある。どの年代にいちばん似合っているかは、人それぞれ違うということ。例えば、30代の時は冴えなかったのに、40代になったら、急に輝き出すみたいな。
言い換えれば、それは、人生曲線などにおける幸福度や充実度の変動に示されると言ってもいいし、運気の良し悪しで決まると言ってもいい。どちらにせよ、人の人生には必ず良い時と悪い時がある。それを"年齢との相性"と考えてみたのだ。

そういう意味で、今、43歳でキャリアの全盛期を迎えている人がいる。いろいろあったアン・ハサウェイ。言うまでもなく代表作とも言える『プラダを着た悪魔』の"2"が大ヒットとなったのを始め、今年は『オデッセイア』に『オークストリートの異変』など、自身がヒロインを務める話題作が目白押し。秋には『ヴェリティ/真実』が公開と、まさに引っ張りだこの状態なのだ。

"ハサヘイト(アン・ハサウェイを嫌うこと)"が、今や"ハサネサンス"へ大逆転!

しかし、かつてこのコラムでこの人を取り上げた時は、"ハサヘイト"という言葉が存在したことについて語らなければならなかった。
"ハサヘイト"……アン・ハサウェイを大嫌いなこと。申し訳ないが、それがちょっとした社会現象になったことさえあったのだ。この人がちょうど30代に入った頃だった。なぜそんなことになったのか? これが不幸なことに、何かをしでかしたとか、問題発言をしたとか、そういうことでは全くなく、ただ何となく……。

ひとつのきっかけとなったのは、『レミゼラブル』で初のオスカーを獲得した時のスピーチが、喜び方も含めて大げさだった、ちょっと芝居がかってたと言うもの。でもどうなのだろう。オスカー受賞のスピーチってみんな大げさだし、みんな芝居がかってていないか? この人だけじゃないはずなのに、ワザとらしいと批判された。それが大炎上となるのだが、のちにあの"ハサヘイト"とは何だったのか?を分析した記事があったが、それも"優等生すぎる振る舞い"を何だか気にいらないというアンチの意見が、たまたま共鳴を生んだことで理不尽なバッシングにつながっていった訳で、それを反省するメディアもあったほど。

それどころか今は"ハサネサンス"……ルネサンスに引っ掛けて、アン・ハサウェイの"再生"や"復興"を評価する言葉までが生まれている。
それも、あの激しいバッシングを冷静に穏やかに受け止め乗り越えたことが、その大逆転をもたらしたとも言われる。おまけに、今年2026年の「世界で最も美しい人」に選出され、この結果を伝える米『People』誌のカバーにも選ばれているほど。43歳でのこの評価の高さはやはり特筆すべきだろう。

セレブ_2
2013年2月9日、ドイツ・ベルリンのグランドハイアットホテルで開催された第63回ベルリン国際映画祭期間中の映画『レ・ミゼラブル』の記者会見に出席。(C)Andreas Rentz/Getty Images for BMW

なぜ好感度が爆上がりしたのか?

一方、私生活と仕事の人生曲線が一致するか否かには、一般論として諸説あるものの、今のアン・ハサウェイの私生活は充実の極みにあるようで、なんとこの忙しい中で第三子の妊娠が報道された。
かつて実業家の恋人が詐欺罪で逮捕されたこともあったりしたが、今はおそらく正反対の"地味ながら誠実な夫"と、見事なまでに円満な家庭を築いている。こうした生活での幸せな姿もまた、新しい好感度につながったのだろう。

でもさらに言うなら、私生活では完全に良き母、良き妻であり、昨今は当然のように映画でも母親役が多いのにもかかわらず、生活感のないファッションアイコンとしてのポジションも同時に獲得している。言うならば、1人の女性としての奥行き、そこに宿る美しさのようなものが評価を得ているとも言える。
思えばこの人が、世間に注目されるようになったのは19歳で初主演した映画『プリティ・プリンセス』 。その続編も含めてプリンセス役が何作も続き、あまりにイメージが固定してしまうことに本人が不安を覚えたほど、この人はハリウッドきってのお姫様女優だったのだ。

うがった見方をすれば、言いがかりのような"ハサヘイト"が起きたのも、もともとそんな高貴なお姫様女優としての、妙なとっつきにくさのようなものがずっと残っていたからではなかったか。まさにあの人形のような顔と生真面目さが災いしたとも言えるが、だからこそ40代を超えて、人として、女性として、印象ごとこなれてきたからの好感度爆上がりと言えるのかもしれない。

お人形顔は43歳で、最も人に受け入れられた

セレブ_3
2026年4月、映画『プラダを着た悪魔2』の公開を記念したガラレセプション「A Night With Runway」に出席のため、ロンドンのナショナル・ギャラリー前に登場したアン・ハサウェイ。(C)Grant Buchanan/Dave Benett/WireImage

映画界で引っ張りだことなっているのは、もちろん群を抜く演技力もあるのだろうが、本来がこの美しく明朗な顔立ちは喜怒哀楽どれをとっても何か心地よい印象を人にもたらすからではないだろうか。昔はお姫様のようなお人形顔に、世間も微妙な距離感を覚えたものの、最近の映画では、アニメみたいにつぶらな瞳の周囲に人生経験が刻まれて、表情に深みが加わってきたのは間違いなく、それが、人々を惹きつけているのではないか? お人形顔は、年齢を重ねてこそ味わい深く、美しいってこと?

ハリウッドにおいては昔から「40歳女優定年説」というのがあり、いかなる大スターももはや主役を張れなくなるという定説があった。実際には定年などしなくても、役どころが全く変わってきて、もう第一線にはいられないということ。さすがに21世紀に入ってからは全体の年齢観も変わり、その法則にも変化が起きてはいるが、主役として残れる女優はやはり限られる。
そんな中でこの人は、43歳で絶対のピークを迎えているわけで、やはり人生のピークを迎える年齢は、人それぞれ。途中、大きな逆境があっても真摯に向き合ってきたことが実りとなった。今やハリウッドでもリスペクトされる人物となっており、まさに大輪の花を咲かせていると言ってもいい。

だからどんな時もあきらめない。自分を輝かせる年齢は、もっと先にあるのかもしれないから。これからますますそういう時代。50代60代で、人生において最も輝く時を迎える人は少なくないはずなのである。

この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
PHOTO :
Getty Images
WRITING :
齋藤薫
EDIT :
三井三奈子