坂口 憲二さん
俳優
さかぐち けんじ/1975年生まれ、東京都出身。24歳でファッション誌『MEN’S CLUB』のモデルに抜擢。同年『ベストフレンド』(99年/EX)でドラマデビュー。『池袋ウエストゲートパーク』(00年/TBS)、『天体観測』(02年/CX)などの話題作で俳優としてブレイク。主演を務めたドラマ『医龍-Team Medical Dragon-』(06〜14年/CX)は4期を超える人気シリーズに。2018年に難病治療のため、芸能活動の無期限休止を発表。その後、焙煎士としてセカンドキャリアの道を拓き、2019年にコーヒーブランド「The Rising Sun Coffee」の代表兼ロースターとなる。2023年にドラマ『風間公親―教場0―』(CX)で9年ぶりに俳優に復帰。現在は俳優・焙煎士・経営者として、マルチに活躍。最新出演映画『キングダム 魂の決戦』(26年/東宝)は7月17日公開。
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ジャケット¥440,000・パンツ¥286,000/共に表参道店限定・シャツ¥264,000・ベルト¥162,800・靴¥181,500(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈GIORGIO ARMANI〉)

誰よりも深く“桓騎”を理解するために

たとえば、仕事に長期のブランクが生じても、人はその期間に得た経験を強みとして生かし、キャリアを再構築できると言われている。40代で難病治療のために俳優を一時休業、焙煎士や実業家としてのセカンドキャリアを経て、映画『キングダム 魂の決戦』で桓騎将軍を演じる坂口憲二さん。大役に挑むにあたり、時間をかけて綿密な役作りに没頭してきたと語る。

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映画『キングダム 魂の決戦』で桓騎将軍を演じる坂口憲二さん

「ちょうど、芸能の世界から少し距離を置いていた時期にお話をいただいたんです。当初は、〝キングダム〟のなかでも屈指の人気キャラクターである桓騎を演じることへの重責や、フィジカル面への不安がありました。しかし、久しぶりにお受けしたCMの仕事で山崎賢人くんと出会い、“いつか共演できたら…”と願っていた矢先のお話だったことに、ひとつご縁を感じました。

 さらに、監督やプロデューサーから準備期間を一年いただけるとお聞きして、桓騎と向き合う腹が括れました。乗馬や殺た陣ての練習に励み、アニメや映画を何度も視聴。今日は原作を読み込んで髪型を研究、今日は桓騎の考察動画をチェックする、などノートにタスクを書き出し、一日1テーマずつ徹底的にリサーチ。桓騎のフィギュアを机に置いたり、画像をスマホの待ち受けにして(笑)、桓騎を染み込ませていきました」

「当初は、〝キングダム〟のなかでも屈指の人気キャラクターを演じることへの重責や、フィジカル面への不安がありました」(阪口さん)
「当初は、〝キングダム〟のなかでも屈指の人気キャラクターを演じることへの重責や、フィジカル面への不安がありました」(坂口さん)

 坂口さんが特に重視したのはメンタル面。

「毎日“今日がクランクインだ”と思って朝の10分、現場での自分を具体的にイメージしながら、桓騎の決めゼリフである『大丈夫、全部上手くいく』を自分に言い聞かせていたんです。そのメントレが、本番での落ち着きや自信につながったと感じています」

「ならず者たちを率いる豪将・桓騎に没入するためにカメラが回っていないときも彼の“群れない姿勢”を貫きました」(阪口さん)
「ならず者たちを率いる豪将・桓騎に没入するためにカメラが回っていないときも彼の“群れない姿勢”を貫きました」(坂口さん)

桓騎のビジュアル造形においても、積極的に参加し、提案を重ねてきたという。

「桓騎のイメージカラーである紫の色目の検討から始まって、彼を象徴する黒い太陽の意匠を靴に取り入れるリクエストなど、気づけば1年の間に5回の衣装合わせを行っていました。監督と共にチームで丁寧に進めただけあって、撮影初日に甲冑を纏い、桓騎になった瞬間、最高の気分に。まさにスイッチが入った感がありました」

自分のペースで“心身を整える”生き方へ

“以前は、作品に対してここまで時間を尽くして能動的に関わることは難しかった”と多忙を極めた日々を振り返る坂口さん。

「30代は、今思えばけっこう“しんどい”時期でした。しっかり準備する時間も自信ももてないまま、撮影に追われて毎クール毎クール必死に食らいついていくのが精一杯。合間にサーフィンでリフレッシュしていたのですが、その後、難病の予兆が訪れ、活動も休止せざるをえなくなりました。

 40代は困難が多かったですね。健康に留意する生活に努めながら、セカンドキャリアを模索しました。その日その日をなんとかしのぐような日々でしたが、“焙煎” という未知の領域に挑んで、受け入れていただけたことから、自信が芽生えてきました。経営者としての仕事や家族との生活、子育てとも相まって、思考も自ずと変化したのがこの時期だったと思います」

 現在は朝5時に起床して、家族が眠っている静かな時間にメールやSNSなど事務作業に対応する。マインドを毎日整え、集中する時間も確保しているそう。一方で、「家族と一緒にいるときは家族に“全振り”するバランスもとれてきた」と笑顔を見せる。

日常のすべての経験を表現に還元する人生哲学

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「よく寝て、よく⾷べて、よく遊んで、よく笑う。何にでも“よく”をつけるのが坂口家の教えなんです」(坂口さん)

そんな坂口さんの現在の仕事配分は、カメラの前に立つ仕事は3割で、オーナー兼焙煎士としての仕事が大半。コーヒーとサーフィンをリンクさせた商品アイディアについて目を輝かせて語る様子は、いきいきとしてオーラに満ちている。その秘訣は、“よく寝て、よく食べて、よく遊んで、よく笑うこと”と、ごくシンプル。本質を突く「ウェルビーイング」の軸が見えてくる。

「年を重ねると、我慢することが大人の美徳と考えてしまいがちですが、僕はむしろ子供のように笑えることを大切にしています。童心のようなマインドを携えることが、人生を楽しめる秘訣じゃないかなと。

 また、事務所に所属していた時代は“守られる側”でしたが、独立して人を守る立場になったことで、俳優の世界を俯瞰の視点から捉えられるようにもなりました。人生にむだな経験は何ひとつなく、今もし、バリスタ役が来たら準備しなくても上手くできるでしょうし、父親役なら、目をつぶっていてもオムツを替えられるかもしれません(笑)。“これがやりたい”と、心震えるような面白い役との出合いに期待します」

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「“これがやりたい”と、心震えるような面白い役との出合いに期待」(坂口さん)

ただがむしゃらに邁進するのはもう卒業。50代の今は、バランスをとりながら人生を味わうフェーズにあると微笑む。

「“まだ全然、これからだぜ”と思っています(笑)。ベートーベンの“苦悩を突き抜けて歓喜に至れ”という言葉がとても好きなんです。多少しんどくとも、負荷のある経験のほうが自分を豊かにしてくれる。たとえば言葉の通じない異国の地で、身振り手振りで必死になって手に入れた水が、ものすごく美味しく感じられるように」。

※山崎賢人さんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

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PHOTO :
熊澤 透
STYLIST :
石橋修一
HAIR MAKE :
北 清輔(337inc.)
WRITING :
谷畑まゆみ
EDIT :
福本絵里香(Precious)