【目次】

「くじらの日」とは? 記念日が生まれた目的と9月4日の由来

■「くじらの日」の目的

クジラと日本人の共生を考える日として、一般財団法人日本鯨類研究所が2012年に制定したのが「くじらの日」です。

■日付の由来

9月4日に制定された理由は、「9(く)」「4(じ)」の語呂合わせです。

世界に目を向けると、毎年2月の第3日曜日は「World Whale Day(世界クジラの日)」です。米国ハワイ州マウイ島で、クジラを取り巻く脅威や海洋保全への関心を高めることを目的に始まりました。


【クジラはどんな動物? 魚ではなく哺乳類である理由】

■クジラとイルカは同じ生き物!? 

クジラやイルカは、哺乳綱・偶蹄目・クジラ下目に分類される動物で、まとめて「鯨類(げいるい)」と呼ばれます。鯨類(げいるい)ともいわれるこの目は全体に大形で、最小種でも体長1.5m、最大種のシロナガスクジラは30mを超すものも。クジラは地球最大の動物と言われています。そのなかで、一般に体長4ⅿ前後以上を「クジラ」、それ以下の小形種を「イルカ」と呼びますが、その区別ははっきりしておらず、動物学的に両者に差はないのだとか。シャチもこの仲間です。

■クジラが哺乳類である4つの理由

・肺で呼吸する:水中に棲む魚はエラで呼吸しますが、クジラは人間(哺乳類)と同じように肺呼吸をします。

・胎生で産み母乳で育てる:クジラは卵を産むのではなく、母鯨のお腹の中で赤ちゃんが水中で活動できるまで育ててから出産します。赤ちゃんはお母さんのお尻の横にあるお乳に口をあてて母乳を飲みますが、これは「哺乳類」の名前の由来でもある行為ですね。

・恒温動物である:クジラは、外気温(水温)が変化しても体温を一定に保つことができる恒温動物。鳥類と哺乳類がこれに属します。

・脚の名残りがある:海中を泳ぎながら生活するためには、水の抵抗を少なくする必要があります。このため、鯨類は、脚や鼻、耳などは形が変化したりなくなりました。脚で体を支える必要がないので、もともとあった前脚は胸ビレに変化し、後ろ脚は消滅。胸ビレには5本指のような骨があるのだとか! また、初期の胎児には後ろ脚があることもわかっています。尾の皮膚が変化して尾ビレになり、泳いだり、体温を調節するために使われています。


【クジラにはどんな種類がいる? ヒゲクジラとハクジラの違い】

東京海洋大学が公開している鯨類の和名リストによると、クジラの仲間は2024年の時点で2下目14科94種。2下目とは、「ヒゲクジラ下目(ヒゲがあるクジラ)」と「ハクジラ下目(歯があるクジラ)」の2種類のこと。すべてのクジラはこのいずれかに属します。

■ヒゲクジラとは?

「クジラヒゲ」と呼ばれる器官をもつヒゲクジラ。板状のクジラヒゲが上顎に櫛のように200~400枚もびっしり並び、これでエサを濾し取ります。餌は動物プランクトンや小魚で、海水ごと一気に口に入れ、吐き出すと餌は引っかかって残り、海水だけがクジラヒゲの隙間から流れ出ていく、という仕組み。クジラヒゲはエサを濾すためのフィルターというわけです。

ヒゲクジラには、シロナガスクジラやザトウクジラなど、15種類が確認されていて、単独行動するケースが多く見られます。

■ハクジラとは?

名前通り、歯が生えているクジラのこと。ただしクジラの歯はほかの哺乳類と違って、すべてが円錐形で鋭く尖った犬歯状です。ヒゲクジラ類に比べて体が小さく、魚やイカといった餌を見つけると1匹ずつ狙い、この鋭い歯で捕えるハンターなのです。

種類は60種類以上と多く、シャチやイルカもハクジラの仲間です。


【クジラはなぜ潮を吹く? 呼吸や潜水の驚くべき仕組み】

■潮吹きの秘密

クジラの潮吹きは、肺から吐き出した呼気が白い霧状に見える現象です。海水を噴き出しているわけではなく、肺から出た息などが白い霧のように見えるだけ。温かく湿った呼気が外気に触れて細かな水滴になり、噴気孔周辺の海水なども一緒に舞い上がります。

■水深1000mを泳ぐ

人間をはじめ陸上の哺乳類は、潜水時に強い水圧がかかると肋骨が折れて肺がつぶれてしまいます。ところがクジラの体にはこれに対応する柔軟な構造があります。また、筋肉などに酸素を蓄える能力が高く、潜水中には心拍数を下げ、脳や心臓など重要な器官へ優先的に血液を送ることができます。この構造と体内に酸素を豊富に蓄えることができるために、クジラは長い時間潜っていられるのです。

特に潜水能力に長けているのがマッコウクジラ。通常でも1000mくらい潜って泳いでいますが、米国海洋大気庁(NOAA)は、3000mを超える深度まで潜ることがあると説明しています。


【日本人とクジラの関係は? 捕鯨や食文化の歴史】

学校給食でクジラ肉が使用されていたピークは、1950年代後半から1960年代にかけて。捕鯨は、日本独自の食文化としての側面と、国際社会における政治・環境問題としての側面をもち、とても複雑です。

■クジラは縄文時代から利用されていた

日本では縄文時代からクジラを利用してきたという歴史があります。江戸時代になると組織的な「網取り式捕鯨」が発達しました。

■捨てるところのないクジラ

食用として肉を採るだけでなく鯨油も利用され、骨やヒゲなどは工芸品に、さらに畑の肥料に至るまで、全身を無駄なく利用してきました。第二次世界大戦後の高度経済成長期直前にかけて、たんぱく質不足だった日本人の健康面を支えたクジラ肉は、学校給食などで広まったのです。

■商業捕鯨の停止と再開

重要なたんぱく源だった一方で、捕鯨を巡る国際交渉は徐々に紛争の種となっていきます。

1982(昭和57)年、国際捕鯨委員会(IWC)は商業捕鯨モラトリアムを採択しました。モラトリアムは1985~86年漁期から実施され、日本は1988(昭和63)年に大型鯨類を対象とした商業捕鯨を中断しました。並行して資源としてのクジラを科学的に調べるため、南極海や北太平洋で「調査捕鯨」を実施。その後、IWC内で「資源保護」と「持続的な利用」の対立が解消不能と判断し、2019(令和元)年6月30日をもってIWCを脱退。2019年7月から日本の領海および排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨を再開しています。

2026年現在、商業捕鯨の対象となっている大型鯨類は、ミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ナガスクジラの4種です。

■「くじらの日」に考えたいクジラとの共生

戦後のたんぱく質不足の時代とは違い、牛、豚、鶏、羊など流通する食肉が増え、食生活も多様化。そのため、国内でのクジラ肉の消費量は年間約20万トンだった最盛期(1960年代)から大幅にダウンし、水産庁の食料需給表によると、鯨肉の国内供給量は1960年代をピークに大きく減少しています。水産庁は、科学的根拠に基づく資源管理を続けながら、捕鯨業の安定的な実施と経営の自立を図ることを課題としています。


【「くじらの日」に知っておきたい豆知識|世界最大のクジラや寿命、眠り方】

■クジラもホッキョクグマも同じ仲間!?

一生の大半を海の中で過ごす哺乳類のことを「海産哺乳類」または「海生(海棲)哺乳類」と呼びます。クジラ、アザラシの仲間、ジュゴンやマナティのほか、ラッコやホッキョクグマなどを含んで呼ぶこともあり、知られている種は130ほど。哺乳類全体では4300種程度とされているので、そのなかで海産哺乳類はわずか3%程度に過ぎない、とても珍しい生き物なのです。

■シロナガスクジラは体重を超える海水を取り込むことも

ヒゲクジラの1種であり、恐竜を含めても地球上の生物のなかでいちばん大きいとされているシロナガスクジラは、自分の体重(75~180トン)より重い海水を口の中に入れることができるのだとか。 ヒゲと呼ばれる板状の器官でこして海中のプランクトンやオキアミを食べています。極小の餌を大量に食べて大きな体を維持している、というわけです。

■クジラの寿命は人間と同じくらい?

クジラの寿命は種によって大きく異なります。NOAAによると、シロナガスクジラは80~90年ほどとされる一方、ホッキョククジラには200年以上生きる個体がいると考えられています。クジラの年齢は歯に表れる年輪などから推定しますが、同じ種でも長生きの個体も短命もいるのだそう。

■寝てる?起きてる?クジラの不思議な睡眠

クジラは海中で生きる哺乳類です。頭のてっぺんに噴気孔があり、水面から少し体を出すだけで素早く空気を吸い込みます。人間のように完全に寝てしまう水面まで上がることができず、呼吸ができません。そこでクジラには「半球睡眠」と呼ばれる特別な能力が備わりました。脳を半分ずつ休ませる(睡眠状態にする)ことで、片方の脳が休んでいる間にもう片方の脳が遊泳や周囲の監視を担うという仕組みで、クジラは溺れることなく眠ることができるのです。

 ■3000mを超える深海へ

鯨類は体温を約37℃に保つことができるため、どんな水温の環境でも生活できるといわれ、尾と尾びれを上下に振って生み出す推力で水中を泳ぎます。セミクジラの最高遊泳速度は5ノット(時速約9㎞、ママチャリを普通に漕ぐ程度の速さ)ですが、シャチは30~40ノット(時速約55~74㎞)の速力を出すことも可能。深く潜水するのも得意で、マッコウクジラでは3,200mという記録があり、イルカ類でも数百m潜水できるのだとか。

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北海道から沖縄まで、太平洋側にはザトウクジラやマッコウクジラなどの姿を見ることができるスポットがあります。日本海側でも回遊している種はいるのですが、太平洋側のものに比べて群れの密度(個体数)が低く出現予想が立てにくいため、ホエールウォッチングツアーとしては成立しにくいのだとか。大海原を悠々と泳いだり盛大に潮を吹くクジラを、いつか見てみたいと思いませんか?

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/くじらタウン( https://www.kujira-town.jp/ )/一般財団法人日本鯨類研究所( https://icrwhale.org/ )/国立科学博物館( https://www.kahaku.go.jp/news/nid00000158.html )/豊海おさかなミュージアム( https://museum.suisan-shinkou.or.jp/guide/japanese-love-whales/2827/ )/魚食普及推進センター( https://osakana.suisankai.or.jp/business/8941 ) :