今月のMs.Precious……東京都下、下町生まれ下町育ち。大学の卒業旅行で訪れたナポリが忘れらず、一度就職するも25歳でイタリア修行へ。レストランで見習いをしつつイタリア料理全般を学ぶ。日本帰国後は地元のベーカリーを手伝いながら、デパートでの催事やファッションブランドのケータリングなどが口コミで人気に。女性ピザ職人(ピッツァイオーラ)として2018年に店舗を開く。シンプルなピザ生地こそ、素材と塩味は大切。アルファロメオのイメージは、修行時代オーナーの奥様が走らせていた「アルファ ロメオ ジュリエッタ」。年に一度のお祭りは何をおいても参加する江戸っ子。
今月のクルマ……【ALFA ROMEO JUNIOR Ibrida Sport Speciale】
イタリアの名門「アルファ ロメオ」には、名前からして物語の香りが漂います。1910年、ミラノで誕生した「A.L.F.A.」がその始まり。のちに実業家ニコラ・ロメオの名が加わり、現在の名称になりました。エンブレムの赤い十字は創業地であるミラノの市章、そして人を飲み込む大蛇は、かつてこの地を治めたヴィスコンティ家の紋章に由来します。一方、アルファ ロメオの歴史を語るうえで欠かせないのが、レースとの深い関わりです。F1を初めとするレースで名を馳せたアルファは、市販車でも走る楽しさを追い求めてきました。その好例が1963年に登場した「ジュリア スプリントGT」。著名デザインスタジオのベルトーネが手がけた流麗なこの小型クーペには1.3Lエンジンを積んだ、より身近な「GT1300ジュニア」が加わります。軽やかな走りとしゃれた姿を手の届くものにした、その名車にちなんだのが今回の「ジュニア」です。かつての2ドアクーペからコンパクトSUVへ、エンジンもマイルドハイブリッドへと姿は変わりました。それでも、スポーティな走りとエレガントなスタイルを大切にするアルファ ロメオの流儀は健在です。100年以上にわたって数々の物語を生んできたアルファ ロメオ。その歴史の続きを、日常のなかで楽しめるのが、このジュニアなのです。
松任谷正隆が選ぶ「いま、このクルマで聴きたい音楽」……ロバート・プラント As I Roved Out
「 ハンドルを切るとクルマは曲っていきますよね。曲り方がクルマによってずいぶん違うんですよ 」──松任谷
Ms.Precious こんにちは、どうぞよろしくお願いします。
松任谷 こちらこそ、よろしくお願いします。
Ms.Precious ようやくいい季節になりましたね。
松任谷 そうですね。今年は雨の期間が長かったから…。
Ms.Precious 今日はどんなクルマでいらっしゃったんですか?
松任谷 いや、今日はこれ…。
Ms.Precious あ、そうか、そうですよね、私がリクエストしたんですものね。
松任谷 でも、リクエストしていただいてよかったです。以前、乗ったときの印象とガラッと変わりましたから。
Ms.Precious そういうことってあるんですか?
松任谷 ありますね。僕の中の物差しが一定じゃないってことなのかな。時々ひどく自信がなくなります
Ms.Precious 同じレストランの同じ料理の味が違って感じるのと一緒でしょうか?
松任谷 近いかもしれませんね。でも、今回は真逆に感じたのだから始末に悪い。
Ms.Precious それはよくなったということですか?悪くなったということですか?
松任谷 よくなりましたね。ちょっと欲しくなったくらいだから。
Ms.Precious では以前は?
松任谷 まあ、箱根の山道で乗ったんですけど、やたら子供っぽい印象があったんですよね。
Ms.Precious よくわからないんですけど…。
松任谷 クイックってわかりますか? ハンドルを切るとクルマは曲っていきますよね。曲り方がクルマによってずいぶん違うんですよ。料理の塩味と似ているかな。じわっと来る塩味もあるし、口の中に入れた途端に塩味を感じることってあるじゃないですか。クイックは後者ですね。ハンドルを切ろうと少し腕を動かした途端に予想以上に曲る感じ、でしょうか。
Ms.Precious なんとなく理解できましたけど、私なんかに分かるんでしょうか?
松任谷 その料理に慣れていれば、そういうものだ、と思えるでしょ? でも、そうではない味付けに慣れているとびっくりするわけです。
Ms.Precious なんだか怖くなってきました。
松任谷 いやいや、激辛料理じゃないんで大丈夫です。ほんのちょっとしたこと。でも潜在的には割合大きいんですよ。
Ms.Precious このクルマはクイックってことだったんですか?
松任谷 そう、以前はそう感じたんです。やたら反応がよくて、子供っぽいな、と。スポーツカーじゃないんだから、もっといいバランスがあるだろう、と思ったんですね。それが今回乗ってみて、あれ?となったんです。
Ms.Precious 大人だった?
松任谷 そうですね。大人だったんだ…と。ショックでしたね。
Ms.Precious そういうものなんですね。でも私にはきっと分からないと思う。
松任谷 どうかな、それは乗ってから決めましょう。
「 どうしてアルファロメオだったんですか?」──松任谷
Ms.Precious 割合背が高いですね。
松任谷 一応SUVになるんじゃないかな。タワー式の駐車場は入れないところも多いと思います。
Ms.Precious あら、それはちょっと残念。
松任谷 それより、どうしてアルファロメオだったんですか?
Ms.Precious 名前かしら。ロマンチックですよね。確か、松任谷さんも最初は名前で買われた、と書いてらっしゃいませんでしたか?
松任谷 えっ? そんなもの読んでらっしゃったんですか?
Ms.Precious 記憶では。
松任谷 まあ、何回かいろいろなものに書いたとは思います。
Ms.Precious 私も同感だったので。
松任谷 しかも、80年代当時は人気がなくて誰も乗ってなかったですから、ますますよかったんですね。
Ms.Precious 今は多いんですか?
松任谷 当時よりは…まあ、あの頃ディーラーがなかった時代だってありましたから。
Ms.Precious 私の周りにもアルファロメオオーナーはいません。
松任谷 なかなか厳しい道のりをたどってきたメーカーですからね。今はステランティスグループの一員になって、プジョーやジープなどと協業してますね。ま、それ故、パーツを共有して合理化は図れるけれど個性が薄まったとは言えます。でも各メーカーには調香士のような人がいて、やっぱりそれぞれが違うんですね。
Ms.Precious 今はプジョーをお持ちなんですよね?
松任谷 そうなんです。骨格はこれとほぼ同じプジョー208というクルマに乗ってます。そのSUVバージョンが2008というクルマで、完全にこのクルマの兄弟車というか、ミュータントというか、そういう存在になりますね。
Ms.Precious やはり、乗っている人が少ないという理由で選ばれたんですか?
松任谷 まあ、そうではないんですけど、でもドイツ車ばかりがもてはやされた時期があって、ちょとへそ曲がりな部分もあったとは思います。
Ms.Precious クルマは服と似たようなところがあると思うんですけど。
松任谷 そうですね。ブランドですからね。何々に乗っている、というのと何々を着ている、という意味では同じですよね。そしてそれでどんな人か計られてしまうような部分もありますから。でもそこを気にしすぎると疲れちゃいます。
Ms.Precious なんか、アルファロメオってちょうどいいイメージなんです。今の私には。そんなに無理している感じもしないし、服で言えばマルニみたいなイメージかしら。
松任谷 今のイメージはそうかもしれませんね。戦前はグッチだったりするんですけどね。
Ms.Precious 乗ってみてもいいですか?
松任谷 もちろん、そのために持ってきましたから。
「なぜかアルファロメオはアルファロメオの匂いがします」──松任谷
Ms.Precious いろいろなところにこの蛇のマークがひっそりと描かれているんですね。
松任谷 あ、ほんとだ。気がつかなかった…。
Ms.Precious よじ登る感じがないからSUVとは全く違うイメージですね。
松任谷 今はこれくらいの感じが主流ですね。ちょうどワゴンとSUVの中間くらいってことかな。
Ms.Precious これがアルファロメオの匂い?
松任谷 ああ、それはありますね。部品を共用しているのに、なぜかアルファロメオはアルファロメオの匂いがします。プジョーはプジョーの匂いだけど。不思議です。
Ms.Precious スターターはこれですね?
松任谷 そう、位置はこんなところにあるけれど、これです。
Ms.Precious エンジン音は普通ですね。
松任谷 そうですね。これはプジョーなんかと共通の3気筒ハイブリッドエンジン。アルファロメオが開発したエンジンではないのが少し残念なんですが…。
Ms.Precious そういうところにはこだわるんですか?
松任谷 服でもデザイナーが誰だかって、気にならないですか?
Ms.Precious なるほど、そういう感じなんですね。では走ります。
松任谷 突き当たりは右に行きましょう。
Ms.Precious あら、いいわ。なんだかしっくりきます。
松任谷 硬くないですか?
Ms.Precious この乗り心地、好きです。ハンドルの感触もいいですね。
松任谷 ではきっと気に入るクルマだと思います。さっきも言ったけれど1年前にこのジュニアに乗ったとき、ずいぶん突っ張ったというかこわばった乗り心地だと思ったんですよね。でも、このクルマにはそれを感じなかった。
Ms.Precious それが子供っぽかったという意味ですね?
松任谷 まあ、それだけではないんですけど。
Ms.Precious 運転しやすい。
松任谷 クルマが合っているということでしょうね。麺に例えるとこれはアルデンテ。プジョーはもう2分位余計に茹でた感じですかね。
Ms.Precious でも茹で足りなさはないですね。
松任谷 そう、締まっているのにしなやかでもあるから。昔のアルファロメオの味とは全然違いますけど、これもステランティスになってから大人になった感じなのかなあ。
Ms.Precious 大人の小さなアルファロメオっていいですね。
松任谷 まあ、小さいと言えるかどうか…ですけど、SUVシリーズの中では一番弟分です。
Ms.Precious なんとなく船に乗っているような気分です。
松任谷 そうですね。高速道路なんかではゆったりと揺れますよね。アルファロメオのチャキチャキしたイメージとはちょっと違う。でもたぶん長距離でもあまり疲れないと思いますね。
Ms.Precious 私、運転が好きなのでちょっと東北までぶらっと行ってみようかしら。
松任谷 熊が出ませんか?
Ms.Precious そんなことおっしゃったら東北の方は毎日どうするんでしょうか…。
松任谷 そりゃそうだ。雪が降る前に行かれるのもいいかもしれませんね。
Ms.Precious ちょうどお友達と秋田の温泉に行きたいね、なんて話していたので。
松任谷 ひょっとしたらベストシーズンかも。
今月のクルマ
【アルファ ロメオ ジュニア イブリダ スポルト スペチアーレ】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,195×1,780×1,585mm
車両重量:1,330kg
車両本体価格:¥5,250,000(140台限定)
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先

- TEXT :
- 松任谷正隆さん 作編曲家、音楽プロデューサー
- PHOTO :
- 小倉雄一郎(小学館)
- WRITING :
- 松任谷正隆
- EDIT :
- 桐畑恒治

















