【目次】

【「失念しておりました」の意味と読み方は?「忘れていました」との違い】

■「読み方」

「失念」は「しつねん」と読みます。「失念しておりました」は、日常会話ではあまり使わない表現ですが、仕事上のやり取りやメールでは目にする機会もあるのではないでしょうか。

■「意味」は?

「失念」は、「うっかり忘れること」「ど忘れすること」を意味します。つまり、「失念しておりました」は、覚えておくべきことをうっかり忘れていた、という意味のフレーズです。例えば、会議の日程を忘れていた場合や、依頼されていた資料の提出を忘れていた場合などに使います。

■「忘れていました」との違いは?

「忘れていました」と「失念しておりました」は、どちらも何かを忘れていたことを表しますが、言葉のニュアンスや使われる場面が異なります。

「忘れる」
・記憶していたことを思い出せなくなる場合のほか、必要なことをしないままにしてしまう場合などにも使う
・日常的な言葉。

「失念」
・「うっかり忘れる」という意味をもつ、やや改まった表現。
・「失念しておりました」とすることで、仕事上のやり取りにもふさわしい、丁寧で落ち着いた言い方。

ただし、表現を改めたからといって、忘れたことへの責任が軽くなるわけではありません。相手に迷惑をかけた場合には、謝罪の言葉を添えることが大切です。


【「失念しておりました」は正しい敬語?上司や取引先にも使える?】

■正しい敬語?

「失念しておりました」は、ビジネスシーンでも使える、正しい敬語表現です。

ただし、「失念」という言葉自体は敬語表現ではなく、敬語としての丁寧さを生んでいるのは、うしろに続く「しておりました」の部分です。「しておりました」は、「していた」を改まった言い方にしたもの。「おる」は「いる」の謙譲語Ⅱ(丁重語)として用いられ、「おります」とすることで、聞き手や読み手に対する丁寧さを表します。

したがって、「失念しておりました」は、自分が忘れていた事実を、相手に敬意を払って伝える表現と言えます。

■上司や取引先にも使える?

「失念しておりました」は、上司や取引先など、目上の人に対しても使える表現です。会議の予定や依頼された仕事などを忘れてしまった際、口頭でもメールでも使用できます。

例えば、上司から以前伝えられた予定について確認された場合、「申し訳ございません。失念しておりました」と答えることができます。取引先からの依頼に対応し忘れていた場合にも使えます。ただし、「失念しておりました」は、忘れていた事実を伝える表現であり、それだけで十分な謝罪になるわけではありません。

■相手の行為に「失念」は使える?

「失念」という言葉自体は、自分以外の人が忘れた場合にも使えます。しかし、相手が約束を忘れていた場合に「失念されていましたか」と尋ねると、相手の不注意を指摘することになり、責めている印象を与えるおそれがあります。ビジネスシーンで相手が覚えているかどうかを確認したいときは、「以前お伝えした件について、ご確認いただけますでしょうか」など、相手の忘却を決めつけない言い方を選ぶとよいでしょう。


【「失念しておりました」を使う場面と注意点|謝罪を伝えるには?】

■どんな場面で使える?

「失念しておりました」は、仕事上の約束や予定、依頼された業務などをうっかり忘れていたことを、丁寧に伝える際に使います。例えば、会議の日程を忘れていた、依頼された資料の提出を忘れていた、以前受けた連絡の内容を思い出せなかった、といった場面です。

口頭でもメールでも使えますが、特に上司や取引先など、改まった対応が求められる相手とのやり取りに適しています。一方、日常的な会話では、やや堅苦しい印象を与えることもあります。親しい同僚や友人に対しては、「忘れていました」「うっかりしていました」など、自然な表現を選ぶとよいでしょう。

■謝罪するときは「申し訳ございません」を添えて

「失念しておりました」は、忘れていた事実を説明する表現です。相手に迷惑をかけた場合は、「申し訳ございません」「大変失礼いたしました」などのお詫びの言葉を添え、必要に応じて今後の対応も伝えましょう。

例えば、依頼された仕事への対応を忘れていたなら、「ご依頼の件を失念しておりました。誠に申し訳ございません」と伝えます。さらに、「至急対応いたします」など、具体的な対応を示すことで、相手もその後の見通しを立てやすくなります。大切なのは、丁寧な言葉を選ぶことに加え、忘れていた事実を認め、誠実に対応することです。

■「失念」を言い訳にしないよう注意!

「失念しておりました」は改まった表現ですが、使い方によっては、忘れたことを遠回しに説明しているように受け取られる場合もあります。

また、何度も同じようなことを忘れている場合には、丁寧な表現を繰り返すより、再発防止に向けた具体的な行動が求められます。状況に応じて、連絡方法やスケジュール管理を見直すなど、信頼を取り戻すための対応を心がけましょう。


【「失念しておりました」を使った例文|返信・提出・約束を忘れたとき】

■メールの「返信」を忘れていたとき

・「ご連絡をいただいていたにもかかわらず、返信を失念しておりました。誠に申し訳ございません」
・「先日いただいたメールへの返信を失念しておりました。申し訳ありません。遅くなりましたが、以下のとおり回答いたします」
・「お問い合わせへの返信を失念しておりました。ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」

■資料の「提出」や業務への「対応」を忘れていたとき

・「ご依頼いただいた資料の提出を失念しておりました。大変もうしわけございせん。添付いたしましたのでご査証くださいませ」
・「本日が提出期限であることを失念しておりました。誠に申し訳ございません。〇時までに提出いたします」
・「ご指示いただいた修正作業を失念しておりました。直ちに対応いたします」

■「約束」や「予定」を忘れていたとき

・「本日のお打ち合わせの予定を失念しておりました。お時間をいただいていたにもかかわらず、誠に申し訳ございません」
・「先日お約束した件を失念しておりました。ご迷惑をおかけし、申し訳ございません」
・「会議の日程を失念しておりました。今後このようなことのないよう、予定の管理を徹底いたします」

■伝えられた「内容」を忘れていたとき

・「以前ご説明いただいた内容を失念しておりました。恐れ入りますが、もう一度ご教示いただけますでしょうか」
・「先日伺ったお名前を失念しておりました。大変失礼いたしました」
・「以前お知らせいただいた件を失念しておりました。お手数をおかけして申し訳ございません」


【「失念しておりました」を使った謝罪メールの例文】

■メールの「返信」を忘れていたとき

【件名】返信遅延のお詫び
〇〇株式会社
〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。
先日いただいたお問い合わせへの返信を失念しておりました。
ご連絡が遅くなりましたこと、深くお詫び申し上げます。
お問い合わせいただいた件につきまして、以下のとおり回答いたします。
(回答内容)
今後はメールの確認と対応状況の管理を徹底し、このようなことのないよう努めてまいります。
このたびはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。

■資料の『提出』を忘れていたとき

【件名】資料提出遅延のお詫び
〇〇株式会社
〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。
昨日までにお送りする予定でした資料について、提出を失念しておりました。
お約束の期日を過ぎてしまい、誠に申し訳ございません。
本メールに資料を添付いたしましたので、ご確認いただけますと幸いです。
今後は提出期限の管理を徹底し、同様のことがないよう努めてまいります。
このたびはご迷惑をおかけしましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
何卒よろしくお願い申し上げます。


【「失念しておりました」の言い換えと関連表現|「見落としておりました」との使い分け】

■「忘れておりました」

「忘れておりました」は、「失念しておりました」をわかりやすく言い換えた表現です。「失念」よりも日常的な言葉ですが、「おりました」を使うことで丁寧さが加わり、上司や取引先に対しても使えます。

・「ご依頼いただいた件を忘れておりました。誠に申し訳ございません」
・「以前お伝えいただいた内容を忘れておりました。大変失礼いたしました」

■「見落としておりました」

「見落とす」は、見ていながら気づかずにいることを意味します。「失念」が覚えていたことをうっかり忘れる場合に使われるのに対し、「見落とす」は、メールや資料などに記載された情報を見逃していた場合に適した表現です。

・「メールに記載されていた提出期限を見落としておりました。申し訳ございません」
・「資料の修正箇所を見落としておりました。至急修正いたします」

■「確認が漏れておりました」

「確認が漏れておりました」は、必要な確認作業が抜け落ちていたことを伝える表現です。確認すること自体を忘れていた場合や、確認すべき項目をチェックしていなかった場合に使えます。

・「添付資料の確認が漏れておりました。申し訳ございません」
・「ご指摘いただいた箇所の確認が漏れておりました。改めて確認いたします」

■「不注意で失礼いたしました」

「不注意で失礼いたしました」は、自分の注意不足を認めて謝罪する表現です。忘れていたことを直接表す言葉ではありませんが、うっかりしたミスを詫びる際に使えます。

・「こちらの不注意で失礼いたしました。今後は十分に気をつけます」
・「私の不注意により、ご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ございません」

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「失念しておりました」は、いかにも丁寧な響きのあるフレーズです。「忘れていました」を言い換えるだけで、ずいぶん改まった印象になりますね。ただし、「失念」は「うっかり忘れる」という意味。言葉を丁寧にしたところで、うっかりした事実まで上品になるわけではありません。ビジネスシーンでは、洗練された言葉遣いと同じくらい、その後の対応が大切。謝罪の言葉と具体的な行動で、信頼を取り戻したいものです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /文化庁「敬語の指針」https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf :