【目次】
- 「和服」と「着物」はどう違う?「洋服」との関係も整理
- 10月29日「和服の日」に込められた思い
- 「呉服」「反物」「和装」…意味を知っておきたい関連語
- 「訪問着」「付け下げ」「小紋」はどんな着物?
- 「衣紋を抜く」「半衿を掛ける」。着物の装いを表す言葉
【「和服」と「着物」はどう違う?「洋服」との関係も整理】
■そもそも「和服」って?
「和服」とは、日本に古くから伝わる様式の衣服のこと。「洋服」に対して使われる言葉で、一般には「着物」とほぼ同じ意味です。 和服の中心となるのは、長着(ながぎ)と呼ばれる衣服。これに帯を締め、必要に応じて羽織や袴などを組み合わせます。日本独自の装いとして発展してきた和服ですが、現在では結婚式や成人式などの晴れの日に着るもの、というイメージが強いかもしれませんね。
■「和服」と「着物」はどう違う?
「着物」という言葉には、古くから「身に着けるもの」「衣服全般」という意味があります。つまり、言葉の意味からすれば、和服も洋服も着物の一種ということになります。
一方、現在では「着物」といえば、一般に日本の伝統的な衣服を指します。さらに狭い意味では、帯を締めて着る「長着」のこと。羽織や袴、襦袢なども含む「和服」に対し、「着物」は長着だけを指す場合があるのです。
例えば、「着物に羽織を合わせる」という場合の「着物」は、主に長着を指しています。「和服」と「着物」はほぼ同じ意味で使われますが、「着物」は文脈によって長着だけを指すこともある、と覚えておくとよいでしょう。
■「洋服」という言葉が生まれたのは?
「洋服」は「西洋服」を略した言葉です。西洋風の衣服が日本に広まった明治時代、「洋服」という呼び名が一般に使われるようになりました。 それまで日本人にとって、日常的に着る衣服は現在の和服でした。西洋から新しい服装が入ってきたことで、従来の日本の衣服と区別する必要が生まれ、「和服」と「洋服」という呼び分けが定着していったのです。 今では「服を着る」といえば洋服を思い浮かべる人が多いでしょう。かつては当たり前だった日本の衣服に、わざわざ「和」の字を付けて呼ぶようになったというのも、時代の変化を感じさせます。
【10月29日「和服の日」に込められた思い】
■「和服の日」とは? 日付の「由来」は?
「和服の日」は10月29日です。日付は「いい(1)わ(0)ふ(2)く(9)」という、「良い和服」の語呂合わせに由来しています。
■「誰が」決めた? 制定の背景は?
「和服の日」を制定したのは、佐賀県に本拠を置き、着物の販売などを手がける鈴花グループ。2020(令和2)年には一般社団法人日本記念日協会によって認定・登録されています。
鈴花グループの始まりは、1900(明治33)年に佐賀県で創業した森呉服店です。2020(令和2)年に創業120周年を迎えたことを機に、「和服の日プロジェクト」を立ち上げました。その目的は、和服の素晴らしさをより多くの人に知ってもらい、日本の伝統文化を次の世代へ受け継いでいくこと。約3万人の賛同署名を集め、記念日の認定につなげました。
同グループでは「和服の日」に合わせて、社員が和服姿で勤務したり、着物を楽しむイベントを開催したりと、さまざまな取り組みを続けています。和服を着る機会が少なくなった現代だからこそ、年に一度は着物に袖を通してみる。そんなきっかけをつくりたいという思いが、この記念日には込められているのです。
【「呉服」「反物」「和装」…意味を知っておきたい関連語】
■「呉服」とは?
「呉服(ごふく)」の「呉」は、中国の古代国家の名前に由来します。中国大陸から伝わった織物や織物技術との関わりが、言葉の由来になっているのです。 江戸時代には、絹織物を「呉服」、麻や木綿などの織物を「太物(ふともの)」と呼び、区別していました。つまり、着物に使う織物でも、素材によって呼び名が異なっていたのですね。 現在では、現在では、和服用の織物や衣類を指す言葉として使われています。
■「反物」とは?
「反物(たんもの)」とは、着物を仕立てるために、一定の長さに整えられた織物のこと。「反(たん)」は布の長さを数える単位で、着物1着分の布を「一反」と呼びます。 一般的な着尺用の反物は、幅約36〜37cm、長さ約11.4m。細長い布を裁断し、直線的に縫い合わせることで、一枚の着物が仕立てられます。 洋服では体の曲線に合わせて布を裁断することが多いのに対し、着物は直線裁ちが基本。反物の幅を生かした仕立て方にも、日本の衣服ならではの特徴が表れています。
■「和装」とは?
「和装(わそう)」とは、和服を着ること、または和服を着た姿を指す言葉です。 例えば女性の一般的な着物姿では、襦袢を重ね、帯を締め、足袋や草履などを合わせます。こうした装い全体を表すのが「和装」です。 ちなみに、「和装」には日本式の書物の装丁という意味もあります。同じ言葉でも、使われる分野によって意味が異なるのですね。
■「着尺」とは?
「着尺(きじゃく)」とは、着物の長着を1枚仕立てるのに必要な布の寸法、またはその寸法に整えられた反物を指します。 一般的な着尺は、幅約36〜37cm、長さ約11.4m。着物を仕立てるための反物なので、呉服店などで「着尺」といえば、長着用の生地を指すことが多いのです。 一方、羽織を仕立てるための生地は現在ではあまり見かけなくなりましたが、「羽尺(はじゃく)」と呼ばれます。用途によって布の呼び名が変わるのも、和服ならではの興味深いところです。
【「訪問着」「付け下げ」「小紋」はどんな着物?】
■「訪問着」とは?
「訪問着(ほうもんぎ)」は、縫い目をまたいで模様がつながる「絵羽模様(えばもよう)」が特徴の、女性の準礼装です。肩から胸、袖、裾などに、ひと続きの絵のように柄が描かれ、華やかな印象を与えます。結婚式への参列や祝賀会、パーティーなど、改まった場面で着用されることが多いですね。
訪問着につながる「訪問服」は、明治末期の資料にも見られます。その後、大正から昭和初期にかけて、社交の場にふさわしい装いとして広まっていきました。伝統的な着物という印象がありますが、現在の訪問着の歴史は、意外にも比較的新しいのです。
■「付け下げ」とは?
「付け下げ(つけさげ)」は、訪問着に準じる着物で、準礼装としても着用されます。着物を仕立てたときに模様が上向きになるように、柄の位置や向きを考えて染められています。訪問着が仮仕立てした状態で模様を描く「絵羽模様」を特徴とするのに対し、付け下げは反物の状態で柄を染められ、基本的には模様が縫い目をまたいでいません。一般に訪問着より模様が控えめで、すっきりとした印象のものが多く見られます。
ただし、近年は縫い目をまたいで模様がつながる「付け下げ訪問着」などもあり、外見だけでは区別しにくい場合もあります。着用する場面も幅広く、柄や帯の合わせ方によって、少し改まったお出かけから式典などまで対応できます。
■「小紋」とは?
「小紋(こもん)」とは、型紙などを使い、同じ模様や細かな柄を、反物全体に繰り返し染めた着物のこと。訪問着や付け下げとは異なり、柄の上下や配置を特定の場所に合わせないのが基本です。街歩きや食事会、観劇など、日常のお出かけに向いた着物として親しまれています。
なかでも「江戸小紋」は、遠目には無地に見えるほど細かな模様が特徴。紋の有無や柄などによっては、改まった場面にも着用されます。同じ染めの着物でも、模様の配置や細かさによって名前が変わり、着用する場面にも違いが生まれるのですね。
【「衣紋を抜く」「半衿を掛ける」。着物の装いを表す言葉】
■「衣紋を抜く」とは?
「衣紋(えもん)」とは、着物の着方や、胸元の襟の合わせ方などを指す言葉です。「衣紋を抜く」とは、着物の襟を後ろに引き下げ、首の後ろと襟の間に空間をつくること。女性の着付けでは、首筋が美しく見えるよう、衣紋を適度に抜くのが一般的です。
衣紋の抜き加減によって、着姿の印象も変わります。抜きすぎるとだらしなく見えることがあり、逆に詰めすぎると窮屈な印象になることも。着物の種類や着る人の年齢、好みに合わせて調整するのがポイントです。
■「半衿を掛ける」とは?
「半衿(はんえり)」とは、長襦袢や半襦袢の襟に重ねて付ける、細長い布のこと。着物の襟元から少し見える部分で、襦袢の襟が汚れるのを防ぐとともに、装いを引き立てる役割があります。白が一般的ですが、刺繍や色柄のあるものもあり、装いのアクセントとして楽しめます。
「半衿を掛ける」とは、この半衿を長襦袢の襟に縫い付けることです。
■「おはしょり」とは?
「おはしょり」とは、女性が着物を着る際、腰のあたりで余った丈を折り上げ、帯の下に見えるように整えた部分のことです。現代の女性用の着物は、一般に身長に近い長さに仕立てられ、着付けの際に腰紐などを使って丈を調整します。このときにできる折り返しがおはしょりです。
ちなみに、江戸時代の女性も、外出や仕事の際には着物の裾をたくし上げ、帯などで留めていました。現在のように、帯の下におはしょりを整える着方が成立したのは明治時代のことです。
■「着付け」とは?
「着付け」とは、衣服を身に着けること、または人に着せること。現在では特に、着物を正しく美しく着ることや、その技術を指して使われます。着物は同じ一枚でも、襟の合わせ方、帯の位置、おはしょりの整え方などによって、着姿が変わります。着付けには、着崩れを防ぎながら、着る人の体形や装いに合わせて美しく整える工夫が詰まっています。
■「袖を通す」とは?
「袖を通す」とは、衣服を着ること。特に、新しい衣服や、初めて着る衣服について使われる表現です。「新しい着物に袖を通す」「仕立て上がったスーツに初めて袖を通す」など、和服にも洋服にも使えます。「袖を通す」という言い方には、衣服を着る動作がそのまま表れています。新しい一着を初めて身に着けるときの、ちょっと特別な気分も伝わってくる言葉ですね。
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今回は「和服」と「着物」の違いから、訪問着や付け下げの特徴、着付けにまつわる言葉までご紹介しました。ところで、昔はハンガーを「衣紋掛け(えもんかけ)」と呼んでいたのをご存じですか? 本来は着物を掛ける道具を指す言葉ですが、洋服を掛けるハンガーも「衣紋掛け」と呼ばれていました。今ではあまり耳にしなくなった言葉ですが、私たちの暮らしのなかには、和服の文化に由来する言葉がまだまだ残っているのですね。
10月29日は「和服の日」。久しぶりに着物に袖を通してみるのも、和服にまつわる言葉を改めて味わってみるのも、よさそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『日本国語大辞典 第二版』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『世界大百科事典』(平凡社)/鈴花グループ「和服の日」(https://shop.suzuhana.co.jp/detail/130/news/10240330/)/文化庁「生活文化調査研究」(https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/seikatsubunka_chosa/index.html) /山野愛子ジェーンほか「きもの姿における『おはしょり』の実践的研究」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/yca/32/0/32_11/_pdf/-char/ja?utm_source=chatgpt.com) :

















