【目次】

【「甜菜」は何と読む?砂糖の原料になる植物の正体】

■「甜菜」の読み方は?

「甜菜」は「てんさい」と読みます。

■「甜菜」はどんな植物?

「甜」は「甘い」という意味をもつ漢字で、甜菜は冷涼な気候に適した砂糖の原料作物です。「砂糖大根(さとうだいこん)」や「ビート」とも呼ばれています。

「大根」という名前が付いていますが、私たちが普段食べている大根とは別の植物です。食用の大根はアブラナ科に属しますが、甜菜はヒユ科。根は丸みを帯びた紡錘形で、内部は白色から黄白色。見た目は大きなカブにも似ています。国内で砂糖の原料用に栽培される甜菜は、北海道産です。春に種をまくか、育てた苗を畑に植え、秋に収穫します。収穫期は10月中旬から下旬ごろに始まり、土の中で大きく育った根を掘り取ります。

砂糖の原料になるのは、この肥大した根の部分です。収穫期の根には、およそ15〜20%の糖分が含まれています。収穫した甜菜を洗って細かく切り、温水で糖分を取り出したあと、精製・濃縮・結晶化などの工程を経て砂糖がつくられます。ちなみに、甜菜はもともと飼料用のビートを改良して生まれた作物。18世紀のヨーロッパで砂糖の原料として注目され、日本には明治時代に導入されました。


【10月31日「てん菜・てん菜糖の日」とは】

■「てん菜・てん菜糖の日」は「いつ」?「誰が」決めた?

「てん菜・てん菜糖の日」は10月31日です。JAグループ北海道は、この日に合わせて、甜菜とてん菜糖の魅力を伝えるイベントを開催しています。

■2025年にはギネス世界記録を達成!

2025(令和7)年の10月31日には、札幌市でユニークなイベントが開催されました。JAグループ北海道が進める砂糖の消費拡大に向けた「天下糖一プロジェクト」の一環として、道産てん菜糖を100%使用したキャンディー4,858個を並べ、巨大な文章をつくるというもの。約100人が参加し、縦2メートル、横7メートルのスペースに「10月31日はてんさい・てんさいとうの日」という文章を完成させました。

この取り組みは、キャンディーを使った世界最大の文章としてギネス世界記録に認定されました。記念日の誕生を、文字どおり甘い記録で祝ったのですね。


【「てん菜糖」と「甘しゃ糖」は原料が違う】

■「てん菜糖」と「甘しゃ糖」の違いは?

砂糖を原料となる植物で分けると、代表的なものに、甜菜からつくられる「てん菜糖」と、サトウキビからつくられる「甘しゃ糖(かんしゃとう)」があります。

「てん菜糖」は甜菜からつくられる砂糖。一方、「甘しゃ糖」はサトウキビを原料とする砂糖です。「甘しゃ」とはサトウキビの別名で、漢字では「甘蔗」と書きます。甜菜が冷涼な気候を好むのに対し、サトウキビは熱帯・亜熱帯地域で栽培される作物。日本では、主に沖縄県や鹿児島県の南西諸島で栽培されています。

■同じ「砂糖」でも、原料の姿はこんなに違う!

甜菜は土の中で大きく育った根に糖分を蓄えますが、サトウキビは太く伸びた茎に糖分を蓄えます。そのため、砂糖を取り出す方法にも違いがあります。

甜菜は細かく切った根を温水に浸して糖分を抽出するのに対し、サトウキビは茎を圧搾して糖分を含む汁を搾り出します。こうして取り出した糖液から砂糖の結晶をつくるのです。ちなみに、原料が違っても、どちらからも砂糖の主成分である「ショ糖」が得られます。十分に精製された砂糖であれば、甜菜由来かサトウキビ由来かによって、ショ糖そのものの性質が変わることはありません。


【「てんさい糖」と「上白糖」は何が違う?分類を整理】

■「てんさい糖」と「上白糖」は、分類の基準が違う

スーパーの砂糖売り場には、「てんさい糖」「上白糖」「グラニュー糖」など、さまざまな名前の商品が並んでいます。では、「てんさい糖」と「上白糖」は何が違うのでしょうか。

ここで押さえておきたいのが、砂糖の分類には複数の基準があるということです。「てんさい糖」は原料による分類で、甜菜からつくられた砂糖の総称。一方、「上白糖」は製法や性質による分類で、しっとりとした質感と、きめ細かな結晶が特徴です。

つまり、甜菜からつくられた上白糖もあれば、サトウキビからつくられた上白糖もあります。「てんさい糖」と「上白糖」は、どちらか一方を選ぶような対立する分類ではないのです。

■なぜ「てんさい糖」は茶色?

店頭で「てんさい糖」として販売されている商品には、淡い茶色のものがあります。そのため、「甜菜からつくられる砂糖は茶色い」と思っている人もいるかもしれません。しかし、甜菜を原料にしても、白い砂糖をつくることができます。砂糖の色は、原料となる植物だけで決まるものではありません。

例えば、ホクレンの茶色い「てんさい糖」は、砂糖の結晶を取り出したあとの糖蜜を利用してつくらており、同社は、茶色は蜜を含む素材の色であると説明しています。色の違いを理解するには、原料に加えて製造方法にも注目することが大切なのですね。


【「含蜜糖」「分蜜糖」「糖蜜」…砂糖を知るための用語集】

■甘いのは、砂糖の結晶だけではありません…糖蜜

砂糖の製造工程で登場する「糖蜜(とうみつ)」という言葉。これは、糖液から砂糖の結晶を取り出したあとに残る、褐色で粘り気のある液体のことです。「砂糖を取り出したあとなのに、まだ甘いの?」と思うかもしれませんね。実は、糖液に含まれる糖分のすべてが結晶になるわけではありません。結晶にならず、液体に溶けたまま残るショ糖などの糖分もあるのです。そのため、糖蜜にも甘みがあり、食品の原料やアルコール発酵などに利用されています。

■色は作り方によって変わる…含蜜糖と分蜜糖

この糖蜜を理解すると、砂糖の製法による分類もわかりやすくなります。

「含蜜糖(がんみつとう)」は、糖蜜を分離せずにつくる砂糖です。代表例は、サトウキビの搾り汁を煮詰めてつくる黒砂糖。糖蜜に含まれる成分が残るため、独特の色や風味があります。一方、「分蜜糖(ぶんみつとう)」は、砂糖の結晶と糖蜜を分離してつくる砂糖。上白糖やグラニュー糖などが代表例です。精製によって色のもとになる成分などを取り除くと、白い砂糖になります。

つまり、黒砂糖のように糖蜜の成分を残す方法もあれば、結晶と糖蜜を分けて白い砂糖に仕上げる方法もあるということ。ただし、分蜜糖にも茶色い砂糖があるため、色だけで製法を判断することはできません。

■上白糖とグラニュー糖、質感の違いは?

砂糖の用語で覚えておきたいのが「精製糖(せいせいとう)」です。原料糖などから不純物を取り除き、精製してつくられる砂糖の総称で、上白糖やグラニュー糖などが含まれます。

では、同じ精製糖なのに、上白糖はしっとりしていて、グラニュー糖はさらさらしているのはなぜでしょうか。
その秘密は「転化糖(てんかとう)」にあります。転化糖とは、砂糖の主成分であるショ糖が分解されてできる、ブドウ糖と果糖の混合物のこと。上白糖は、製造の仕上げに転化糖を含む液を結晶の表面に加えることで、しっとりとした質感に仕上げられています。一方、グラニュー糖はショ糖の純度が高く、結晶の表面に転化糖液を加えないため、​さらさらとした質感が特徴です。コーヒーや紅茶に使う砂糖と、料理によく使う砂糖。見慣れた砂糖の違いにも、ちゃんと理由があるのですね。

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毎日の食卓に欠かせない砂糖。その原料が、北海道の畑で育つ大きな根菜だったり、南の島で育つサトウキビだったりするのは、改めて考えてみるとなかなか興味深い話です。さらに、砂糖の結晶を取り出したあとに残る「糖蜜」にも、まだ甘みがたっぷり含まれているとは、こちらも意外な発見でした。白い砂糖も茶色い砂糖も、それぞれの製法に理由があるのですね。

10月31日の「てん菜・てん菜糖の日」。砂糖の世界も、見た目ほど単純ではないようで、白黒つけられないところが、またおもしろいですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館) 日本農業新聞「あめ4858個でギネス記録 世界最大の文章に JAグループ北海道の『天下糖一プロジェクト』」(https://www.agrinews.co.jp/society/index/342042)/農林水産省「違いを知って料理をおいしく!砂糖の種類と製造方法(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2111/spe1_01.html) /農畜産業振興機構「砂糖の原料について~てん菜~」(https://www.alic.go.jp/koho/mng01_000078.html)/精糖工業会「砂糖の基礎知識」(https://seitokogyokai.com/knowledge/)/ホクレン「甜菜ができるまで」(https://www.tensaito.com)

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