【目次】

【「刺繍」は何と読む?漢字の意味と「刺しゅう」の表記】

■「刺繍」の読み方は?

「刺繍」は「ししゅう」と読みます。布地に針と糸を使って模様や文字などを縫い表すこと、また、そのようにして施された装飾を指す言葉です。「ぬいとり」ともいいます。衣服やハンカチ、バッグなど、身近なものにも使われ、たとえほんの小さなモチーフでも、糸の色や刺し方によって繊細な模様から立体感のある装飾まで、さまざまな表情が生まれます。

■「刺」と「繍」にはどんな意味がある?

「刺」は「刺す」「突き刺す」という意味をもつ漢字。。一方、「繍」は、糸で模様を縫い表す「ぬいとり」を意味する漢字です。つまり「刺繍」は、針で布を刺し、糸で美しく飾ること。ふたつの漢字を見れば、その技法がよくわかりますね。

■「刺繍」と「刺しゅう」、どちらが正しい?

「刺繍」と「刺しゅう」は、どちらも同じ意味です。表記が異なるのは、「繍」が常用漢字表に含まれていないため。「刺」は常用漢字なので、漢字とひらがなを組み合わせた「刺しゅう」という書き方も使われています。また、「繍」には「繡」という字体もあります。辞典などで「刺繡」と表記されていても、意味は同じです。漢字で書くと少々難しそうな「刺繍」ですが、針と糸で布を彩る、親しみ深い手仕事を表す言葉なのです。


【11月4日「いい刺しゅうの日」はどんな記念日?】

■ 「いつ」?「誰が」制定した?

「いい刺しゅうの日」は11月4日です。全国の刺繍関連事業者などで組織される「日本ジャガード刺繍工業組合」が制定し、2019(令和元)年に日本記念日協会に認定・登録されました。

■「目的」は?

手刺繍から機械刺繍まで、さまざまな刺繍の魅力を広く伝え、刺繍文化の普及や業界の活性化につなげることを目的としています。制定団体は、手仕事による刺繍だけでなく、コンピューター化された機械刺繍にも目を向けた記念日として紹介しています。

■日付の「由来」は?

日付は「いい(11)刺(4)しゅう」という語呂合わせから。「刺繍」と聞くと、刺繍枠を使って一針ずつ模様を描く手芸を思い浮かべる人も多いでしょう。一方で、衣服のブランドロゴやワッペンなど、機械による刺繍も私たちの暮らしに広く取り入れられています。この記念日には、そんな刺繍の多彩な魅力を知ってほしいという思いも込められているのです。

■記念日にちなんだ取り組みも

制定した日本ジャガード刺繍工業組合では、「いい刺しゅうの日」を記念した展示会やコンテストも開催してきました。2020(令和2)年には刺繍入りマスク、翌2021(令和3)年にはトートバッグ、2022(令和4)年にはハート形のワッペンをテーマに、刺繍の技術やデザインを披露。さらに、2023年には大阪文化服装学院と協業し、学生がデザインしたワッペンやブローチを組合企業が製作。展示・販売する取り組みも行われました。

伝統的な手仕事から最新の機械技術まで、刺繍の可能性を次の世代につないでいく記念日でもあるのですね。


【「刺繍」と「織物」はどう違う?模様が生まれる仕組み】

■「刺繍」…布の上に模様を描く

刺繍と織物は、どちらも糸を使って美しい模様を生み出す技法ですが、その仕組みには大きな違いがあります。刺繍は、すでにできあがった布地に針で糸を刺し、模様を加えていく技法です。糸を重ねたり、刺す方向を変えたりすることで、色彩の濃淡や立体感を表現できます。花や動物、文字など、自由な図案を描けるのも魅力です。

■「織物」…縦糸と横糸を組み合わせてつくる

一方、織物は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて布地そのものをつくる技法です。糸の組み合わせ方や色を工夫すれば、布を織り上げる過程で模様を生み出すこともできます。つまり、刺繍が布地などに後から装飾を加えるのに対し、織りは布地そのものをつくる点に違いがあります。

■「ジャカード織」は刺繍とは違う?

複雑な花柄や幾何学模様が織り込まれた「ジャカード織」も、刺繍と間違えやすいもののひとつです。ジャカード織は、ジャカード機という装置を備えた織機でつくられる紋織物のこと。縦糸の動きを制御することで、複雑な模様を布地に織り出します。模様が布の上に縫い付けられているわけではありません。

例えば、カーテンやネクタイ、インテリア用の布地などにも、ジャカード織の技法が使われています。刺繍のように見える美しい模様も、実は布そのものに織り込まれている場合があるのですね。


【「日本刺繍」「フランス刺繍」「クロスステッチ」の特徴】

■「日本刺繍」…絹糸の光沢が生む、繊細で優美な表現

「日本刺繍(にほんししゅう)」は、日本の伝統的な刺繍技法です。主に絹の布地に絹糸を使って模様を刺し、金糸や銀糸を用いることもあります。大きな特徴は、絹糸ならではの美しい光沢。糸の色や刺す方向を巧みに使い分けることで、花や鳥、四季の風景などを繊細に表現します。着物や帯などの装飾にも用いられ、和装の華やかさを引き立ててきました。

■「フランス刺繍」…多彩なステッチで自由に模様を描く

「フランス刺繍(フランスししゅう)」は、ヨーロッパ風の刺繍の総称です。色とりどりの糸を使い、さまざまな刺し方を組み合わせて模様を描きます。刺繍の世界では、針目や刺し方のことを「ステッチ」と呼びます。例えば、輪をつなげたようなチェーンステッチや、面を糸で埋めるサテンステッチなど。ステッチを使い分けることで、花や植物、文字など、多彩なデザインを表現できます。衣服のワンポイントからクッションやテーブルクロスなどの室内装飾まで、幅広く親しまれている刺繍です。

■「クロスステッチ」…小さな「×」を重ねて模様をつくる

「クロスステッチ」は、糸を「×」の形に交差させて刺していく技法で、「十字縫い」とも呼ばれます。小さな「×」を規則正しく並べることで、花や動物、幾何学模様など、さまざまな図案をつくることができます。方眼紙のマス目を埋めるような感覚で、図案に沿って一針ずつ模様を仕上げる楽しさがあります。

日本刺繍やフランス刺繍が幅広い表現や技法を含むのに対し、クロスステッチは「×」の形に刺す、ひとつの技法を指す言葉です。


【「刺し子」「アップリケ」「キルティング」とは?技法の特徴を確認】

■「刺し子」…布を丈夫にする、日本の伝統的な技法

「刺し子(さしこ)」は、日本の伝統的な刺繍の一種です。衣服の補強や保温のため、布に細かく刺し縫いを施してきました。布を重ねて縫うものもあり、実用性と装飾性を兼ね備えています。

消防の刺し子半纏(はんてん)や柔道、剣道の稽古着などに用いられ、特に東北地方では、貴重な布を大切に使う暮らしの知恵として発達。青森県の「津軽こぎん刺し」や「南部菱刺し」は、その代表例です。紺色の布に白い糸で幾何学模様を刺したり、色糸を使って菱形の模様を表現したりと、実用性と美しさを兼ね備えているのが特徴です。

現在では、衣服の補強という本来の目的に加え、布小物などを彩る手芸としても親しまれています。

■「アップリケ」…別の布を縫い付けて模様をつくる

「アップリケ」は、土台となる布の上に、図案に合わせて切った別の布や革などを置き、縫い付けて模様をつくる技法です。もともとは、衣服の破れや傷みを補修するための当て布から発達したといわれています。刺繍が糸を使って模様を描くのに対し、アップリケは布そのものの色や柄を生かして模様を表現するのが特徴。大きな図案もつくりやすく、立体感を出すこともできます。子供服やバッグ、クッションなど、身近なアイテムにも広く使われています。

■「キルティング」…布を重ねて縫い、立体的な模様を生み出す

「キルティング」は、表布と裏布の間に綿や羽毛などを挟み、縫い合わせる技法です。縫い目によって模様が浮き上がり、ふっくらとした立体感が生まれます。もともと保温や補強の役割があり、現在もジャケットや寝具、バッグなどに幅広く使われています。

刺繍が糸で模様を加えるのに対し、キルティングは布を重ねて縫うことで模様と厚みを生み出すのが特徴です。また、アップリケを組み合わせたキルティングもあり、複数の技法を使って装飾性を高めることもできます。刺し子、アップリケ、キルティングは、いずれも実用的な工夫から生まれ、美しい装飾へと発展してきた技法。暮らしの知恵が、手仕事の美しさにつながっているのですね。

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11月4日の「いい刺しゅうの日」は、針と糸が生み出す美しい装飾の世界に目を向ける記念日です。日本刺繍の優美な絹糸、フランス刺繍の多彩なステッチ、クロスステッチの規則正しい模様…。ひと口に刺繍といっても、その表現は実にさまざまです。

興味深いのは、刺し子やアップリケなど、今では装飾として親しまれている技法の多くが、もともとは衣服を補強し、長く使うための暮らしの知恵だったこと。実用から生まれた工夫が、やがて美しい手仕事へと発展していったのですね。

「いい刺しゅうの日」には、そんな小さな装飾に目を向けてみるのもよさそうです。針と糸さえあれば、ただの布が一枚の絵になるなんて、改めて素晴らしい技術だと思いませんか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
/『世界大百科事典』(平凡社) /日本ジャガード刺繍工業組合(https://sishu.or.jp) /一般社団法人 日本記念日協会(https://www.kinenbi.gr.jp)
/文化庁「常用漢字表」(https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf) /大阪文化服装学院「『いい刺しゅうの日』コンテストを通じて学生と企業がコラボ」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000081590.html) :