連載|キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」
連載【キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」】では、大江さんが気になる現場を訪れ、お話をうかがい、“現場”でしか分からない温度をお伝えします。
今回は【〈第五回〉西陣織の老舗「HOSOO」潜入取材!】をお届け。前編、後編の二部に分けてお送りします。こちらは前編です。
〈第五回〉 西陣織の老舗「HOSOO」潜入取材!
日本の美を、未来へ繋ぐ/文・大江麻理子
まさに温故知新!海外で感じた原点の大切さ
西陣織の「細尾」の名前を聞くと、海外の名だたるブランドとのコラボレーションを思い浮かべる方も多いだろう。しかし、細尾の12代目、細尾真孝さんの視線は、外に向けられているだけではない。同じかそれ以上に、内側、つまり着物文化の原点に向けられている。
「原点回帰のきっかけはなんでしょう?」大江
「海外展開でしょうね。僕たちの価値はなんなのか、とことん考えました」 真孝さん
「海外展開をしたことが、原点回帰の大きなきっかけになったと思います。外に出ると、自分たちは何者かを突き詰めて考えることになる。何が僕たちの価値なのか。存在意義はなんなのか。考えて辿り着いたのが、歴史とか、日本古来の素材とか。そういう原点を守ることが未来への道を拓くという発想だったんです」
細尾が海外を目指したのは、真孝さんの父、真生(まさお)さんの代からだ。真生さんは大学卒業後、すぐに細尾に入ったわけではない。伊藤忠商事に入社し、ミラノへの海外赴任を経験した。そこで西陣織を海外に広めたいという思いを強くしたそうだ。息子の真孝さんは、父の赴任で幼少期を海外で過ごしていたこともあり、海外にあまり垣根を感じていなかったようだ。そして父と同じように、細尾にすんなり入らず、ミュージシャンとして音楽活動をしたり、大手のジュエリーメーカーに勤務したりしてから実家に戻っている。こうして親子2代にわたって「外」を経験したことが、細尾にとって大きな転換点になった。
西陣織が海外で苦戦する理由は、着物や帯に使うことが前提となっていて織物の幅が狭いからだ、ということに気付き、それまでの32cmから大きく幅を広げ、世界のテキスタイルの標準幅である150cmのものを織ることができる機械を独自に開発した。
「そんな機械はどこにも存在しなかったので、自分たちでつくるしかありませんでした」と真孝さんは笑う。それ以来、“クリスチャン・ディオール”、“シャネル”、“ルイ・ヴィトン”、“グッチ”など、海外ブランドとの仕事が飛躍的に増え、もちろん日本でもさまざまなシーンで細尾の織物が使われるようになった。
「未来にタイムスリップした感覚になる茶室ですね」大江
「つくる過程で茶の湯文化を突き詰めて考えました」細尾さん
京都にある細尾の旗艦店には、和と洋が融合した、モダンなアイテムが並んでいる。
「理想は、ワードローブのなかに和服と洋服が並んでいて、両方が同等に選択肢となる世界。なかでもバッグ類は和洋どちらにも合わせられるようにデザインしています」
「和洋どちらにも合わせられるデザインですね」大江
「理想は、和服と洋服が同等に選択肢となる世界です」多英子さん
案内してくださったのは、真孝さんの妻で副社長の多英子(たえこ)さん。実は私、結婚する前の多英子さんを知っている。もう15年以上前の話だが、当時は東京で外資系化粧品会社の広報担当をなさっていて、敏腕なうえお人柄がよいことで知られていた。細尾の大躍進には、多英子さんの存在が欠かせなかったはずだと踏んでいる。
「たくさんのプロジェクトが同時進行しているなか、どのように管理をしているのですか?」と真孝さんにたずねたら、「主にオタクっぽいことは僕が、あとは多英子さんがどっしり構えてやってくれています」と夫婦で微笑み合いながら教えてくださった。
【DATA】「HOSOO FLAGSHIP STORE」
TEL:075-221-8888
時間:10:30〜18:00 祝日・年末年始休
URL:hosoo.co.jp/showroom/flagship/
住所:京都府京都市中京区柿本町412
- PHOTO :
- 川上輝明
- HAIR MAKE :
- 仲嶋洋輔(Perle)
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、濱谷梢子(Precious)

















