二宮和也さん、エイミー・ホンマさん、村田千恵子さんが日本映画の現在と未来について語り合う【ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク】をリポート
今年も大盛況のなか閉幕した、アジア最大規模を誇る映画祭「第39回東京国際映画祭」の提携企画となる、文化・芸術の世界で活躍する女性に光を当てる【ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク】が、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催されました。
ケリング「ウーマン・イン・モーション」プログラムは、「グッチ」や「サンローラン」などを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」がオフィシャルパートナーを務める「カンヌ国際映画祭」で2015年に創設され、芸術や文化の世界で今なお残るジェンダー格差などの課題に取り組むべく、多様な才能や声を支援する取り組みを続けています。
東京国際映画祭との提携により2019年からスタートした【ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク】は日本での開催が9年目を迎え、今年は歌手・俳優としてグローバルにご活躍の二宮和也さんをはじめ、米アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ館長兼プレジデントであり、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマさん、そして昨年、大ヒットを記録した映画『国宝』の企画・プロデュースを手がけた映画プロデューサーの村田千恵子さんが登壇。近年、特に世界的な評価が高まっている日本映画の多様性と未来について、企画・制作・出演とそれぞれの観点から熱い議論が交わされました。
多くの観客を魅了したトークイベントの様子を、詳しくレポートします。



是枝裕和監督によるオープニング・スピーチで【ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク】がスタート
トークセッションに先立ち、映画監督の是枝裕和さんが登壇され、オープニング・スピーチを披露されました。開口一番、カンヌ国際映画祭など海外の映画祭に参加した際に、「ここ数年、すごく “日本映画おもしろいよね” って声を聞くようになりました」と話され、
「濱口(竜介)監督や深田(晃司)監督のような、30〜40代の若い監督たちが自分の作品を(映画祭へ)持っていく。その積み重ねにより、日本映画に対する注目度が上がっている気がします」とグローバルにおける日本映画への期待値の高まりについて言及されました。
そして、「今後、継続して次世代に渡して広げていけるか、というのが僕ら世代にとっての課題で、映画ファンの方々にとっても大事なことになるのではないかと思います」と、未来への課題についてもコメントされました。
また、「濱口(竜介監督)さんをはじめ、僕らインディペンデントで映画を作ってきた人たちにとって大事な場所であるアートハウス、ミニシアターがどんどん減っていて、映画を観る環境が映画の多様性に応えられていない現状がある」ことに触れ、「映画を愛する作り手としてとても危機感を感じているので、どう映画文化を守っていくべきかについても考える必要があると思っています」と胸の内を明かしました。
その一方で、2023年に立ち上げられた、映画に携わるすべての人が安心して働ける未来を目指す「日本映画制作適正化機構」についても触れ、
「東宝さんが撮影所のなかに保育施設を整備されたりと、10年前では考えられなかった女性が働きやすい環境、結婚・出産しても離職しないで済む、働きたい時に継続して働ける環境が整ってきた。まだ全部整っているわけではないけれど、何とかしなければならないという問題意識は共有されるようになってきたなと感じています」と、より良い作品づくりに欠かせない働く環境改善が今後も重要なことを提示して、トークセッションの開幕を宣言しました。
二宮和也さんをはじめ豪華ゲストと考える【日本映画の今と未来、そして文化を紡ぐ多様な創造性】とは?
盛大な拍手に迎えられてスタートしたトークセッションでは、国際的な映画祭で確実に存在感を放ち、期待感が高まっている「日本映画の現在地」をテーマに、それぞれの立場やさまざまな角度から議論が交わされました。
まず、昨年の公開で日本映画興行新記録を樹立した歴史的大ヒット作『国宝』の企画・プロデュースを手がけた村田さんが、カンヌ国際映画祭や、米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表として、ロサンゼルスを始め世界各地でプロモーション活動を行うなかで日本映画に対する世界の期待値の高さを実感したと話し、
「二宮さんが主演された映画『8番出口』もカンヌ映画祭で大きな話題になっていましたし、皆さん本当に日本映画を観てくださっているなと感じました。(『国宝』のプロモーションで)ヨーロッパ、アジアといろんな国に行ったんですけど、特にアカデミーキャンペーンをしていた時、アメリカのアカデミー会員に観てもらってフィードバックをしてもらったら、クラフトマンシップ(職人の技術)の高さをすごく評価していただいたんです。
(米アカデミー賞では)メイクアップ&ヘアスタイリング部門でノミネートしていただきましたが、衣装や美術、俳優部門など、同業者の方に技術の高さを評価されて、それがいわゆる日本らしさにつながるのかなと。映画自体がもちろん日本らしくはあったんですが、それ以上にその中にあるクラフトマンシップ、緻密なものを作る手先が器用、みたいなところが日本らしさとして評価されたのかなと、現地に行ってみて感じさせられました」と当時を振り返りました。
その『国宝』のアカデミーキャンペーンで、米アカデミー会員に上映する際の会場として提供されたのが、エイミー・ホンマさんが館長を務める映画ミュージアム『アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ』でした。2021年に米・ロサンゼルスに世界最大規模の映画ミュージアムとしてオープンし、展示や上映、教育プログラムを通じて映画の歴史や作り手の仕事に触れることができる、交流の場としても貴重な施設となっています。
ホンマさんはお父様が日本のご出身ということもあり、日本作品への造詣も深く、ミュージアムでも昨年は黒澤明監督作品の上映を行ったり、最近は宮崎駿監督の代表作『崖の上のポニョ』のエキシビションが開催されるなど、日本映画を紹介する機会も少なくないそう。
ホンマさんは村田さんが話された、日本映画の技術者に対するクラフトマンシップへの評価の高さに関して、「まったく同感ですね」とうなずきながら
「(日本映画に携わる衣装や美術、俳優たちの)職人技を含め、日本の芸術から感銘を受けてきましたので、特に歌舞伎もそうですが、ヘアメイクの技術など、『国宝』を通してすごく日本の伝統を感じることができました。ミュージアムにもお越しいただき光栄でした」と個人的に魅せられている日本映画への熱い思いも感じさせました。
また、二宮さんは昨年、大ヒットを記録した主演映画『8番出口』がカンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門で上映され、大喝采を受けた当時を振り返りながら、同時期に公開された『国宝』について、「(映画館のスクリーンで)あんなにも日本映画が日本映画を食っていた作品って、あまりなかったんじゃないかなって。俳優ももちろんみんな(『国宝』を)観てましたし、あれだけ参加したかったと思える作品は久しぶりだったんじゃないかと思います」と率直な感想を述べられました。
今回、二宮さんは、映画界における女性の活躍を支えるために立ち上げられた、ケリング「ウーマン・イン・モーション」プログラムで、性別や立場を越えて共に考え、行動する “アライシップ(Allyship)” の立場を担う男性ゲストとしても参加されました。「女性がより力を発揮できる環境づくり」についての考えを尋ねられ、
「(一緒に働く女性の方々を見ていて)コミュニケーション能力が明らかに高いなと感じています。この業界で、というより、僕自身の生活圏内の中でもいつもそう感じています」とし、
「例えば、シェフは男性が多い気がしますが、料理教室の先生は女性が多い。そこにどんな違いがあるのかといえば、コミュニケーションをとるかとらないかだと思います。男性は無機物的なものに向き合うことが得意かもしれない。木と向き合うとか、土と向き合うとか。人と向き合うのは女性の方が優れているなと感じますし、コミュニケーションの場で引っ張ってくれるのは、すごくありがたいです。
それこそ、女性のプロデューサーの方々が(毎日の現場で周囲のスタッフなどに)声をかけるとか、その人のケアをしようとする動きが広まったりとか、そういうケアをしていただけるのは、大きいです。役者としても “やれるか?” と聞かれれば “やれます” と、どうしても頑張ってしまう職業なので、(そこをケアしてもらえると)安心して働ける環境が作られているなと実感しますね」と、日ごろの実感を踏まえた体験談を語られました。
また、ここ10年で女性が働く環境は変化したと思うか?を尋ねられ、
「変わってきてますよね。僕が働いている現場をみても、(女性スタッフの数が)だいぶ増えてきてますね。それはいいことだと思います」と、女性が活躍することの意義を強調しました。
アメリカでミュージアムの館長兼プレジデントという責任ある要職に就くホンマさんは、映画文化を未来へと継承していく立場として、「映画業界の次世代を担う若手の創作意欲へと、どうつなげていきたいか」を聞かれ、
「アカデミー・ミュージアムでは、映画の裏側をお見せすることができます。映画を観るだけでは普通の映画体験にすぎませんが、その舞台裏ではどのような方たちが映画に貢献したのか、そのストーリーを見ることができます。それが、未来の作り手たちへのインビテーションになっているのではないかと考えます」と語り、ミュージアムの存在が未来の作り手たちの創作意欲を刺激するきっかけになることへの期待を寄せました。
また、村田さんは “男性社会” と言われてきた日本映画界では数少ない女性リーダーとして活躍されている立場として、「10年後の日本映画界で、ひとつだけ変わっていてほしいと思うことは?」と尋ねられ、「ひとつだけが難しい…」としながらも
「(映画界で働いている女性が)増えたとは思います。でも、子どもを産んで育てながら働くための時間だったり、子どもが熱を出した時、仕事を休まなければならないような場合に、女性だけではなく男性にもゆとりある制度がきちんとできているといいなと思います。
今の “産休・育休・何カ月” みたいなものだけではなく、日々の生活の中でそこが実現できる環境が、頑張れば10年後には実現できているのではないかと思っています」と、日本映画の将来を担う若い世代が働きやすい未来への期待も込めました。
同じく「10年後の日本映画界で、ひとつだけ変わっていてほしいと思うことは?」との問いに、二宮さんは
「エンタメの世界観でいうと、観てくださるお客様に楽しんでもらいたいと、ひとりでも多くの方に感動を、また一人でも多くの方を笑顔に、さらにひとりでも多くの方が泣けるものを常に作っていきたいと思っているので。
いろんな角度から、さまざまな意見をいただく時代になってきているので、とにかくいい作品、いい芝居をして、『実はあの時、あの作品を観て、あのキャラクターを観て、私も俳優になろうと思ったんです』とか、『映画業界に行こうと思ったんです』っていう人がどんどん増えるような環境を作っていけたらなと思いますね」と、強い覚悟をものぞかせました。
世界から熱い視線が注がれる日本映画の「いま」を見つめ、そして「これから」を考える提言まで、さまざまな立場から語り尽くされた今回のトークセッション。立場の枠を越えて語り合った一人ひとりの言葉には、これから働きやすい映画業界をつくっていくための大きなヒントがみえたような気がしました。日本をはじめ世界の映画界の輝かしい未来を予感させ、大きな希望と興奮に包まれたひとときとなりました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 松野実江子(Precious.jp)

















