長い歴史を誇るアストンマーティンのなかでも、代表的なモデルが「DB」だ。第二次世界大戦後に経営者の立場にあった、デヴィッド・ブラウンのイニシャルを冠したこのシリーズは、現在DB11としてリリースされている。そしてこのたび、さらなるハイスペック化と軽量技術を用いたフラッグシップ、DBSスーパーレッジェーラが発表された。あのスーパーカーをも凌ぐという強力なエンジン、そして高性能GTとしてのキャラクターの濃度を、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が解説する。
「スーパーレッジェーラ」とは何か
英国の男たちはいつもアストンマーティンを愛してきた。105年前の1913年にロバート・バムフォードとライオネル・マーティンが作りあげた競技用のマシンがスタートだ。
レースでの活躍ぶりからその名は広まり、以降、彼らの衣鉢を継いだエンジニアとデザイナーが、英国のスポーツマンのように頑強でパワフルなスポーツカーを送り出してきた。
最近モデルが700馬力のスーパーGTを謳う「DBSスーパーレッジェーラ」である。2018年6月26日に英国で、そして時差の関係ですこし遅れて翌27日に実車がお披露目された。
スーパーレッジェーラとはご存知のかたも多いと思うが、イタリアのカロッツェリア・トゥーリングが開発した軽量技術。
鋼管スペースフレームにアルミニウム外皮をかぶせるというもので、アルファロメオやフェラーリをはじめ、戦前から戦後にかけて多くのスポーツカーメーカーが採用した。
かつてDB4(1960年)やDB5(63年)といった歴史に残るアストンマーティンの「名車」もスーパーレッジェーラのボディを持っていた。
新型DBSスーパーレッジェーラがこの名を使うのは、当時の技術でなく、アルミニウムを接着させて作る独自のシャシーと、カーボンファイバーによるボディという最新の軽量化技術の一種のアイコンとしてである。
最大トルク900Nmはフラッグシップの証!
いずれにしても、アストンマーティンを世界有数のスポーツカーに仕立てるのにひと役買っていたスーパーレッジェーラの文字が、最新のDBSのボンネットを飾っているのを見るのは、オーナーとして悪い気分ではないだろう。
フロントミドシップのエンジンは5.2リッターV型12気筒ツインターボ。アストンマーティン製のこのパワープラントは725馬力の最高出力と900Nmの最大トルクを発生。
8段オートマチック変速機はリアディファレンシャルと一体型のトランスアクスル方式が採用されている。ギアの選択はダッシュパネルのボタンと、ステアリングコラムのパドルで行う。アストンマーティンのファンにはおなじみの方式だ。
東京・青山の発表会ではアストンマーティンのアジア・パシフィックの地区担当マネージャーを務めるパトリック・ニュースン氏が登壇。「最大トルクはフェラーリ・812スーパーファストの25パーセント増しです」と誇らしげに語っていた。
ボディ各所の空力的付加物はGTEマシンで積んだ経験のたまものであり、スタイルのためでなく、きちんとした機能部品であることが、このクルマが本当のスポーツカーである証しといえる。
最高速は時速約340キロで、静止から時速100キロまでの加速に要する時間は3.4秒。限界を追求できるパフォーマンスを発揮するという。いっぽうで「リラックスしてドライブできるグランドツアラー」でもあるとアストンマーティンではする。
2プラス2(スペースが限られている後席は荷物置き場と考えたほうがいいけれど)の室内は、ぜいたくなしつらえだ。ドライビングポジションはスポーツカー的だが、エレガンスを感じさせるのはアストンマーティンの面目躍如たるところ。
360度ビューカメラやパーキングアシスト、さらにインフォテイメントシステムなど、快適に乗っていられるための装備も充実している。
DBSスーパーレッジェーラの日本での発売は2018年夏という。価格は未定だが3500万円を少し下回るぐらいになりそうだ。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト