勇敢なる男たちが打ち立てた偉業
ベントレーの魅力を語るうえで、草創期の華々しいレース活動を忘れるわけにはいかない。裕福な家庭に育ち、レーシングドライバーとしてもエンジニアとしても類まれな資質をもったW・O(ウォルター・オーウェン)・ベントレー(以下W・O)の夢は、1919年に自らの名を冠した会社をロンドンのクリックルウッドで立ち上げた時、すでに花開いていた。試行錯誤を経て誕生した初めての市販モデル「3ℓ」の第1号車は、新しいものに目がない紳士の手に渡り、評判を呼ぶ。そしてW・Oとその仲間たちは、自らが作り上げたクルマの品質と速さを実証すべく、サーキットへ乗り込む。果たして、「3ℓ」は1923年の第1回ル・マン24時間で4位入賞を果たし、翌1924年にはトップでゴールを駆け抜けた。24時間の平均時速は152km/hに達し、これは当時の世界記録だった。「3ℓ」は、より豪華で洗練された装備を望む顧客に対応すべく、重量増加を大排気量化で補いながら進化。ル・マンにおいては1927年から1930年に3連覇を成し遂げ、ベントレーの名声は揺るぎないものとなった。

より逞しく、美しく進化したモダン・ベントレー
ル・マンでの偉業を支えたドライバーたちは、W・O同様、みなお金持ちの子息だった。彼らは「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれ、そのひとりが経営するベントレーのディーラーで若き日の白洲次郎はベントレーを購入し、ヨーロッパ大陸を誇りとオイルにまみれながら駆け抜けた。勇敢な紳士によって磨き抜かれたベントレーのパフォーマンスと類まれな品格は、その後の経営不振や体制の変化といった時代の波に揉まれながら、より逞しく、美しく進化していった。それは現在のベントレーで中核を担う「コンチネンタルGT」シリーズに乗ればよくわかる。2004年から始まった現行のラインアップは4座のクーペあるいはオープンボディからなり、天然素材をふんだんにあしらったラグジュアリーなインテリアは、顧客のあらゆる要望を叶えるオーダーメイド仕様。2011年の大幅改良を経て、2016年モデルでも外観のデザインがわずかに変更されている。

地を駆ける最高のクルーザー

ラグジュアリーを突き詰めるならば、オープントップの「コンチネンタルGT スピード コンバーチブル」が最良だ。横から見てなだらかなラインを描くコンバーチブルならではのスタイリングは、全長4・8mの大柄なボディをひときわ優雅に印象付け、まるでクルーザーのキャビンにいるような居心地の良さ。そしてV型エンジンを横に並べたW型6リッターの12気筒ターボエンジンは、アクセルをじわりと踏み込むだけでみなぎるようなパワーを絞り出す。もちろん深く踏み込めば怒涛の加速をみせるが、そのフィーリングは俊敏さが命のピュアスポーツカーとは明らかに異なる。あくまでも「ずっしりと駆ける」のだ。エンジンから足回りに至るまで重量感に長けたセッティングのおかげで路面の凹凸をも悠々と吸収し、「地上のクルーザー」と呼ぶにふさわしい滑らかな走りが、実に気持ちいい。しかも、それはグランドツーリングからスポーツドライビングでも決して変わることはない。この懐の深さこそ、W・Oたちが目指した最高のクルマ作りが行き着く「紳士性」のひとつであると確信する。

〈ベントレー・コンチネンタルGT スピード コンバーチブル 〉
全長×全幅×全高:4820×1945×1390㎜
車両重量:2530kg
排気量:5998cc
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
最高出力:635PS/6000rpm
最大トルク:820Nm/2000rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:2920万円
(問)ベントレー・コール ☎0120-97-7797

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2017.9.8 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。