「手の届きやすいプレミアム」で成功したジャガー

イギリスにはロールス・ロイスやベントレー、アストンマーティンといったプレミアムカーを専門にてがけるブランドがあるが、ラグジュリーかつスポーティなクルマづくりを得意としながら、より手に入れやすい価格戦略で成功したのがジャガーだ。1950年代には美しいスタイリングのスモールサルーンの「マークⅡ」や高性能スポーツカーの「Eタイプ」を送り出し、1968年には「マークⅡ」の後継モデル「XJ」を発売。イギリスのみならずアメリカ市場でも大いに人気を博した。1989年からはフォードグループの一員としてモデルレンジの拡充を計り、フラッグシップモデルの「XJ」は伝統をふまえながらオールアルミ製ボディを採用するなど、技術革新にも力を入れた。だが、親会社のフォードが経営不振に陥ったことで、ジャガーは同じグループのランドローバーと共にインドのタタ・モータースの傘下となる。2008年のことだ。


新型ミドルサルーンのディーゼルエンジンは贅沢だ!

インド資本となったジャガーは心機一転、かつてないほどモダンなクルマづくりに取り組むようになる。そのひとつがフォードグループ時代に誕生したミドルサルーン「XF」で、2015年にモデルチェンジした2代目は初代のコンセプトを継承しつつ、ボディにアルミを多用することで大幅な軽量化を実現。エンジンも一新され、2リッター4気筒のディーゼルユニットが加わった。燃料に軽油を使うディーゼルエンジンは経済性もさることながら、低回転からトルクフル。「XF」の場合、わずか1750回転で最大トルクを発揮し、高速道路の100km/h巡航ではほとんどアクセルを深く踏み込む必要はない。エンジン回転を上げずに済むので、ディーゼルの欠点でもある騒音と振動を感じることは少なく、むしろトルクが豊かなぶん、贅沢なエンジンという印象を受ける。


スポーティな味付けはジャガーの伝統

高速道路ではフラットな乗り味をみせる「XF」は、タイトなカーブが続く山道では安定感に加え軽快な印象を強め、サルーンであることを忘れさせる。これは凝った設計のフロントサスペンションに加え、軽量・高剛性のアルミボディの効果だろう。サルーンとしての十分な居住性を確保しながら、モダンで軽快感あふれるファストバックのスタイリングは伊達ではないのだ。インテリも然り。大型の液晶モニターでメーターやナビゲーションを表示し、ATのセレクターも円柱型と新鮮味にあふれ、いかにも新しいクルマを運転しているという充実感がある。時代を彩った歴代の名車にも惹かれるが、生まれ変わったジャガーの魅力をしっかり味わって、最新モードから取り残されないようにしたい。

 
 

〈ジャガー・XF(プレステージ・ディーゼル車)〉
全長×全幅×全高:4965×1880×1455㎜
車両重量:1760kg
排気量:1999cc
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
最高出力:180PS/4000rpm
最大トルク:430Nm/1750~2500rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:8AT
価格:693万円(税込)
(問)ジャガー・コール ☎0120-050-689

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。