911だけがポルシェにあらず
ポルシェはエンジンレイアウトやシルエットを継承しながら、名車911を長きにわたって作り続けてきた、稀有なブランドだ。その間、より大きくラグジュアリーなGTの928や4気筒エンジンを積んだ924(のちに944→968へと発展)もリリースしているが、928のキャラクターは4ドアのパナメーラに、そして924系は2シーターのボクスター/ケイマンへと受け継がれている。そして2016年。ボクスターのエンジンは911譲りの水平対向6気筒から新たに4気筒ターボとなり、車名も「718ボクスター」と呼ばれるようになった(ケイマンも「718ケイマン」に変更)。

 
 

メカニズムも車名も刷新して日本デビュー
車名に付く「718」は、1950年代から60年代にかけてつくられたレーシングカーの550スパイダーシリーズに由来する。軽量なアルミボディをまとい、水平対向4気筒エンジンをコクピットの背後にレイアウトした550スパイダーは、改良を続けて718RSKスパイダー、718RS60スパイダー、718W-RSスパイダー、718GTRへと進化。セブリング12時間(アメリカ・フロリダ)やタルガ・フローリオ(イタリア・シチリア島)といった伝統あるレースで優勝を遂げるなど、素晴らしい活躍をみせた。その由緒正しき称号を得た718ボクスターは、ボディの骨格やスタイリングこそ2012年にモデルチェンジしたものを踏襲しているが、新開発のエンジンはもとより、足回りも全面的に熟成された"ほぼニューモデル"といっていいクルマだ。

 
 

環境に配慮しながらよりパワフルに
ポルシェは911でも排気量を落としてターボチャージャーを装着する改良を施したばかり。近年は世界の自動車ブランドが経済性向上を目的としたダウンサイジング戦略を取り入れているが、ポルシェは低燃費と同時に出力も向上させることを目的としていて、"ライトサイジング"と呼ばれている。実際、718ボクスターは標準グレードと高性能グレードの「S」があるが、どちらも出力は6気筒時代よりも35馬力アップしているのだ。日本では2016年初頭から受注を始め、デリバリーは夏以降となる。したがって、本稿執筆時点(2016年7月状上旬)ではまだ試乗できていないが、6月25、26日の2日間にわたって東京都内で行なわれたシークレットイベントにおいて、その雄姿を確かめることができた。これはウェブサイト等で募集した200組の参加者が、ツイッターで告知されたヒントを元に都内某所に配置された718ボクスターを見つけるというユニークな試み。隠れ家のガレージ風の会場には深みのあるオレンジカラーの718ボクスターに加え、550スパイダー時代からの伝統が映像やパネルで展示されていた(写真はすべてイベント時のもの)。ポルシェの"顔"は911であることに揺るぎはないが、より軽快でストイックな718ボクスターを愛する紳士は数多い。刺激を増したであろうそのドライビングフィールについては、いずれステアリングを握ったときに改めてご報告したい。

 
 

〈ポルシェ・718ボクスター〉
全長×全幅×全高:4379×1801×1281㎜
車両重量:1410~1440kg
排気量:1988cc
エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ
最高出力:300PS/6500rpm
最大トルク:380Nm/1950~4500rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6MT、7AT(PDK)
価格:658万円~(税込)
(問)ポルシェ・カスタマーケアセンター ☎0120-846-911

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。