10年先を行っていた名車「DS」
シトロエン・DSの名を知らなくても、宇宙船のような流線形のスタイリングに覚えがある人は多いことだろう。1919年の創業以来、前輪駆動やモノコックボディ、独立懸架式サスペンションなどの先進技術をいち早く取り入れてきたシトロエンの歴史のなかでも、1955年に発表したDSは、スタイリングからメカニズムに至るまで特に先鋭的な試みが満載されたクルマとして記憶されている。3mを超えるホイールベースの上に被せられたボディは全長4・8mに達し、しかもそれは頑丈なフロアパネルの上に上屋の骨組みが溶接され、ボディパネルはその表面に張り付けるという凝った構造だった。メカニズム面では、ひとつの油圧ポンプから送りだされるオイルの圧力でサスペンションやギアボックス、ステアリング、ブレーキを作動させる画期的な設計を取り入れた。サスペンションにはピストンをもつ中空の球「スフィア」を内蔵し、ガスとオイルの作用で車体の姿勢を一定に保つ。この「ハイドロニューマティック・サスペンション」はシトロエンの代名詞となり、DSはジャーナリストたちから「10年先を行くクルマ」と評された。

シトロエンの上級ブランドとしての"DS"

自動車史に残る名車、DSの誕生から60年近くたった2014年、シトロエンは歴史的な車名を用いた上級ブランドを立ち上げた。そのラインアップのうち、もっともコンパクトなモデルがDS3だ。登場したのは2010年だが、DSブランドの立ち上げにともない、グリルの周りにクロームをあしらった「DS WING」と呼ばれるフロントマスクをまとい、ロゴもシトロエンのもの(「ダブルシェブロン」と呼ばれる)からDSへと変更されている。加えて、LEDのフォグランプやシフトレバーのデザインなど、細部の質感も向上した。かつてのようなハイドロニューマティック・サスペンションは搭載せず、車格からして往年の「DS」とは異なるものの、今やプジョーと合併したシトロエングループのラインアップのなかで、このDS3は確かな輝きを放っている。

洒脱なキャンバストップ仕様も

 
 

DSの魅力を肌で感じ取るなら、オープンボディのDS3カブリオがいい。天井から後ろにかけて開閉し、たたんだキャンバストップがトランクに完全収納されずに外から見えるつくりは後方視界に若干難があるものの、エレガントかつクラシカルな雰囲気が漂う。キャンバストップのカラーはブラック、ブルー、エメラルド、ジャカード織のモノグラム柄(4枚目の写真)から選べ、ボディカラーもバリエーションに富む7種類。インテリアもなかなか個性的で、サポート性に優れたシート(DS3はラリーカーのベース車両でもあるのだ)、メーターバイザーの隙間から外光が射す凝ったデザインのコクピットは小型大衆車の枠を超えたラグジュアリーなもの。路面を問わず吸い付くようにしなやかに駆け抜ける軽快な走りをオープンエアで楽しめる。随所にフランスらしいセンスが発揮されたDS3カブリオは、車格や値段でクルマを評価しがちな我々に、本当のプレミアムとは何かを教えてくれる。

ちなみに秋にはジバンシイとコラボレーションした限定車「DS3ジバンシイ ル メイクアップ」なる限定車が発売予定。ホワイトパールのボディカラーをはじめ、センターコンソールにはメイクアップ用品が収納されるなど本格的なもの。もし傍らに「欲しいクルマがみつからない」という淑女がいたら、ノーマル仕様を含め、おすすめしてはいかがだろう。

 
 

〈DSオートモビルズ・DS3カブリオ〉
全長×全幅×全高:3965×1715×1460㎜
車両重量:1200kg
排気量:1199cc
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
最高出力:110PS/5500rpm
最大トルク:205Nm/1500rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT
価格:304万円(税込)
(問)シトロエン・コール ☎0120-55-4106

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。