スポーツカーであることを主張するスタイリング

 
 

ジャガーの創設者、ウィリアム・ライオンズは卓越したデザインセンスと、それに劣らぬ経営手腕をもって「マーク2」「Eタイプ」「XJ」などのプロダクトを成功させた。彼が世を去ってすでに30年が経ち、ブランドの経営母体もフォードを経てインドのタタへと移ったが、「美しいものは必ず売れる」というウィリアムの哲学は、いまなお健在である。先ごろデリバリーが始まったSUV、「Fペイス」のスタイリングもしかり。フロントノーズを強調したデザインは伝統的なファストバックスタイルのスポーツカーのそれであり、色気のあるリアフェンダー周りが、「路面を蹴っていく」猛獣のイメージを湧き上がらせる。そして、前後のライトの造形は、「Eタイプ」のモダナイズ版たる「Fタイプ」の系統にあることを如実に示す。

男を"その気にさせる"コクピット
 

 
 

「Fペイス」の全長は4740㎜、全幅は1935㎜と、インポート系のプレミアムSUVでは平均的なサイズ。にも関わらず、運転席に身を置いたときの感覚はタイトだ。もちろん、決して狭いわけではない。コクピット周りのデザインをスポーツカー的に仕立て、決して小さくないボディを"思い通りに操りたい"と思わせるための、効果的な戦略である。搭載されるエンジンはパワーの異なる2種類の3リッターV6ガソリンと2リッター直列4気筒ディーゼルがあり、どれを選ぶかは好みの問題だが、「Fペイス」らしさを重視するなら、ガソリンモデルの「Rスポーツ」(340馬力)か「S」(380馬力)がいい。

モダンな皮を被ったクラシック

 
 

ディーゼルモデルは必要十分なパワーを絞り出すが、それに比べてガソリンモデルの「Rスポーツ」は刺激的なほどパワフルで楽しい。しかも、「Fペイス」の駆動方式は状況に応じて前輪にトルクを伝える4WDとはいえ、基本はあくまでも後輪駆動。しなやかでフラット極まりない足回りも相まって、ワインディングロードを切れ味鋭く駆けあがっていく。カーブを曲がっていくときの荷重のかかり具合や鼻先の軽さは、「ちょっと背の高いスポーツカー」そのものだ。ジャガーは近年のトレンドに即してブランド初のSUVを作り上げた。その根底にあるのはイギリスが伝統的に得意としてきたスポーツカーであり、その意味で「Fペイス」は"モダンな皮を被ったクラシック"といえる。オールラウンダーとしての実用性と操る楽しさを1台で満喫したいなら、絶対おすすめだ。

〈ジャガー・Fペイス Rスポーツ〉
全長×全幅×全高:4740×1935×1665㎜
車両重量:1980kg
排気量:2994cc
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
最高出力:340PS/6500rpm
最大トルク:450Nm/3500rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:849万円(税込)
(問)ジャガーコール ☎0120-050-689

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。