スウェーデンで生まれた「特別な顧客」向けのブランド
スポーツカーは日常での使用に不便を感じることが少なくない。同乗者が楽しいと感じることはもちろんあるだろうが、実際にステアリングを握るドライバーに比べれば、得られる快楽はわずかなものだ。そして趣味性を追求すればするほど値段も高くなる。その究極にあるのがスーパー・スポーツカーであり、トゥールヴィヨンに代表される複雑な機構を用いた機械式腕時計ブランドが限定製作する逸品同様、限られた顧客向けにスペシャルモデルを作るプレミアム・カーブランドも存在する。現在、その極北にあるといえるのが(地理的な意味も含めて)、スウェーデンのケーニグセグだ。
過去には市販車最高速記録を樹立!
ケーニグセグがクルマのブランドだとわかる人は、かなりのマニアだ。創設されたのは1994年と新しく、オーナーのクリスチャン・フォン・ケーニグセグも現在44歳と若い(写真上から2番目の、向かって右側に立つ男性)。「エクストリーム・ハイパーカー」と呼ぶ、彼の理想のクルマは、極限にまで高められたスポーツ性能と、スタイリッシュなデザインを両立させたもの。もちろんそのパフォーマンスは折り紙付きで、初期の「CCシリーズ」のうち、2005年にリリースした「CCR」は、市販車のギネス最速記録(公称395km/ℓ)を樹立してクルマ好きの間で話題になった。
世界限定3台のスペシャルバージョンが登場
日本では2007年に販売を始めたものの、その後の世界的な金融危機で一時撤退。そして新たなパートナーを得て、2016年に再上陸を果たした。9月上旬に行なわれたイベントでは2011年から登場した「アゲーラ」シリーズのうち、25台つくられた「アゲーラRS」のスペシャルバージョン「RSR」を披露。最高出力1160馬力を絞り出す5リッターのV型8気筒エンジンを搭載し、カーボンファイバー製ボディをまとう「RSR」は、市販の乗用車とはかけ離れた美しい流線形スタイルが特徴。そのパフォーマンスを発揮できるのはサーキット以外ありえないが、日常での使いやすさにも配慮しているという。「RSR」は日本向けにわずか3台のみ作られ、そのうち2台はすでに受注済みで、価格は約2億6000万円。エンジンはもとより、タイヤとパワートレインの一部を除いて自社で開発・製造を行っていることを思えば、妥当な値付けといえる。今後はプラグインハイブリッドシステムを用いた新型車「レゲーラ」が控えており、日本でその姿をみかける機会も増えそうだ。
〈ケーニグセグ・アゲーラRSR〉
全長×全幅×全高:4293×2050×1120㎜
車両重量:1395kg
排気量:5リッター
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
最高出力:1160PS/7800rpm
最大トルク:1280Nm/4100rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:7DCT
価格:2億6000万円(税抜き)
(問)ケーニグセグ・ジャパン ☎03-5511-2777
- TEXT :
- 櫻井 香 記者