名車「A110」でラリーを席巻
欧州のスポーツカーブランドといえば、英国、ドイツ、イタリアがほとんど。だが、フランスにもアルピーヌという伝統あるブランドがあったことを忘れてはならない。1956年にルノー車のチューニングをてがけるジャン・レデレによって設立されたアルピーヌは、ルノー「4CV」をベースにFRP製の軽量小型ボディを載せたレーシングカーを開発する。このクルマはイタリアの名デザイナー、ジョヴァンニ・ミケロッティがボディをデザインした市販モデル、「A106ミッレ・ミリア」へと発展。エンジンを後方に配置することで、低く美しいフロントノーズを備えた「A106ミッレ・ミリア」は、その後「A108」を経て、名車「A100」(写真上)へと進化を遂げる。
ルノー傘下となり、市販車製造は休止へ
「A110」は後期型でも車重約850kg、排気量1600ccに過ぎず、「A106ミッレ・ミリア」以来の小型・軽量というコンセプトを継承。そしてRR(リアエンジン/リア駆動)ならではの絶大なトラクション性能をもって、1960年代半ばから70年代初頭のラリーシーンを席巻した。直線が少なく、険しい峠道が続くコースでは、何よりもコーナリング性能と、立ち上がりの加速が勝敗を分けるのだ。1973年、アルピーヌはルノーの傘下となり、その後も本拠地があるフランス北西部の港町、ディエップで市販車を製造していたが(同時にルノーのスポーツモデルやレーシングカーの生産も続けていた)、1995年、「A610」の生産終了をもって、市販車ブランドとしてのアルピーヌは途絶えてしまう。
2018年に新スポーツカーが日本上陸!
近年のアルピーヌは、ルノーのスポーツモデルブランド、「ルノースポール」の一部を製造するにとどまっていたが、その一方でブランドの復活は常々噂されていた。そして今年2月、ついに復活プロジェクトが発表され、コンセプトカー、「アルピーヌ・ヴィジョン」が発表された。日本でも10月にメディア向けに披露されたこのコンセプトカーは、一瞥して「A110」をほうふつとさせるスタイリングが特徴である。スペックは未確定ながら、2座シートの後方に4気筒ターボエンジンを配置するミッドシップであり、エレガントなデザインとは裏腹に、かなり硬派な作りであることは間違いない。しかも生産は、アルピーヌが創業以来拠点としていたディエップとくれば、期待は膨らむばかりだ。まずは2017年に欧州で発売され、順調にいけば2018年上期に日本上陸を果たすという新アルピーヌ。フランス流のモダン・スポーツカーがどんなパフォーマンスを発揮するのか、今後に注目だ。
- TEXT :
- 櫻井 香 記者