名車の伝統が息づく新世代NSX

 
 
 
 

1990年に登場した初代NSXは、今でも中古市場で高い人気を誇る。未曾有の好景気を受けてコストと時間をたっぷりとかけて開発されただけあって、その出来栄えは素晴らしかった。オールアルミの高剛性ボディ、高回転で抜群のフィーリングとパワーを誇るV6・3リッターVTECエンジン、そして戦闘機のキャノピーのような優れた視界をもちながら、低く戦闘的なスタイリング...。そのどれもが新しく、刺激的だった。プロの評価においては「高性能タイヤに頼りすぎ」「デザインとエンジンのフィーリングはイタリア車に叶わない」といったコメントも多く、確かにそれは事実だったかもしれないが、70年代のオイルショックを乗り越え、技術競争で右肩上がりのパフォーマンスをみせてきた日本の自動車メーカーによるひとつの到達点として、このクルマはまぎれもなく世界に誇る名車だった。そして昨年。数年来のコンセプトモデルやプロトタイプの公開を経て、ついに新世代NSXが登場した。今回も、やはり刺激的だ。

レーシングカーの技術をふんだんに投入
 

 
 
 
 

まずスタイリング。北米市場を重視し、生産もかの地で行なわれるだけあって、モダンかつダイナミックな面構成をみせる(エンジニアに尋ねたところ、デザインは日本で行なわれたとか)。光の加減でさまざまな表情をみせるデザインなので、ぜひ実車を確認することをおすすめする。写真よりも躍動感にあふれ、素直にかっこいいと思えるはずだ。個人的にはグリル回りとトーンが合うブラックのボディカラーが気に入った。エンジンは先代同様V6ながら、レーシングカーでの実績があるコスワースがてがけた新開発ユニットで、スーパースポーツカーの名に恥じぬ高精度なもの。オイルの潤滑システムや強力な冷却システムなど、レースシーンで真価を発揮するクオリティである。そしてパワーユニットに追加されているのが3つのモーター。ひとつはエンジンと合せた後輪駆動用、あとのふたつはそれぞれ前輪を駆動させ、さらに左右のトルクを変化させて吸い付くようなコーナリング性能を発揮する。

スポーツカーは「育てていく」ものだ
 

 
 
 
 

その走りは鋭く、高速でコーナーに突入したときの安心感はすこぶる高い。しかも、走行モードを「クワイエット」に設定すれば、発進時はモーター駆動のみとなり、街中をリラックスして走れてしまうのだ。あらゆる速度域において洗練された高次元な走りに、猛々しいスーパースポーツカーのキャラクターを求める人は拍子抜けするかもしれない。だが、この「洗練」こそがホンダの狙いであり、5年、10年先を見据えたスポーツカーの有り方を突き詰めていった結果なのである。ちなみに、現時点ではあくまでも未定だが、先代が長きに生産された中で大きく進化し、「タイプR」などの硬派なグレードが追加されていったように、今回も同じような展開が期待される。新たなNSXの未来、スポーツカーの未来をオーナーやその予備軍たちが「育てていく」ことができれば、日本の自動車文化に一石を投じることができるだろう。

〈ホンダ・NSX〉
全長×全幅×全高:4490×1940×1215㎜
車両重量:1780kg
排気量:3492cc
エンジン:V型6気筒DOHC
最高出力:507PS/6500~7500rpm
最大トルク:550Nm/2000~6000rpm
モーター出力:前37PS(一基あたり)、後48PS
駆動方式:4WD
トランスミッション:9DCT

(問)ホンダお客様相談センター ☎0120-112010

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。