クラシックカーを愛でる文化は、日本にもある。ただ、どちらかというと同好の士が集まって語り合い、走るオフ会的な意味合いが強い。それは決して悪いことではないけれど、欧米ではもう少しエンターテインメント要素が強い。優雅な会場に貴重なクラシックカーを集めて、紳士淑女がその美しさを堪能しながら、美味しい料理をいただくような…。いってみれば、カーマニアとエンスージアストの違いだろうか。アメリカの西海岸では、そんな楽しいイベントが毎年夏に行われている。ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が、その模様をリポートする。

往年の名車250台がアメリカ西海岸に集結!

「ザ・グレート・ランチア」という2018年のカテゴリーで手前がベストオブショーのアウレリアPF200C。
「アイコニックなポルシェ356を称えて」というカテゴリーはポルシェ70周年にちなんだもの。
最初の量産型ポルシェである356の1951年型。

 サマー・オブ・ライフと、英語を喋るひとは人生で盛りの時期を表現したりする。クルマも少し似ていて、1年でベストシーズンは夏と欧米では決まっている。

 米国で最高のクラシックカーイベントに数えられる「ザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリング」はその一つだ。毎夏恒例行事。2018年は8月24日に開催された。

 このイベントは世界中のクラシックスポーツカー好きに大人気だ。毎回、世界中から魅力的なスポーツカーの数かずが集まり、美しく手入れされた芝生の上に並べられるからだ。

 なかには、伝説の、と形容詞をつけたくなるぐらい希有なモデルもある。大衆的なモデルも含まれていて(希有な大衆的スポーツカーもある)、クルマを愛するエンスージアズムが根底にあるのがすばらしいところだ。

「ザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリング」はサンフランシスコとロサンジェルスの間、モンタレーはカーメルの「ザ・クエールロッジ・アンド・ゴルフクラブ」を使って行われる。

 モンタレー湾はらっことジャイアントケルプという巨大な海草で知られるが、このときの主役はクルマ。2018年も往年のスポーツカーとレーシングカーを中心に250台を超える車両が集まった。

 12のカテゴリーに分けて賞が与えられるので、それを見るのも来場者にとっての楽しみだ。

エクスクルーシブな雰囲気は格別!

生誕50周年を迎えたランボルギーニ・イスレロはのちにミウラに搭載する4リッターエンジンを持つ2プラス2で2年間しか生産されなかった。
911をベースに独自のスーパーポルシェを作りあげる独ルーフのCTR イエローバードの第1号車。
会場には1日だけのイベントのために250台を超える稀少なスポーツカーが集まった。

 2018年は、50周年を迎えたランボルギーニ・エスパーダとイスレロ、ランチアの名車、70周年のポルシェの「アイコニック」な356、それに(ポルシェのチューナーであるドイツの)アロイス・ルーフ・リユニオンなどのカテゴリーが設けられた。

「ベストオブショー」を獲得したのは1953年に作られたランチア・アウレリアPF200Cである。ジェット機のタービンを思わせる米国的なデザインが特徴だ。手がけたピニンファリーナは受賞に際して「時間を超えた美」とツイッターで作り手の誇りを表現していた。

 主催は日本なら日比谷にあるザ・ペニンシュラホテルズを運営する香港上海ホテルズだ。質の高さで知られる同ホテルは、ロンドンのグロブナ−プレイスにもホテル建設を計画するなど、注目を集めている。いっぽうクルマのイベントにも熱心なのだ。

 チケットを購入したゲストだけが入場できるので、いい意味でエクスクルーシブな雰囲気がある。クラシックスポーツカーとともにゲストの楽しみは食だ。

 世界各地のザ・ペニンシュラホテルがホスピタリティブースを設け、地元の料理を提供してくれるのである。それもこのイベントの魅力となっている。

 古いクルマの世界をさまざまなかたちで楽しませてくれる点では、英国のグッドウッド・リバイバルやフェスティバル・オブ・スピード、またイタリアのビラデステ・コンコルソ・デレガンツァとも共通するものがある。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
写真提供 :
The Peninsula Hotels