クラシックカーを愛でる文化は、日本にもある。ただ、どちらかというと同好の士が集まって語り合い、走るオフ会的な意味合いが強い。それは決して悪いことではないけれど、欧米ではもう少しエンターテインメント要素が強い。優雅な会場に貴重なクラシックカーを集めて、紳士淑女がその美しさを堪能しながら、美味しい料理をいただくような…。いってみれば、カーマニアとエンスージアストの違いだろうか。アメリカの西海岸では、そんな楽しいイベントが毎年夏に行われている。ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が、その模様をリポートする。
往年の名車250台がアメリカ西海岸に集結!
サマー・オブ・ライフと、英語を喋るひとは人生で盛りの時期を表現したりする。クルマも少し似ていて、1年でベストシーズンは夏と欧米では決まっている。
米国で最高のクラシックカーイベントに数えられる「ザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリング」はその一つだ。毎夏恒例行事。2018年は8月24日に開催された。
このイベントは世界中のクラシックスポーツカー好きに大人気だ。毎回、世界中から魅力的なスポーツカーの数かずが集まり、美しく手入れされた芝生の上に並べられるからだ。
なかには、伝説の、と形容詞をつけたくなるぐらい希有なモデルもある。大衆的なモデルも含まれていて(希有な大衆的スポーツカーもある)、クルマを愛するエンスージアズムが根底にあるのがすばらしいところだ。
「ザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリング」はサンフランシスコとロサンジェルスの間、モンタレーはカーメルの「ザ・クエールロッジ・アンド・ゴルフクラブ」を使って行われる。
モンタレー湾はらっことジャイアントケルプという巨大な海草で知られるが、このときの主役はクルマ。2018年も往年のスポーツカーとレーシングカーを中心に250台を超える車両が集まった。
12のカテゴリーに分けて賞が与えられるので、それを見るのも来場者にとっての楽しみだ。
エクスクルーシブな雰囲気は格別!
2018年は、50周年を迎えたランボルギーニ・エスパーダとイスレロ、ランチアの名車、70周年のポルシェの「アイコニック」な356、それに(ポルシェのチューナーであるドイツの)アロイス・ルーフ・リユニオンなどのカテゴリーが設けられた。
「ベストオブショー」を獲得したのは1953年に作られたランチア・アウレリアPF200Cである。ジェット機のタービンを思わせる米国的なデザインが特徴だ。手がけたピニンファリーナは受賞に際して「時間を超えた美」とツイッターで作り手の誇りを表現していた。
主催は日本なら日比谷にあるザ・ペニンシュラホテルズを運営する香港上海ホテルズだ。質の高さで知られる同ホテルは、ロンドンのグロブナ−プレイスにもホテル建設を計画するなど、注目を集めている。いっぽうクルマのイベントにも熱心なのだ。
チケットを購入したゲストだけが入場できるので、いい意味でエクスクルーシブな雰囲気がある。クラシックスポーツカーとともにゲストの楽しみは食だ。
世界各地のザ・ペニンシュラホテルがホスピタリティブースを設け、地元の料理を提供してくれるのである。それもこのイベントの魅力となっている。
古いクルマの世界をさまざまなかたちで楽しませてくれる点では、英国のグッドウッド・リバイバルやフェスティバル・オブ・スピード、またイタリアのビラデステ・コンコルソ・デレガンツァとも共通するものがある。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト
- 写真提供 :
- The Peninsula Hotels