トレンチコートの着こなしは映画から学べ!

映画『過去を逃れて』のワンシーンから切り取る伊達男

世界一トレンチコートが似合うロバート・ミッチャム
世界一トレンチコートが似合うロバート・ミッチャム

フィルム・ノワールという映画の分野をご存知だろうか? フィルムは映画、ノワールは黒。40年代、50年代
にハリウッドで製作された、独特の影があるアンチヒーロー映画のことだ。このフィルム・ノワールで頭角を現わしたのがミッチャムだ。

1947年の『過去を逃れて』では脛に傷持つ元探偵役。ヤクザのボスに頼まれ、失踪したボスの情婦を探し出したまではいいが、自分がその女とデキてしまうという怪しい雲行き。出演当時ミッチャムは29歳。子供のころからの肉体労働とボクシングでしまりにしまったV字型の体軀にフルサイズのトレンチコートが似合うこと。綿のギャバジンは肉厚でしっかりした素材だが、格闘シーンでは、ひらひらとまとわりつく薄紙のように見える。

あとは顔。ミッチャムの顔はいまの男たちとは造作も表情もまるで違うのだ。ハンフリー・ボガートやフランスのジャン・ギャバンなんかもそうだけど、40年代前後の時代を生きた男たちが実生活で体験した生の過酷さ、それが皺や表情のない目つきとなってでているのである。 

トレンチコート、フェドーラ、シガレット、夜の大都会、そしてファムファタール。ワンパターンの極みでもあるミッチャムのフィルム・ノワールの世界を男のためのハーレクインロマンスと茶化す作家もいた。それでも、破壊され、病んだ街に竦みながらも、襟を立て、今日一日のために憮然と歩みをすすめるミッチャムのトレンチコート姿に、自分を重ね合わせた男は当時多かったはずだ。

運命に抗う反骨の表徴。ミッチャムによって決定づけられたトレンチコートの視覚的定義は、その後も長く映画・舞台・テレビの男性描写に影響を与えることになる。

※2011年冬号取材時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2011年冬号より
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