ディオールとロジェ・ヴィヴィエがコラボした靴をまとめた本が発刊!
たった10年間だけの貴重なコラボレーション
ともに20世紀を代表するエレガント・スタイルの高級メゾン、ロジェ・ヴィヴィエとディオールがコラボしたとしたらどうなるのか…。夢のような話ですが、実は、1953年から63年までの10年間だけ、ロジェ・ヴィヴィエその人がまさにディオールのオートクチュールの靴をデザインしていた時期があるのです。
この10年間は、クリスチャン・ディオール本人が「クーポールライン」「チューリップライン」など新しいシルエットを次々発表した時期です。ロジェ・ヴィヴィエとクリスチャン・ディオールは友人関係だったそうです。
1957年、ディオールが心筋梗塞で急逝し、その跡を継いだのがイヴ・サンローランでした。つまり、ロジェ・ヴィヴィエはイヴ・サンローランともコラボしていることになるわけですね。
彫刻を学んだロジェ・ヴィヴィエが生み出した完璧な曲線
このほど、リッツォーリ社からその当時のコラボ靴の写真を納めた写真集「Dior by Roger Vivier」が発行されました。パリの名門芸術学校ボザールで彫刻を学んだヴィヴィエだけに、とにかくフォルムが今見ても斬新かつ美しい。また、本物のジュエリーを使って製造したその装飾の見事なこと!
ディオールは新しいシルエットの服を生み出しましたが、ロジェ・ヴィヴィエもまた、「プラットフォーム・シューズ」「スティレット・ヒール」という新スタイルをクリエートしました。
このディオールとのコラボシューズは、マレーネ・デートリッヒ、グレース・ケリー、エリザベス・テーラら、名だたる女優たちが夢中になったそうです。靴とはいえ、芸術作品の域に入っていますものね。
やはり、往年の女優たちの御御足(おみあし)にこそふさわしい名品です。
天才たちがつくり上げた究極のエレガンス。いつの時代でも女性の永遠の憧れです。いまでは実現不可能な、稀代の感性が作り出した奇跡の美の世界には、時間を忘れて見入ってしまいます。
- TEXT :
- 安田薫子さん ライター&エディター