スイス・シュヴィーツ州イーバッハでナイフ工房として1984年に創業された「ビクトリノックス」は、スイス陸軍の制式装備品に採用された「ソルジャーナイフ」や、マルチツールの原型となる「オフィサーナイフ」などによって世界的な名声を獲得。その質実剛健で高みを目指すもの作りを受け継ぎ1992年にはアメリカで腕時計の販売をスタートした。ミリタリースタイルのパイロットウォッチや本格ダイバーズウォッチといったコレクションで実績を重ね、創業130周年を迎えた2014年には、耐久性を支える技術的な要素をもとに作成した、落下、耐圧、耐低温性といった130もの過酷なテストをクリアした品質と耐久を誇る「I.N.O.X」が誕生。このヘヴィデューティな仕様は称賛を集め、瞬く間にビクトリノックスのフラッグシップとなった。
デビュー以来、「I.N.O.X.」シリーズは着実にラインナップを増やし、ウォッチケースにチタンやカーボンを使った革新的なモデルを輩出。2018年には、「I.N.O.X.」初の機械式ムーブメントを搭載した「I.N.O.X. Mechanical」をリリースした。「I.N.O.X. Mechanical」と並び、ビクトリノックスのパイオニア精神と革新への追求を実感できるのが、ISO 6425(国際標準化機構)に準拠した「I.N.O.X. プロフェッショナルダイバー タイタニウム」だ。
どんな条件下でも耐え抜くビクトリノックスの時計
ブルーカモフラージュパラコード
ブラックパラコード
ISO 6425規格は、潜水中に起こる激しい温度変化や最低でも水深100m下の高い水圧に耐え、ガラス面に曇りが発生しないことを規定したものだが、本機は規定の倍となる200m防水を実現。さらに4800A/mの直流磁界中においても作動可能な耐磁性、海水(3%程度の塩水)中に24時間放置しても、ムーブメントや回転ベゼルの動作と機能が保持できる耐塩水性にも優れている。また、スーパールミノバ蓄光針の採用によって、暗闇でも25cmの距離から表示を読み取ることができる最大限の視認性が確保。軽量なチタン素材でありながら、水中から、成層圏の上層や炎の中まで、あらゆる過酷な条件下で耐え抜く強靭さと高い実用性を持ち合わせている。
さらに時計シーンに衝撃を与えたのが、強度と耐久性を誇るパラシュート用ロープにも用いるパラコード製ストラップの採用だ。ストラップの織りを解くと1本の強靭なマルチストランド・ナイロンコードとなり、緊急時にはロープとして使用することができる。現在までさまざまな角度からアウトドアで起こる不測の事態に備える機能は開発されてきたが、ストラップをサバイバルツールに活用するアイデアはなかった。また、ルーペとしても使える取り外し可能なレンズ付きバンパーの着想もユニーク。往年のダイバーズウォッチからインスパイアされたドーム型クリスタルガラスを備えたデザインもまた、時計好きの心をくすぐる。ダイビング以外のシーンでもマルチに使えるスタイルは、今年の顔にふさわしい。
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- TEXT :
- 安藤政弘 ライター
- WRITING :
- 安藤政弘