ダイレクトに風を感じて、クルマとは比較にならない人馬一体感を誇る二輪。ただ、若い頃の気分で乗っていると、体がついていけないことも。自信を失いつつある貴方にはトライクをおすすめしたい。乗り物の楽しさを追求してきたBRPのカンナム・ライカーは、乗りやすく、デザインも先鋭的な、まさに大人の遊び道具だ。日本での販売を前にL.Aで試乗した、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏のリポートをお届けしよう。

誰でもすぐ慣れて楽しめる!

前から見たスタイル。「強い印象を残すフロントマスクを作った」とデザイナーは語る。
前から見たスタイル。「強い印象を残すフロントマスクを作った」とデザイナーは語る。
今度は後ろから。ハンドルは広めで膝でタンクをはさむようにして乗るポジションは二輪車的。
今度は後ろから。ハンドルは広めで膝でタンクをはさむようにして乗るポジションは二輪車的。
これは1人乗り仕様だがオプションでタンデム用のシートを装着することもできる。
これは1人乗り仕様だがオプションでタンデム用のシートを装着することもできる。

 英国をはじめ、欧米人は『乗りもの』に熱心だった。利便性のため、あるいは娯楽のため、さまざまなタイプの乗りものを開発してきた。厳密には欧米に入れていいか微妙だけれど、カナダはモントリオールに本拠地を置くボンバルティア社もそのひとつだ。

 1930年代に早くもスノーモビルを開発したボンバルディアは、ほかにも水上スキーやATV(オールテレインビークル)など、乗りものの楽しさを追求してきたことで知られている。

 ボンバルティアは企業コングロマリットで、航空機の分野でも活躍している。そこからリクリエーショナル部門だけが独立したのがBRP(ボンバルディア・リクリエーショナル・プロダクツ)だ。

 二輪好きには同社の「カンナムCan-Am」なるトライク(三輪車)のブランドが知られている。Canは設計開発を行う本社があるカナダ、Amは部品を調達したり組み立てたりするアメリカを意味している。最新モデルは「ライカーRyker」という。

 このライカーの試乗会がさきごろ米ロサンジェルスで開催された。「二輪というカテゴリーにくくらないでほしい」と同社の開発担当者が語るモデルで、他のカンナムのシリーズと同様、フロント二輪、リア一輪だが、価格を従来モデルの半分に下げることで、新しい市場を開発することを目指しているそうだ。

 私が乗ったのはロータックス製の900ccの3気筒エンジン搭載モデルだ。一般公道用と、ラリーエディションという2モデルを連続して試すことができた。

 ハンドルバーとハンドスロットル、それに燃料タンクをひざではさんで走るところは二輪と近い。ただしコーナリングはリーンといって、からだを傾けて曲がるのではく、あくまでハンドルバーの操作で行う。

 ブレーキペダルも右足のみだし、リバースギアに入れるときは左足のつま先を使う。走り出したら足を地面につけることはない。この点をもってして、ケベックからロサンジェルスにやってきたライカーのデザイナーは「新しい乗りもののカテゴリーを開拓する可能性があります」と説明してくれたのだった。

 日本では普通運転免許、つまり自動車の運転免許証を所持していれば操縦できる。試乗会に来ていたのは私のほかは、世界中に二輪系のジャーナリストだったもようだが、感覚的にはまさに二輪と四輪の中間だ。誰でもすぐ慣れる。そして楽しめる、と思う。

エンジン回転を上げても快適に乗れる!

ロサンジェルスの山岳路を楽しんだ。
ロサンジェルスの山岳路を楽しんだ。
リーンでなくハンドル操作でカーブを曲がっていく。
リーンでなくハンドル操作でカーブを曲がっていく。
ボディパネルなどオプションで7万5000を超えるカスタム化が可能という。
ボディパネルなどオプションで7万5000を超えるカスタム化が可能という。

 フリーウェイで時速60マイル巡航はお手のものである。トルクもたっぷりあるし(クルマだって昨今は1リッター未満エンジンがあるぐらいだ)、中間加速にもすぐれているので周囲の流れにしっかりついていけるので不安はない。

 足まわりはストリート仕様ではややリアが固いので、道路の穴ぼこをこえるときは前輪のほうを使うとよい。後輪を落とすとかなりショックがくる。この点、ラリーエディションのほうがソフトだった。

 ワインディングロードもたっぷり走った。ご存じのひとはご存じだと思うが、ロサンジェルスは背後が山なので、中低速コーナーが連続する山岳路が縦横に走っている。ライカーは上りで痛痒を感じさせることはなく、下りも不安はない。

 タイトコーナーではしっかりハンドルバーを抑え、シートに腰をおろしている着座位置をすこし変えるだけで、ほとんどニュートラルステアを維持して曲がっていける。

 エンジンの回転が上がっていっても、強いバイブレーションが乗っている私のからだに伝わってくることはない。予想以上に快適な乗りものなのだ。ホイールベースが1709ミリ、前輪の外側から外側までも1509ミリが確保されているせいだろう。安定している。

「我われの調査によれば、世界中で多くのひとが、手ごろな価格であればトライク(三輪車)に乗りたいと考えています」。BRPで「カンナム・オン・ザ・ロード」担当シニアバイスプレジデントを務めるジョゼ・ペルー氏はそう語っている。

 日本では600cc2気筒モデル、今回の900cc3気筒モデル、それに900ccのラリーエディションが導入されるという。発表は2018年10月だったが発売は2019年3月。価格は追って発表するが、100万円台を予定と、輸入代理店のBRPジャパンではしている。

 人生の楽しみをいろいろ知っていることもまた、紳士に必要な素質だとすれば、カンナム・ライカーを試してみる価値はあるといえる。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。