キャデラックの人気が高まっている。2018年における世界での合計販売台数は、過去最高だった1978年の36万台を超えそうな勢いだという。躍進の鍵となっているのが、SUVの「XT5クロスオーバー」だ。日本ではあまり馴染みがないものの、中国では大人気。その魅力を自動車ライターの佐藤篤司氏がリポートする。

インテリジェントなパワートレーンでストレスは皆無!

かつてのアメリカ製SUVはいずれもアウトドア感が強かったが、「XT5」はとてもモダンで個性的。
かつてのアメリカ製SUVはいずれもアウトドア感が強かったが、「XT5」はとてもモダンで個性的。
後ろ姿も凛々しい。スポーティなイメージを追求しつつ、実用的な高さはしっかりと確保している。
後ろ姿も凛々しい。スポーティなイメージを追求しつつ、実用的な高さはしっかりと確保している。
比較的に高回転型のエンジンをうまく制御しつつ、重量級の車体を上品に、軽々と加速させるキモとなっているのが、この8AT。ドライバーを極上のクルージングへと誘う。
比較的に高回転型のエンジンをうまく制御しつつ、重量級の車体を上品に、軽々と加速させるキモとなっているのが、この8AT。ドライバーを極上のクルージングへと誘う。

 2017年秋に日本上陸を果たしたキャデラック「XT5クロスオーバー」(以下、「XT5」)。車体のサイズはBMW「X5」やメルセデス・ベンツ「GLE」などと近いが、モダンで押し出しの強いスタイリングは、日本車や欧州車とは異なる、独特の存在感だ。

 ドライバーズシートに収まり、3.6リッターV6の自然吸気エンジンをスタートさせると、意外なほど迫力のある排気音だ。思わず、かつての「燃費が悪いアメ車」を思い出した。だがこのエンジン、クルージング時など負担の少ない状況では6気筒から4気筒に自動に切り替えるアクティブフューエルマネジメント、つまり気筒休止システムやアイドリングストップ機構などを搭載。エミッションについても必要な最先端テクノロジーを備え、現代人の感覚にしっかりと寄り添っている。

 8速ATは適切なギアを瞬時に選択し、エンジン回転を適正に保ちながら、スポーティな走りから静々とした走りまで対応し、フィーリングもいい。さらに、センターコンソールに付く、走行モードをセレクトできるスイッチを「ツーリング・モード」にすると、サスペンションのストロークがたっぷりとして、快適な乗り味が楽しめた。ちなみに「スポーツ・モード」も試してみたが、一気に足が硬くなり、路面からのインフォメーションも増え、しとやかさが少し影を潜めたので、すぐにツーリング・モードに戻した。このクルマはノーマルのセッティングで悠々と走るのが合うと思う。

インテリアのつくりは格段に向上!

機能的になりすぎず、開放感を重視したインテリアがこのクルマの魅力。逆相位の音で不快な音を打ち消すボーズのアクティブノイズキャンセレーションをはじめとする、様々な防音対策の効果も絶大だ。
機能的になりすぎず、開放感を重視したインテリアがこのクルマの魅力。逆相位の音で不快な音を打ち消すボーズのアクティブノイズキャンセレーションをはじめとする、様々な防音対策の効果も絶大だ。
タイヤの張り出しを抑えたラゲッジは、とても荷物が積みやすい。
タイヤの張り出しを抑えたラゲッジは、とても荷物が積みやすい。

 インテリアもいい。ひと昔前のアメリカ車、特にSUVは樹脂パネルの質感に欠け、お世辞にもラグジュアリーとは言い難かった。だが、「XT5」の仕立ては丹念で、質感も高い。柔らかなレザーシートに包まれていると、独特のゆったりとした空気感が心地いい。広大な国土で磨かれたくつろぎの美学はこのクルマの大きな魅力だし、実用性に富むラゲッジも、アウトドア先進国のSUVならでは。

 自動ブレーキやレーンキープアシスト、前走車追従機能付きクルーズコントローなど、先進の運転支援システムも万全。他人とは違うスタイルと、ハンドルを握っている限り、いつもゆったりした気分でいたいのなら、「XT5」はきっと貴方の気持ちに答えてくれるだろう。

キャデラック「XT5クロスオーバー」
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,825×1,915×1,700mm
車重:1,990kg
駆動方式:4WD
エンジン:3,649cc V型6気筒 DOHC
トランスミッション:8AT
最高出力:314PS/6,700rpm
最大トルク:368N・m/5,000rpm
価格:¥6,190,000〜(税別)

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この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。