メンズプレシャス秋号の進行がようやくひと段落して、

シルバーウィークはまるまるオフにできました。

もしかして人様と同じタイミングで連休が取れるなんて、

10年ぶりくらいじゃないかな!?

ということで、久しぶりにPCを持たずに国内旅行。

福岡と熊本に行ってきましたよ。

表参道の大坊珈琲店と並び称される、

福岡を代表するコーヒーの名店、

「珈琲美美(びみ)

明治7年に熊本市で創業した本屋さんで、

2階の喫茶店ではこんな絶好のロケーションが味わえる

「長崎次郎書店」

など、など、、、

とても素敵な旅を満喫できたのですが、

かでも私の心に深く刻まれたのがこの2店。

まずは、九州のファッション業界人なら誰もが尊敬する、

有田正博さんが経営する熊本のセレクトショップ

「パーマネントモダン」

ファッション業界人の間で、

熊本は「東京よりも早い」と言われるほどに特別な場所。

実は1970年代から孤軍奮闘して、

そんな土壌を築き上げてきたのが有田さんなのです。

その詳細は現在発売中の「ブルータス」にも記されていますが、

単なる伝説では終わらない、

尖ったラインナップがたまりません。

他のショップとは絶対に違うものを売ろう、

という確固たる気概が感じられますね!

山下はこちらで、

SAWA VAUGHTERSのハットと、

デリカテッセンのパンツを購入。

どちらも未知なるブランドでした。

ファッションってまだまだ奥が深いなあ。

そしてもう1店は熊本市の繁華街にある小さな老舗喫茶店

「珈琲アロー」

福岡で購入した小坂章子さんの本

「九州喫茶散歩」

に載っていたお店なのですが、

こちらのコーヒーはとんでもないです・・・。

超浅煎りなのだけれど、苦みはもちろん、

嫌な酸味も皆無。

強いて言えば焙じ茶を彷彿させる色と味・・・

そういえばもともとコーヒーって、

「西洋茶」って呼ばれていたんですよね?

なんて言っても、きっと行ってみないと分からないでしょう。

正直言ってあまり教えたくないお店ですが、

ぜひ行ってみてください!

コーヒーの味も革新的なのですが、

それと同じくらいに素晴らしいのがマスターの人柄。

このお店、なんと年中無休で

11時〜23時という営業時間なのですが、

10数年前までは8時〜3時という営業時間を

35年間頑なに守り通していたそうです。

しかもその間、20日くらいしか休んだことがないと・・・!

「サービス業は休んだらダメたい」と、

とにかく自分に厳しいマスターですが、

決して私たちにストイックな態度を強いるでもなく、

店内にはとても穏やかなムードが流れています。

そんなマスターの魅力に惹かれて

やってくるお客さんも、素敵な人ばかり。

もしこのお店に訪れたなら、

ぜひカウンターの隅っこに飾ってある、

中学1年生の男の子が書いた作文を読んでみてください。

素晴らしい名文ですから。

周囲になじめない彼にとって、

アローとは「魂の故郷」なのだそうです。

中1男子にそこまで言わしめる大人の男。

これこそが本当のダンディですよね?

格好つけたり、自己プロデュースに長けた

「名店」風のお店は数多あれど、

ここまでストイックにひとつの道を追求している店、

そして暖かな心の交流ができるお店、東京にあるかなあ?

そして、僕は雑誌を通じて、読者の皆さんと

いくばくかの交流ができているかなあ?

職種は全く違えど、

ひとりのプロフェッショナルとしての生き方に、

大いに心打たれた九州旅行なのでした。

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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