キリスト教のイベントといえば、日本ではクリスマスを思い浮かべる人が多いですね。でもキリスト教圏では、クリスマスよりも重要とされる祝祭があるのをご存じですか? 「イースター」です。ここ数年、日本でもイベントが開催されるようになって認知度が上がりつつありますが、なじみのない方にとっては何をするイベントなのか、よくわからないですよね…? 今回は、イースターの意味や由来、「楽しみ方」やシンボルである「たまご」と「うさぎ」について解説します。

【目次】

イースターとは?「復活祭」と呼ばれていますよ。
イースターは日本語で「復活祭」と呼ばれていますよ。

【「イースター」の意味など「基礎知識」】

■「イースター」とは?本来の「意味」と「起源」

「イースター」とは、イエス・キリストの復活を記念し祝う日で、教会暦のなかで最も古い祝日です。弟子であるユダに裏切られ、十字架にかけられ亡くなったキリストが、その3日後に復活した奇跡を祝うのです。ちなみに、クリスマスはキリストの誕生を祝う日。キリスト教圏の人たちは、キリストの誕生以上に復活をお祝いするのですね。

■2024年の「イースター」はいつ?

同じキリスト教の行事であるクリスマスなどとは異なり、実はイースターは日にちが決まっていません。イースターは「春分の日のあとの、最初の満月の次の日曜日」に行われるのです。そのため、「イースターサンデー」とも呼ばれていますよ。2024年のイースターは3月31日(日)です。

■イースターの日はふたつあります!

同じキリスト教でも、西方教会(カトリックやプロテスタントなど)と東方教会(正教会など)では、「イースター」の日にちが異なります。どちらも「春分の日のあとの、最初の満月の次の日曜日」なのは同じなのですが、西方教会ではグレゴリオ暦、東方教会はユリウス暦を用いて日にちを決めているのです。グレゴリオ暦とは、1582年にローマ教皇グレゴリオ13世によって導入された太陽暦で、現在、私たちが使っている西暦のことです。2024年で算出してみると、 春分の日が3月20日(水)。 春分の日のあとの最初の満月の日が3月25日(月)。 最初の満月の日のあとに来る最初の日曜日は3月31日(日)。 従って、西方教会の2024年のイースターは、3月31日(日)となるのです。一方、ユリウス暦とは、紀元前46年に、ローマの英雄ユリウス・カエサルによって導入された太陽暦。1582年にグレゴリオ暦が導入されるまで使われていた暦で、旧太陽暦とも呼ばれます。ユリウス暦では、春分の日が3月21日に固定されていて、満月の日は一般的な満月の日ではなく、教会暦朔望表で決まります。 東方教会における2024年のイースターは、5月5日(日)です。日本で「イースター」と言う際には、一般的に西方教会のイースターを指すことが多いですね。


【「日本語」ではなんと言う?】

イースターは、日本語では「復活祭」と呼ばれていますが、教派によって呼び名が異なり、 正教会ではギリシャ語で「パスハ」、カトリック教会では「復活の主日」、プロテスタントなどでは「復活日」と言います。一方、西方教会では、復活祭の前後を復活祭の「聖節」と呼ぶのだそうです。また、「イースター」の英語[Easter]、ドイツ語の[Ostern(オースターン)]は、ゲルマン神話の光と春の女神の名前「Eoster(エオスター)」を由来としています。イエス・キリストの復活と、春を象徴する女神のイメージが重なることが理由のようですが、エオスターが春の女神ということで、イースターには春の訪れを祝う意味も含まれているそうです。


【なぜ「たまご」と「うさぎ」?】

イースターの時期になると、街のウインドウに、カラフルにペイントされたたまごや、うさぎのモチーフを見かけますね。クリスマスにはクリスマスツリー、ハロウィンではカボチャがそのシンボルとされているように、「たまご」と「うさぎ」は、イースターのシンボルなのです。

■イースターエッグの意味

カラフルにペイントされたたまごは「イースターエッグ」と呼ばれ、生命の始まりや復活の象徴となっています。鳥がたまごの殻を破ってこの世に誕生するように、イエス・キリストも「死という殻を破って復活した」、という意味が込められているのだそう。イースターエッグのカラフルなペイントには、それぞれの絵柄や色に意味があるといわれています。

■イースターエッグの色の意味

赤:イエス・キリストの血の色、太陽、幸福、情熱
オレンジ:強さ、力、持続
黄色:知恵、ひらめき
ピンク:成功
青:空、健康
緑:豊穣、子孫繁栄、あふれる希望
紫:信頼、忍耐
白:清浄、誕生、純潔

■イースターエッグの絵柄の意味

星:イエス・キリスト、厄除け
太陽:生命、情熱、成長、富
木:繁栄
麦:豊穣
波:富、永遠
へび:魔除け、永続性
魚:キリスト教のシンボル
カエル:恵み、女性、若さ、美しさ
農耕器具:土の恵み、結婚

■国によってのイースターエッグの装飾の違い

また、国によっても装飾の仕方に違いがあるようです。
ドイツ:たまごに色を染めて、木に吊り下げる
アルメニア:イエス・キリストや聖母マリアの絵を描く
ウクライナ:たまごに蜜蝋で柄を描き、染色して、蜜蝋部分を取り除く
ルーマニア:ビーズで装飾する

今度、イースターのたまごを見かけたら、絵柄や色に注意して見てみてくださいね。

■イースターバニーの意味

ではもうひとつ、「うさぎ」がイースターのシンボルになっているのはなぜでしょう。その理由は、うさぎは一度にたくさんの子を産み、さらに1年に何度も妊娠と出産を繰り返すことから、豊穣や繁栄を象徴すると考えられているから。「イースターバニー」としてうさぎの姿が登場するようになってから、すでに数百年以上の歴史があるといわれています。

■イースターバニーとたまご(イースターエッグ)の関係

イースターバニーとイースターエッグには、どんな関係があるでしょうか? うざぎはもともと、女神エオスターに仕えていました。春の訪れに感謝し、美しく装飾したたまごを女神に贈ったところ、女神がそれを喜んだことから、イースターではイースターバニーが色とりどりのイースターエッグを庭のあちこちに隠し、子どもたちに贈り物としてあげるようになった、といわれています。


【「イースター」の「楽しみ方」】

キリスト教圏において、イースターはとても重要な意味のある日です。そのため、イースターを祝い、学校が数日から数週間もお休みになる国もあるそうです。

■「イースター」には「何をする」?

イースターの日は、教会のミサに参加し、家族や親族が集まってご馳走を食べるのが一般的。カラフルなイースターエッグやイースターバニーで部屋を飾り付け、雰囲気を盛り上げます。また、「イースターエッグ」を使ったゲームもよく楽しまれているようです。例えば、隠されたたまごを探し、誰が一番多く集められるかを競う「エッグ・ハント」、イースターエッグの殻を破らないように転がして遊ぶ「エッグロール」、スプーンの上にイースターエッグを乗せてゴールまで運ぶレース「エッグスプーンレース」などは、イースターの楽しみのひとつとなっているます。

■「食べ物」は?

「イースターは特別な日」だけに、家庭でも普段より豪華な食事をすることが多いとか。よく作られる料理は、ローストラムやハム、白の十字架が描かれた「ホットクロズバンズ」、たまご形のチョコレートなどがあります。特別なお料理で、イースターをお祝いするのですね! 

・ローストラム
イースターのメニューのなかでも、特別豪華な楽しみになっているのが、ローストラムです。もともとイースターの前には、イエス・キリストの受難を分かち合う「四旬節」と呼ばれる期間があり、この期間は食事制限も行われていました。現在でも、イースターの前日、前々日は、肉類や乳製品を食べずに過ごす人々がいるため、イースター当日には肉や乳製品を解禁してご馳走にする習慣があるのです。

・ホットクロスバンズ
「ホットクロスバンズ」とは、パンの表面に十字の形がつけられた伝統的なパンのこと。パンのなかにはレーズンなどのドライフルーツやスパイスが入っており、味付けは少し甘め。「グッドフライデー」と呼ばれる、イースターの2日前にあたる金曜日の朝食に食べる習慣があり、魔除けや幸運をもたらす意味が込められているそうです。

・シムネルケーキ
「シムネルケーキ」はイギリスのイースターでよく登場するメニュー。マジパンとフルーツをたっぷり使ったケーキです。ホールケーキの上には、マジパンを丸くしたボールを11個飾るのがお決まり。キリスト教の12人の使徒から裏切者のユダの1人を除いた人数で「11」となるそうです。

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いかがでしたか? 2024年の「イースター」は3月31日(日)。日本では先祖を敬い、故人を偲ぶ日とされる「春のお彼岸」の少しあとに、「復活のお祝い」である「イースター」がやってきます。その意味や由来を理解したうえで、今年はいつもよりも積極的に「イースター」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) /『世界大百科事典』(平凡社) :
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