GT=グランドツーリングの概念とは、快適な高速路をどこまでも走っていける、というだけのものではない。往時のグランドツアーに思いを馳せれば、それも当然のこと。

アスファルト舗装など存在せぬ時代、石畳や砂利道、砂地に泥地、草原と、あらゆる環境を馬車で走り抜いて、当時の若き英国貴族たちは、真のジェントルマンへと成長を遂げたのだ。

現代の先進国は80〜100%の道路舗装率を誇るが、アフリカや南米など、国別の道路舗装率が20%に満たない地域も多い。SUVが隆盛を極める現代だが、悪路走行を含め、さまざまな環境の変化に対して対応可能なクルマは、実は限られている。

これが世界基準の「ハイエンドGT」だ!

Nissan Patrol(パトロール)

●ボディサイズ:全長5,310×全幅2,265×全高1,940mm ●車両重量:2,780kg ●エンジン:V型8気筒DOHC ●総排気量:5,552cc ●最高出力:400ps/5,800rpm ●最大トルク:560Nm/4,000rpm ●トランスミッション:7段AT
●ボディサイズ:全長5,310×全幅2,265×全高1,940mm ●車両重量:2,780kg ●エンジン:V型8気筒DOHC ●総排気量:5,552cc ●最高出力:400ps/5,800rpm ●最大トルク:560Nm/4,000rpm ●トランスミッション:7段AT

Nissan Titan V8 PRO-4X(タイタン)

●ボディサイズ:全長5,804×全幅2,050×全高1,961mm ●車両重量:2,632kg ●エンジン:V型8気筒DOHC
●総排気量:5,552cc ●最高出力:390ps/5,800rpm ●最大トルク:534Nm/4,000rpm ●トランスミッション:7段AT
●ボディサイズ:全長5,804×全幅2,050×全高1,961mm ●車両重量:2,632kg ●エンジン:V型8気筒DOHC
●総排気量:5,552cc ●最高出力:390ps/5,800rpm ●最大トルク:534Nm/4,000rpm ●トランスミッション:7段AT

Nissan Navara(ナバラ)

●ボディサイズ: 全長5,225×全幅1,850×全高1,805mm ●車両重量:1,974kg ●エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ ●総排気量:2,298cc ●最高出力:190ps/3,750rpm ●最大トルク:450Nm/1,500~2,500rpm ●トランスミッション:7段AT
●ボディサイズ: 全長5,225×全幅1,850×全高1,805mm ●車両重量:1,974kg ●エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ ●総排気量:2,298cc ●最高出力:190ps/3,750rpm ●最大トルク:450Nm/1,500~2,500rpm ●トランスミッション:7段AT

Nissan Terra(テラ)

● ボディサイズ:全長4,885×全幅1,865×全高1,835mm ●車両重量:2,700kg ●エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ ●総排気量:2,488cc ●最高出力:187ps/3,600rpm ●最大トルク:450Nm/2,000rpm ●トランスミッション:7段AT
● ボディサイズ:全長4,885×全幅1,865×全高1,835mm ●車両重量:2,700kg ●エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ ●総排気量:2,488cc ●最高出力:187ps/3,600rpm ●最大トルク:450Nm/2,000rpm ●トランスミッション:7段AT

ニッサンが世界で展開するLCV(ライト・コマーシャル・ビークル=小型商用車)は、その高い信頼性が評価され、世界のあらゆる環境下で活躍している。多くの車種が、悪路走行に強い、堅固なラダーフレーム構造。駆動方式はセンターデフロックを備えた4WDで、モノコック構造、アクティブスプリット式フルタイム4WDが主流のオンロード向けSUVとは、まったく別物だ。

砂漠に忽然と現れたハイダウェイ・リゾート

ハイダウェイリゾート
ハイダウェイリゾート

このニッサンLCVの4車種(『パトロール』『タイタン』『テラ』『ナバラ』)で、モロッコ東部、アルジェリア国境に近い、広大無辺のサハラ砂漠西部地域を旅した。目ざすは砂漠に忽然と姿を現す楼蘭のごとき、ハイダウェイリゾートだ。

かつて’90年代初頭まで行われていたパリ=ダカール・ラリーのルートにも近く、モロッコの首都・ラバトや主要都市のカサブランカ、マラケシュなどとは隔絶された辺境の地。ここに、徃時の隊商が待ち望んだオアシスの如きパラダイス・ホテルがある。

4車種を乗り較べながら、終日道なき道を進んだが、いずれのLCVもわれわれに、オンロード走行と変わらぬ安心感を与えてくれた。

  • ゲストのバースデーと聞いて、早速登場したバースデーケーキ。オアシスとは、喉の渇きを癒すためだけでなく、心の渇きもまた、癒すためにあるのだ。Hotel Xalucaにて。https://www.xaluca.com/
  • モロッコの洗練された料理は、タフな砂漠を超えてたどり着いた、旅人たちの胃袋を満たす。テーブルマナーは、宗主国だったフランス式ながら、ホスピタリティは遠来の客を手厚くもてなす砂漠の民のそれである

グランドツーリングの字義は偉大なる旅行(grand touring)だが、ここはあえて(ground touring)と戯れてみたい。圧倒的な大地の広がりに立ち向かい、どこまでも走り続けられるクルマ。これこそ「ハイエンドGT」の到達点、究極のラグジュアリー体験そのものだ。

惜しむらくは、わが国ではこのような「GT環境」を持ち得ないこと。それゆえ、今回紹介した4車種は、発売地域に最適化した仕様で各国で販売されるも、いずれも日本未発売である。

これは1999年のルノーとの提携以来、真のグローバル企業へと変貌したニッサンにとっては当然の選択だろうが、いささか寂しくもある。なぜならクルマとは、すでに実用品の枠を超え、個人のライフスタイルの象徴でもあるからだ。

われわれもまた心の中に、広大な砂漠を凌駕する夢や荒ぶる魂を持っている。実際にアフリカの大地へ旅立たずとも、その思いを仮託する魅力的なクルマが、わが国でも手に入れば、新たなるラグジュアリー体験の提案となるだろう。

過去には『パトロール』などが、国内でも販売されていたことを思えば、新たなラグジュアリー層のニーズは十分にある。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2019年春号より
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