GT=グランドツーリングの概念とは、快適な高速路をどこまでも走っていける、というだけのものではない。往時のグランドツアーに思いを馳せれば、それも当然のこと。
アスファルト舗装など存在せぬ時代、石畳や砂利道、砂地に泥地、草原と、あらゆる環境を馬車で走り抜いて、当時の若き英国貴族たちは、真のジェントルマンへと成長を遂げたのだ。
現代の先進国は80〜100%の道路舗装率を誇るが、アフリカや南米など、国別の道路舗装率が20%に満たない地域も多い。SUVが隆盛を極める現代だが、悪路走行を含め、さまざまな環境の変化に対して対応可能なクルマは、実は限られている。
これが世界基準の「ハイエンドGT」だ!
Nissan Patrol(パトロール)
Nissan Titan V8 PRO-4X(タイタン)
Nissan Navara(ナバラ)
Nissan Terra(テラ)
ニッサンが世界で展開するLCV(ライト・コマーシャル・ビークル=小型商用車)は、その高い信頼性が評価され、世界のあらゆる環境下で活躍している。多くの車種が、悪路走行に強い、堅固なラダーフレーム構造。駆動方式はセンターデフロックを備えた4WDで、モノコック構造、アクティブスプリット式フルタイム4WDが主流のオンロード向けSUVとは、まったく別物だ。
砂漠に忽然と現れたハイダウェイ・リゾート
このニッサンLCVの4車種(『パトロール』『タイタン』『テラ』『ナバラ』)で、モロッコ東部、アルジェリア国境に近い、広大無辺のサハラ砂漠西部地域を旅した。目ざすは砂漠に忽然と姿を現す楼蘭のごとき、ハイダウェイリゾートだ。
かつて’90年代初頭まで行われていたパリ=ダカール・ラリーのルートにも近く、モロッコの首都・ラバトや主要都市のカサブランカ、マラケシュなどとは隔絶された辺境の地。ここに、徃時の隊商が待ち望んだオアシスの如きパラダイス・ホテルがある。
4車種を乗り較べながら、終日道なき道を進んだが、いずれのLCVもわれわれに、オンロード走行と変わらぬ安心感を与えてくれた。
グランドツーリングの字義は偉大なる旅行(grand touring)だが、ここはあえて(ground touring)と戯れてみたい。圧倒的な大地の広がりに立ち向かい、どこまでも走り続けられるクルマ。これこそ「ハイエンドGT」の到達点、究極のラグジュアリー体験そのものだ。
惜しむらくは、わが国ではこのような「GT環境」を持ち得ないこと。それゆえ、今回紹介した4車種は、発売地域に最適化した仕様で各国で販売されるも、いずれも日本未発売である。
これは1999年のルノーとの提携以来、真のグローバル企業へと変貌したニッサンにとっては当然の選択だろうが、いささか寂しくもある。なぜならクルマとは、すでに実用品の枠を超え、個人のライフスタイルの象徴でもあるからだ。
われわれもまた心の中に、広大な砂漠を凌駕する夢や荒ぶる魂を持っている。実際にアフリカの大地へ旅立たずとも、その思いを仮託する魅力的なクルマが、わが国でも手に入れば、新たなるラグジュアリー体験の提案となるだろう。
過去には『パトロール』などが、国内でも販売されていたことを思えば、新たなラグジュアリー層のニーズは十分にある。
問い合わせ先
- 日産自動車 TEL:0120-315-232
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2019年春号より
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