伊勢丹新宿店メンズ館1階の正面エントランスを入ると、まっ先に見えるのが煌びやかなコスメティクスの商品。多種多様なフレグランスやコスメティクスをそろえてきた、それまでのフロアを拡張し、さらに今の時代感と顧客のニーズに合わせた商品を綺麗にディスプレイする。いわば、訪れる者にとって、メンズ館の第一印象を決める、象徴的な1階フロアのリモデルとなった。
「トライアルスペース」でさまざまなコスメを試せる!
コスメティクスの品ぞろえは圧倒的だ。まず、新しく設置した大きな棚を正面から向かって眺めると、左側が「香り」や「デザイン」など、感覚にうったえかけることに主眼をおいた商品。一方、右側は「機能」や「効能」を重視。肌悩みに応える商品が並ぶ。
私はフレグランスは好きな方だが、コスメとなるとあまり積極的はではない。髭剃りあとにローションを付けるほか、冬場に肌の乾燥を守るクリームを塗る程度の手入れである。コスメと言われると何か腰が引け、液体やクリームを何層も顔に塗り、眉をキリリと描いて……、となんだが前時代的で、手間がかかることばかりを想像する。
リモデルでは、少なからずそんなコスメに抵抗がある人にも、いかに日常的で身近なアイテムであるかを感じてもらうため、スペースを充実させ、初めてコスメを体験する人にも手にしやすいように、選択のチャンスをつくったのである。
「コンサルティングスペース」では専門スタッフからアドバイスが受けられる
ひとつは、気になったアイテムを試せるトライアルスペース。コーナーに水道も設え、商品の香りやテクスチャー(使用感)が体感できる場にした。もうひとつは、肌悩みに合うコスメの紹介や、商品の深い知識が得られるコンサルティングスペース。専門のスタッフが適切なアドバイスを提供する。
本誌矢部、うれしはずかしコスメ体験!
そして遂に、今回私はコスメ初体験を試みた。テーマは、「若返り」。肌の色を健康的に演出し、生き生きとした顔立ちを目指す。決して化粧ではない。メンズコスメというと、単純に化粧することと思い違いする人もいるだろう。私は常にそう思ってきたが、実際は、肌の手入れというイメージである。
アドバイザーのスタッフによると、メンズコスメの第一のポイントは清潔感。肌のくすみをカバーするだけで十分に好感度が増すそうだ。ほとんど言われるがまま、コスメ=お手入れが進行。くすみをカバーしたところで、肌の色と質感を整える。齢50を過ぎた顔には、それなりのシミもある。このシミこそが、「男の人生の履歴書だ」との思いもよそに、肌が生き生きとしてくる。
そして、コスメのポイントとなる目元の手入れ。眉毛に自然な色を差し、白髪の混じった口髭にも同様に色を加える。すると、みるみるうちに表情が引き締まり、印象が若返っていくのがはっきりとわかる。大見得切った歌舞伎役者の顔といっては大げさだが、明らかに目力がついたのである。
コスメのプロセスはほんの数分。日常的に続けられる時間である。令和という新しい時代を迎えた今、男のスタイルは、コスメなしには完成し得ないのかもしれない。
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- TEXT :
- 矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
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