伊勢丹新宿店メンズ館1階の正面エントランスを入ると、まっ先に見えるのが煌びやかなコスメティクスの商品。多種多様なフレグランスやコスメティクスをそろえてきた、それまでのフロアを拡張し、さらに今の時代感と顧客のニーズに合わせた商品を綺麗にディスプレイする。いわば、訪れる者にとって、メンズ館の第一印象を決める、象徴的な1階フロアのリモデルとなった。

 

1Fコスメティクスゾーンの魅力を動画で紹介する。

「トライアルスペース」でさまざまなコスメを試せる!

スキンケア、ヘアケア、ボディケアに加え、メンズメイク、グルーミング、デオドラントアイテムなどを20ブランド以上取揃える。
スキンケア、ヘアケア、ボディケアに加え、メンズメイク、グルーミング、デオドラントアイテムなどを20ブランド以上取揃える。

 コスメティクスの品ぞろえは圧倒的だ。まず、新しく設置した大きな棚を正面から向かって眺めると、左側が「香り」や「デザイン」など、感覚にうったえかけることに主眼をおいた商品。一方、右側は「機能」や「効能」を重視。肌悩みに応える商品が並ぶ。

 私はフレグランスは好きな方だが、コスメとなるとあまり積極的はではない。髭剃りあとにローションを付けるほか、冬場に肌の乾燥を守るクリームを塗る程度の手入れである。コスメと言われると何か腰が引け、液体やクリームを何層も顔に塗り、眉をキリリと描いて……、となんだが前時代的で、手間がかかることばかりを想像する。

 リモデルでは、少なからずそんなコスメに抵抗がある人にも、いかに日常的で身近なアイテムであるかを感じてもらうため、スペースを充実させ、初めてコスメを体験する人にも手にしやすいように、選択のチャンスをつくったのである。

「コンサルティングスペース」では専門スタッフからアドバイスが受けられる

コスメ ティクスを担当する三越伊勢丹の吉田俊介氏に、リモデルの狙いを聞く矢部。
コスメ ティクスを担当する三越伊勢丹の吉田俊介氏に、リモデルの狙いを聞く矢部。

 ひとつは、気になったアイテムを試せるトライアルスペース。コーナーに水道も設え、商品の香りやテクスチャー(使用感)が体感できる場にした。もうひとつは、肌悩みに合うコスメの紹介や、商品の深い知識が得られるコンサルティングスペース。専門のスタッフが適切なアドバイスを提供する。

本誌矢部、うれしはずかしコスメ体験!

「FIVEISM × THREE」のショップマネージャー 、神山大輔氏の手で「男のメイクアドバイス」を体験する矢部。
「FIVEISM × THREE」のショップマネージャー 、神山大輔氏の手で「男のメイクアドバイス」を体験する矢部。

 そして遂に、今回私はコスメ初体験を試みた。テーマは、「若返り」。肌の色を健康的に演出し、生き生きとした顔立ちを目指す。決して化粧ではない。メンズコスメというと、単純に化粧することと思い違いする人もいるだろう。私は常にそう思ってきたが、実際は、肌の手入れというイメージである。

 アドバイザーのスタッフによると、メンズコスメの第一のポイントは清潔感。肌のくすみをカバーするだけで十分に好感度が増すそうだ。ほとんど言われるがまま、コスメ=お手入れが進行。くすみをカバーしたところで、肌の色と質感を整える。齢50を過ぎた顔には、それなりのシミもある。このシミこそが、「男の人生の履歴書だ」との思いもよそに、肌が生き生きとしてくる。

こちらがメイク後。さりげなく、それでいて明らかに健康的な若々しさが感じられる。
こちらがメイク後。さりげなく、それでいて明らかに健康的な若々しさが感じられる。

 そして、コスメのポイントとなる目元の手入れ。眉毛に自然な色を差し、白髪の混じった口髭にも同様に色を加える。すると、みるみるうちに表情が引き締まり、印象が若返っていくのがはっきりとわかる。大見得切った歌舞伎役者の顔といっては大げさだが、明らかに目力がついたのである。

 コスメのプロセスはほんの数分。日常的に続けられる時間である。令和という新しい時代を迎えた今、男のスタイルは、コスメなしには完成し得ないのかもしれない。

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この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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