■神々しさを放つ真紅のタータンに伝統への情熱を託して
スコットランド特有のテキスタイルであるタータンチェックとクチュールメゾンのサヴォワールフェールが融合し、時空を超えたエレガンスが完成。創設者のムッシュ ディオールが「タイムレスで流行に左右されない」と語ったタータン柄を用いたルックには、ファッションの可能性を追い求める“ディオール”の情熱が息づいて。
アイコニックな「マクロカナージュ」キルティングのロングケープは、現代的な軽快さとクラシカルな気品を併せもつ逸品。ニットやブーツまでを黒で揃えてシックにまとめたら、襟元にはきれい色のスカーフを添えて。
『ディオール ブックトート』バッグには、スコットランドの国花である紫色のアザミが刺繍され、優美な印象に。
■女王の気高さを色濃く残した装いでドラマティックに
本コレクションのミューズでもある、スコットランド女王メアリー・スチュアートのスタイルからインスピレーションを得たホワイトルック。温もり感のあるラムファーのケープと軽やかなレースのセットアップという、対照的なアイテムの掛け合わせがセンシュアルなムードをもたらして。
ベルト使いが特徴的なフラット靴で、足元に辛口なエッセンスを。
空気をはらんで翻るベルテッドコートには、1955年にスコットランドで開催されたショーのアーカイブ写真をプリント。ランウェイのシーンだけでなく、ムッシュ ディオールがクチュリエとしてドレスを整えるシーンや、ダンスパーティを楽しむ人々の様子が刻まれ、シネマティックな一着に。
“ディオール”とスコットランドの絆は深く、オートクチュールのアンサンブルにスコットランドを意味する「エコセ」と名付けたり、コレクションを発表したことも。
■雄弁な黒バッグに前衛的なスピリットと大人の品格が宿る
『レディ ディオール』から新たに登場したバッグは、エレガンスを根底にもちながらも、進化し続けるエネルギーに溢れた“ディオール”のフィロソフィを物語る。写真右のバッグは、シワ加工を施したクリンクルド カーフレザーにアイレットやパールを手作業で施し、エッジの効いたデザインに。
左のラムレザーのバッグは、「カナージュ」モチーフをあえてフラットにあしらいストイックな表情をのぞかせる。
■伝統的なツイードとクチュールメゾンの技が華麗に融合
タータンチェックのセットアップは、老舗の工房「ハリスツイード」のウールファブリックを採用し、伝統衣装のキルトを連想させるフリンジ使いが施されて。ウエストを絞った「コロール(花冠)」ラインのジャケットの上から、ボリュームのあるベルトを組み合わせて独創的なアレンジを。
ショルダー部分やネックレスには、スコットランドの紋章であるユニコーンがあしらわれ、存在感を放つ。
マニッシュなオリーブグリーンのコートとレース刺繍という、相反する要素を掛け合わせることで、異彩を放つスタイルに。ハリ感のあるコートは、エポレットやチンベルトなどトレンチのディテールを汲み、ウエストベルトを閉めることも。
ライナーには「ディオール オブリーク」柄が施され、見えない部分まで凝った演出に。『ディオール ボビー』バッグもコートと同じトーンで小粋に。
2025年クルーズ コレクションは、壮麗な庭園が広がるドラモンド城が舞台|“ディオール”とスコットランドが紡ぐ時を超えたエレガンス
“ディオール”の2025年のクルーズ コレクションはスコットランドの伝統と文化がテーマに。エディンバラのドラモンド城で開催されたショーの全貌をお伝えします。
スコットランドの遺産を再解釈し“ディオール”が紡ぐ夢の祭典
中世の風情を残した荘厳さと豊かな自然に溢れたスコットランドに想いを馳せた、“ディオール”の2025年クルーズ コレクション。クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが手掛けるクルーズ コレクションは、創設者クリスチャン・ディオールの軌跡を辿るものであると同時に、それぞれの地域に根付く伝統とメゾンのクチュール文化を融合させるプロジェクトでもあります。
ファッションの新たな境地へと誘うショーは、時空を超えた旅のような壮大なテーマを秘めています。今回、舞台となったスコットランドはメゾンと深い絆をもつ地。ムッシュ ディオールは、1951年にパースシャーでオートクチュール コレクションを発表、1955年には「グレンイーグルス ホテル」でのチャリティダンスパーティのためにドレスを披露しました。
コレクションには、スコットランドで脈々と受け継がれるタータンチェックやツイードが随所に取り入れられるだけでなく、女王メアリー・スチュアートのワードローブから着想を得たスタイルも登場。波乱に満ちた運命に翻弄されながらも、誇りと尊厳をもち続け、意志を貫いた女王メアリー・スチュアートをたたえたエレガンスが心を揺さぶります。
また、国花である紫色のアザミや紋章のユニコーンが、スコットランドを物語るコードとしてルックにアクセントを添えています。地域に根付く工房との対話も積極的に行い、老舗の「ハリスツイード」や「ジョンストンズ オブ エルガン」「ロバート マッキー」とのコラボレーションを。ほかにも、キルトを現代風に再解釈する「ル キルト」や上質なニットウエアを手掛ける「エスク カシミア」との競作で、今までにない、ノスタルジックなムードが漂うエレガンスを実現しました。
幻想的な黄昏時に包まれて、哀愁漂うバグパイプの音色…、ドラモンド城から庭園を舞台にしたショーは、“ディオール”のクチュールの美学と、スコットランドの歴史が見事に融合し、記憶に刻まれるものとなりました。
スコットランドの職人技とのコラボレーションで生み出す唯一無二のクリエイション
“ディオール”のクルーズ コレクションは各地の伝統的な職人技に光を当てるプロジェクト。スコットランド特有のテキスタイル文化を継承する、老舗の工房とのコラボレーションにより、かつてないクリエイションが生み出されました。
【Harris Tweed(ハリスツイード)】
スコットランド西部にあるアウター・ヘブリディーズ諸島で誕生し、100年以上の歴史をもつ。島の風土を生かしたファブリックは、伝統的な足踏み織機を使って、島に住む職人の自宅で織り上げられる。文化的価値が極めて優れていることが、1993年の議会制定法により認定されている。
【Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)】
18世紀後半に創業。スコットランドの北東岸の土地で、原材料の繊維から衣服を仕立てる毛織物工房。上質なカシミアやメリノウールを用いた製品作りに定評がある。独自の専門技術を開発し、自社工場でオリジナルの糸から紡ぎ上げることで、クオリティの高いニットウエアが完成する。
【Robert Mackie(ロバート マッキー)】
スコットランド連隊が着用する儀礼用の帽子や、パイプバンドのハットウエアを手掛ける。スコットランド南西部、クライド湾の海岸に位置する歴史あるエアシャー地方の職人技を体現。ポンポン付きのベレー帽など、フェルトやニット素材のパーツを組み合わせた、昔ながらの帽子製造技術を継承する。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先
- PHOTO :
- 藤森星児
- STYLIST :
- 伊藤美佐季
- HAIR MAKE :
- ヘア/JUN GOTO(ota office)、メイク/TOMOHIRO MURAMATSU
- MODEL :
- 大政 絢(Precious専属)
- EDIT&WRITING :
- 川口夏希、池永裕子(Precious)