パリナイズされた「高級キャビア」を日本でも!

伊勢丹新宿店 本館地下1階にオープンする「ブラ ド エピスリー/カフェ プルニエ パリ」。伊勢丹新宿店本館地下1階。TEL:03-3352-1111 営業時間:10時30分~20時。新宿区新宿3-14-1(Googleマップはこちら)地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線・副都心線の「新宿三丁目駅」に直結。

「カフェ プルニエ パリ」を運営する「キャビアハウス&プルニエ(CAVIAR HOUSE & PRUNIER)」は、パリ、ロンドン、ジュネーブ、ドバイ、香港など世界各国でシーフードバーや高級食材のブティックを展開する、美食のスタイルブランド。

マドレーヌ寺院(パリ8区)のそばにある「カフェ プルニエ パリ」本店。住所は、15, Place de la Madeleine 75008 Paris(Googleマップはこちら

同ブランドは、19世紀後半に、ロシア産キャビアの魅力をフランスに紹介したレストランに起源をもつ「PRUNIER」ブランドと、1950年にコペンハーゲンで創業し、イラン産キャビアなどを欧州各国に流通させてきた「CAVIAR HOUSE」が、2004年に手を携えて誕生した。

「キャビアをつまみながら、シャンパンを」

 伝統的なキャビアといえば、カスピ海沿岸のチョウザメの卵を塩漬けしたもので、その産地はロシアやイランがよく知られる。では、なぜウォッカではなく、シャンパンなのか? この問いを深めていくと、ロシアとフランスを巡る歴史ロマンが浮かび上がってくる。

キャビアの歴史』(大久保庸子訳 原書房、2017年)の著者で、フードライターのニコラ・フレッチャーは、カスピ海沿岸地域などで、栄養価の高い素朴なものとして食べられていたキャビアが、ロシアにおいて格式高いディナーとして供されるようになるのは、13世紀まで遡る、と著している。

その後、「タタールのくびき」といわれるモンゴル人の征服を跳ね返したロマノフ王朝が発展する過程で、宮廷文化を彩る美味として、外貨を稼ぐ国家事業として、キャビアの魅力が「発見」される。それまでも冒険的なヴェネチア商人などによってイタリア、フランス、イギリスなどにも伝えられてはいたが、エカチェリーナ2世の時代にキャビアは帝国ロシアの輸出品として、広くヨーロッパ諸国に知られていく。

伝説の女帝は、国家の正式な晩餐会において、キャビアを外国の賓客に惜しみなく振る舞う。光り輝くようなキャビアの美しさ、官能的な食味。これに魅了された人々は、貴族階級のみならず、急速に台頭する市民階級、いわゆるブルジョアにも広がっていく。

パリナイズされたキャビアを巡る物語

日本にいながらにしてパリの食文化を楽しめる。

 余談だが、ヨーロッパ市場へ輸送する際の鮮度を保つための塩漬けの技術、帆船から蒸気船、そして鉄道という輸送技術、さらには冷蔵技術の開発など、この時期の技術革新によって、「美味しいキャビア」が積極的に紹介されていく。

こうした技術革新は、現在も積極的に行なわれていて、「キャビアハウス&プルニエ」では、安全安心かつサスティナブル、はもちろん、エシカル(倫理的)な製造方法で、キャビアを提供することを企業理念としている。

 1917年3月(ロシア暦2月)。ロシアにおいて、20世紀最大の人民革命が起きる。この難を逃れた貴族たちは、パリなどに向かう。そうしたこともきっかけとなり、パリを含むヨーロッパの大都市では、ロシア文化が花開く。そのひとつとして、キャビア料理などの食文化が伝わり、現在まで続く名店が開かれた。

その代表的存在のひとつが「プルニエレストラン」である。

 ちなみにこの時期に、鮮度を保つために塩漬けされたキャビアを美味しく食べるためのメニューを考案したのが、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世から「私はドイツ皇帝だが、あなたは料理の皇帝だ」と称賛されたオーギュスト・エスコフィエ。

 フランス料理の発展に大きく寄与したと言われるエスコフィエの著書『LE GUIDE CULINAIRE(邦訳は『エスコフィエ フランス料理 LE GUIDE CULINAIRE』)で触れているとおり、生クリームやゆでたまごとあえたり、薬味を加えることで、塩気の強さをマイルドにするレシピは、この時期に考案されている。

 そして、スタイリッシュフードとして昇華させられたキャビアをつまみながら、シャンパンを楽しむスタイル、つまりパリナイズされたキャビアは、フランスの文化に根を下ろす。

亡命貴族を魅了した採れたての浅漬けキャビア

 この時期、もうひとつ伝説的な物語が残っている。父から譲り受けたレストランを、海から採れるものなら何でも、を掲げて「プルニエレストラン」を発展させたエミール・プルニエと、キャビアの偶然の出合いである。ロシア革命の難から逃れてきた、ある大学教授から、こんな話を耳にする。

 彼がボルドー地方のジロンド川をぼんやりと見ていると、そこの漁師が、チョウザメ漁をしている。漁師たちは捕獲したチョウザメの卵を含む腹わたを、そのまま川に流していたのだ。これに驚愕した大学教授は、エミール・プルニエに共同事業を興すことを持ちかけ、5つのキャビア製造工場を作る。それまでもロシア産キャビアを多く供給していたが、これを機会に製造会社を始め、この事業は大成功する。

 当時「プルニエレストラン」が提供していた、採れたての浅漬けキャビアは、プルニエ亡命ロシア貴族たちの舌を魅了する。まるで故国で食べていたようなキャビアが、パリでも味わえるため、店先には、次々と馬車が横付けされる。その賑わいを知ったパリのセレブリティたちが、本当に美味しいキャビアを求めて、「プルニエレストラン」に押し寄せた。

「ブラ ド エピスリー/カフェ プルニエ パリ」では、「Paris」を30g/2万1600円、50g/3万4560円、125g/8万2080円で提供する。手軽に楽しむなら「トラディション」(30g/1万1664円、50g/1万8360円、125g/4万4280円)を、もっと手軽に楽しみたいならスプーンで提供する「キャビアスプーン」(下の写真1296円)を、試してみてはいかがだろう。

「キャビアスプーン」。

日本でもパリナイズされたキャビアを

「プルニエレストラン」の外観。住所:16,Avenue Victor Hugo 75016 Paris

 キャビアを巡るエピソードに事欠かない「プルニエレストラン」には、こんなエピソードも伝わっている。2017年9月に他界したパリ・モード界の重鎮ピエール・ベルジェは、イブ・サンローランを物心両面で支え続けたことで知られる。

 そして、サンローランとともに大成功して得た富を、フランス文化を守るために惜しみなく投じる。1925年に出来た「プルニエレストラン」の建物を、政府に働きかけて文化財として残そうと尽力したのも彼である。

 そして、ピエール・ベルジェは、キャビアハウスの社長のピーター・G・ルベイツの活動を強く支援する。ルベイツは、フランス文化としてのキャビアを守るために、カスピ海で採れる天然チョウザメを、ワシントン条約の対象にして、国際間取引を禁止するため、国連への働きかけなども行なった。現在「キャビアハウス&プルニエ」では、健康的なチョウザメから、良質なキャビアを安定的に獲るために、養殖事業を世界各地で行なっている。

 乱獲、密輸、水質汚染など、キャビア文化を取り巻く状況は、紆余曲折を経て、現在に至る。不幸な歴史を繰り返さないため、文化を継承するため、そして多くの人々がキャビアを楽しめるために、「キャビアハウス&プルニエ」は、さまざまな努力を重ねている。

 そのピエール・ベルジェが、クリスチャン・ディオールをもてなすために供したと言われるのが「クリスチャン・ディオール・エッグ」と呼ぶメニュー。「ニュールック」によってモード界に衝撃をもたらした男は、ジュレで包んだポーチドエッグにキャビアを贅沢に盛り付けたメニューを繰り返し注文したことから、“プルニエズ・シークレット”と呼ぶ裏メニューが、本メニューになったというエピソードが残っている。

 モードの歴史を知る方ならば、ピエール・ベルジェ、クリスチャン・ディオール、イヴ・サンローランという名前が出るだけで、1950年代から60年代にかけて起きた出来事が頭に浮かぶに違いない。

 ディオールが急逝し、その後を任されたサンローランは、アルジェリア戦争に徴兵され、体を壊したうえに、メゾンを追われる。そのサンローランを強力に支え続けたのがピエール・ベルジェ。20世紀のモード史は、二人の出会い抜きには語れない。

 実は、伊勢丹新宿店 本館地下1階に海外初出店される「ブラ ド エピスリー/カフェ プルニエ パリ」では、オープニングメニューとして、パリ本店のものよりも少し小ぶりな「プルニエズシークレット」を1個2970円で提供する。

 ジュレに包まれた半熟卵と、キャビアの濃厚な風味。ぜひ、「ブラ ド エピスリー/カフェ プルニエ パリ」がおすすめするシャンパンともに楽しんでいただきたい。

クリスチャン・ディオールが来店のたびに注文した「クリスチャン・ディオール・エッグ」のレシピはそのままに、少し小ぶりにした「プルニエズシークレット」(日本製/1個)2970円。

 また、日本でもおなじみの「ピエール・エルメ」とコラボレーションした、キャビアマカロンも注目の一品。このメニューのために開発した生地に、上質のキャビアをサンド。隠し味にしのばせているジュレが、口の中で、どんなハーモニーを奏でるのかは、ぜひご自身でお確かめを。

ピエール・エルメとのコラボで実現した「キャビアマカロン」2592円。

 10席のイートインスペースではあるが、豊かなキャビア文化を堪能できる新宿の新スポット。気軽に立ち寄れる待ち合わせ場所としても使えるほか、少人数で貸し切ってキャビアを心ゆくまで楽しむといった使い方もできる。今後の展開に注目だ!

ル サロン・ジャック・ボリーがブティック展開

生ケーキ各種。※写真はイメージ。ぜひ、店舗に足を運んでお確かめを。

 この秋、伊勢丹新宿店 本館地下1階には、もうひとつ足を運びたいスポットがある。

 日本におけるフランス料理の第一人者、ジャック・ボリーによるパティスリー「ル サロン・ジャック・ボリー(LE SALON JACQUES BORIE)」が、ブティック展開を開始する。

左/ル サロン・ジャック・ボリー・ラ・ブティック。オペラ1個810円。右/ケーク オ マロン。2個入りは1188円、6個入りは3240円。

 彼の繊細な感覚を細部に至るまで行き届かせたカフェ・キュイジーヌの世界観が、生菓子/半生菓子/乾菓子やNuts&Chocolatsなどで表現されている。気持ちを届けるおつかいものや贈答品はもちろん、自分へのご褒美にもおすすめだ。

参考文献: 『キャビアの歴史』(大久保庸子訳 原書房、2017年)

問い合わせ先

  • 伊勢丹新宿店 TEL:03-3352-1111(大代表)
  • 営業時間/10:30〜20:00
  • 住所/東京都新宿区新宿3-14-1
  • アクセス/地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線・副都心線「新宿三丁目駅」直結

この記事の執筆者
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