これまでに比べ今回のピッティ会場は、スナップ撮影に真剣なブロガーたちが一気に減ったことが印象的だった。最新のスタイルに身を包んだバイヤーやクラシックなスーツをまとうダンディな紳士、地味ながらも着こなし方に個性の光る洒落者たちが目立っていたが、あきらかにブロガーが少なかった。新しいコンテンツが重要なブロガーは、また何か違うアプローチを狙っているのか。SNSを媒介にしたインフルエンサーたちのピッティの捉え方が間違いなく、変わってきた。

 ブロガーたちが減っても、ピッティの会場を訪れるダンディな男たちは健在だ。今回、特に注目すべき洒落者の着こなしは、多彩なデザインのコートスタイル。ピッティに出展したクラシック系の各ブランドでも、コートは重要な提案となった。

2019-2020秋冬注目のニットと合わせて男らしさを表現

着回し力もあるタリアトーレのタイロッケンコート

ボタンがなくガウンのように羽織ることができるタリアトーレのタイロッケンコート。

 まず、“タリアトーレ”。今回からブースの設えの変更とともに、アイテムの出展点数を絞り込んだことで、ひとつひとつのアイテムがより明快に展示されていた。

 コレクションのなかでも主張の強いアイテムは、断然にコート。大きな襟をデザインし、ボタンを排除したストラップで締めるタイプのタイロッケンは別格だ。ミリタリー由来のコートをコットン、ウール、ナイロンを混紡した張りのある生地でモダンに表現した。“タリアトーレ”の新しい提案のひとつに、モノトーンのコレクションもある。その象徴的なブラックをチェック柄の生地でアレンジしているのも見事。着丈が長めのゆったりとしたシルエットが、実にエレガントな雰囲気である。コーディネートは写真のように、編み柄を生かした肉厚のニットとホワイト系のコットンパンツとの相性が抜群だ。

 もうひとつは、ムートンを使ったコートも多く発表された。

カーキ色で表現した肉厚のムートンコート。コーディネートで、男らしさを表現するなら最適な1枚と言える。

 1966年に発祥以来、レザー素材を巧みに応用したアウターでダンディな世界をつくり上げてきた“ルッフォ”は、ムートンのピーコートを発表。革の縁の仕上げに見られる細かい縫製や、コーデュロイ風の型押しをムートン素材に加えるなど、上質な素材の魅力だけに頼ることなく、独自の仕立て技術や風合いをつくり上げ、より個性のあるコートを完成させた。

 人気のカーキ色で表現した肉厚のムートンは、洒落た表情と上質感をあわせ持つ。このコートもローゲージのニットを中心にコーディネートすると、洒脱な大人を演出できる。

 トレンチやポロ、あるいはラグランなど、男らしさが際立つコートは、今年の秋冬も主役のアイテムとなるだろう。

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この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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