自宅でも、自室でもジェントルマンは服装に気を抜いてはいけない。かつてのイギリス紳士は、外出先よりも、家族と過ごす屋敷内での服装にこだわりをもっていたものだ。Tシャツと短パンで事足りているからなどと、宣うなかれ。ここでは、奥深い部屋着の魅力について紹介する。部屋着と寝間着を兼用しているのが当たり前では、ジェントルマンとは言えない。

求む、美意識のある部屋着

 日本、特に東京のような劣悪な住宅事情の、つまり、狭い家に住んでいると、自宅のすべてがベッドルーム化しかねない。

 実際、夜家に帰るなり、スーツからパジャマに着替えてしまう男性は多いのである。その姿で食事をし、そのままベッドに突入してしまう。

爽やかな白地にブルー系のストライプを配したパジャマ。質のいいコットンの生地で、滑らかな肌触りを堪能できる。ボタンの素材は 白蝶貝。ルームウエアにもとことんこだわり尽くす、それが紳士たるゆえんだ。¥50,500(ラペルラジャパン)
爽やかな白地にブルー系のストライプを配したパジャマ。質のいいコットンの生地で、滑らかな肌触りを堪能できる。ボタンの素材は 白蝶貝。ルームウエアにもとことんこだわり尽くす、それが紳士たるゆえんだ。¥50,500(ラペルラジャパン)

 できることなら、パジャマの前にもうワンクッションおいてほしい。春夏なら夕食のテーブルにふさわしいコットンのニットウエアなどどうだろう。そして自室に入ったときはじめてパジャマを着、ドレッシングガウンをはおる。これも、贅沢ではあるが、毎晩フレッシュなパジャマというわけにはいかないだろうか。
 夕食という家での生活の最も大切な時間のために毎晩ホワイトタイを着用する貴族も戦前の英国には多かった。いやむしろ屋敷内での生活のほうに彼らは力を入れていたのである。

最上級のエジプシャンコットンを使用。ダブルフェイス仕立てで、胸にはブルネロ クチネリの本社があるイタリア・ソロメオ村の紋章が刺しゅうされている。自宅以外に、ビーチでも使いたいガウンだ。¥167,000(ブルネロ クチネリ ジャパン)
最上級のエジプシャンコットンを使用。ダブルフェイス仕立てで、胸にはブルネロ クチネリの本社があるイタリア・ソロメオ村の紋章が刺しゅうされている。自宅以外に、ビーチでも使いたいガウンだ。¥167,000(ブルネロ クチネリ ジャパン)
やわらかなグレインレザー製で、かかとは踏みつぶしてもはける仕様。土踏まず部分が盛り上がり、足裏のフィット感が高い。鮮烈な赤のライニングが目を引く。専用の袋と靴べらが付属し、旅先に携帯するのにも重宝する。¥27,000(和光)
やわらかなグレインレザー製で、かかとは踏みつぶしてもはける仕様。土踏まず部分が盛り上がり、足裏のフィット感が高い。鮮烈な赤のライニングが目を引く。専用の袋と靴べらが付属し、旅先に携帯するのにも重宝する。¥27,000(和光)
夏でも高原の別荘で過ごすようなシーンには、上質なソックスが必須。コーギーの英国製ソックスはケーブル編みが上品で、ハンドリンキングによって足を優しく包み込む。素材はカシミア×コットン。¥13,000(ホームステッド リミテッド〈コーギー〉)
夏でも高原の別荘で過ごすようなシーンには、上質なソックスが必須。コーギーの英国製ソックスはケーブル編みが上品で、ハンドリンキングによって足を優しく包み込む。素材はカシミア×コットン。¥13,000(ホームステッド リミテッド〈コーギー〉)

いかがだろうか? ここでは快適に過ごせる部屋着アイテムを紹介した。外出用のスーツやジャケットだけではなく、自宅の部屋着にこだわることこそ、ジェントルマンへの第一歩なのだ。

※価格はすべて税抜です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
撮影/唐澤光也(パイルドライバー/静物)