インビテーションを開封し、ドレスコードとして「ブラックタイ着用」と記されていたならば、それはすなわち、タキシードを着用することを意味する。それが一生に一度であったとしても、慌てて準備するようでは紳士の風上にも置けない。いついかなるときも、タキシードをワードローブに備えておくことは、紳士の心得なのである。

普遍的でありながらモダン。パーフェクトなタキシード

ハンドテーラリングを駆使した「ラルフ ローレン パープル レーベル」のタキシードが、夜会に臨む東京ジェントルマンを引き立てる。ジャケットのピークドラペルで1ボタンのスタイルは普遍的だが、クラシックに傾倒しすぎず、モダンなフィーリングに仕上がっている。紳士のワードローブに備えておくべきは、世界中で通用するこの極上の一着だ!

タキシード¥260,000・シャツ¥55,000・ボウタイ¥16,000・カマーバンド¥30,000・カフリンクス/参考商品・靴/参考商品(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレン パープル レーベル〉) その他/私物
タキシード¥260,000・シャツ¥55,000・ボウタイ¥16,000・カマーバンド¥30,000・カフリンクス/参考商品・靴/参考商品(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレン パープル レーベル〉) その他/私物

 洋服の最もフォーマルなスタイルはホワイトタイ、燕尾服(テールコート)である。しかしこの最高礼のイブニングウエアは特殊で、現在は王室関係、外交関係の集まりで着用される以外にはあまり見かけない。代わってディナージャケット、米国流に言えばタキシードが主役になった。
 ところがこのタキシード、日本では冷遇されっぱなしだ。おおざっぱに冠婚葬祭というが、一般人ならせいぜい結婚披露宴に着ていくぐらいしか機会がないから、人は次第に遠ざかり、あげくはダークスーツでお茶をにごすことになる。
 しかしこれは現代日本が生んだ服装生活の悲劇である。なぜなら、タキシードぐらい男性が男性らしく、上品かつ「立派に」見える服はないからである。
 そしてもうひとつ重大事がある。タキシードを着ないということは、イブニングドレスを着た女性をエスコートしない、できないということを意味するのである。
 妻でも、恋人でも、母でも、娘でもいい。最愛の女性の晴れ姿にアテンドするという崇高な役目を担えない男がジェントルマンといえるのであろうか?

タキシードコーデをさらにエレガントにする7つの神器

  • チーフは白で清潔感を添える。 左/シルクのチーフは3ピークスの挿し方に。¥8,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ターンブル&アッサー)右/素材はコットン×リネン。スクエアな挿し方で。¥14,000(ブリオーニ ジャパン)
  • ボウタイは黒無地に限らず、シーンに応じて使い分けを。上/¥10,000(ハケット ロンドン 銀座) 中/¥15,000(トゥモローランド〈ブレック〉)下/¥11,000(ユナイテッドアローズ原宿本店 メンズ館〈フィオリオ〉)
  • ダブルカフスのシャツには、気品漂うカフリンクスを。この固定式のカフリンクスはホワイトマザーオブパールとスターリングシルバーの組み合わせで、その魅力は普遍的。¥42,000(リシュモンジャパン〈ダンヒル〉)
  • ソックスはひざ下丈のホーズを。脚を組んだ際、肌が見えてしまっては紳士失格だ。これは英国製で、細リブのドレッシーなタイプ。絶対に間違いがない選択だ。¥3,200(リーミルズ エージェンシー〈パンセレラ〉)
  • タキシードに必須のアイテムがウエストをカバーするカマーバンド。黒無地のシルク製が正式で、遊びを入れる必要はない。ヒダを上向きにして身につけるのが鉄則。¥14,000(ブルックス ブラザーズ ジャパン)
  • 呼称のとおり、折れた襟先が鳥の 翼のように見えるシャツ。フライフ ロントでダブルカフス、これがタキ シードに合わせるシャツの基本であ ることは言うまでもない。¥38,000 (イザイア ナポリ 東京ミッドタウン) 
  • オペラパンプスも正式なれど、トゥーマッチ。エナメルの内羽根式プレーントウが最適。「ジョン ロブ」の『ガルニエ2』はスマートなフォルムを描き、気高いイメージを足元に添える。¥230,000(ジョン ロブ ジャパン)
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いかがだろう? 必要があるから揃えるのではなく、紳士の身だしなみの要としてフォーマルウエアを準備しておく、と考えれば、紳士たる者、おろそかにはできないのである。

※価格はすべて税抜です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
撮影/川田有二(人物)、唐澤光也(パイルドライバー/静物)スタイリスト/櫻井賢之 ヘア&メーク/MASAYUKI モデル/Yaron