毎朝、会社に行くのが憂鬱……。その原因は、仕事そのものが嫌なのではなく、職場の人間関係にあることがほとんどではないでしょうか。
「あなたのためを思って」と余計なアドバイスを押し付けてくる人。「でも」「どうせ」「だって」と悲観的な人。「あなたより私のほうが」と何かと張り合ってくる人。
こういう人がズケズケと自分の領域に入り込んでくるのは非常に厄介ですが、「職場で角を立てたくないし、自分さえ我慢すれば…」と、仕方なく相手のペースに合わせている人は多いはず。でも、そんな無理を続けていると、ストレスで仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼすだけでなく、心身にも不調をきたすことになりかねません!
カウンセラーのおのころ心平さんによれば、人間関係をスムーズに心地よいものにするには、「自分と他人との間の境界線=バウンダリー」をきちんと引くことがとても重要とのこと。
境界線を引く……といっても、面と向かって「やめてください!」と拒絶するのではなく、実は日常的なちょっとした振る舞いで、相手にそれとは気づかれることなく、ほどよく距離をおくことができるのだそうです。
今回は、おのころさんの著書『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』を参考に、職場によくいる困った人間7タイプへの対処法をご紹介します。
職場の困った人間7つのタイプへの対処法
■1:押し付けがましい人の対処法
「あなたのためを思って」とか「普通は~でしょ」などと自分の価値基準を押し付けてくる人は、基本的に悪気がないのが非常に厄介。自分が良いと思っていることは相手にとっても良いことだと思い込んでおり、アドバイスを聞いたふりをしていると、「もっと教えてあげなきゃ!」と押し付けがましさが強くなる恐れがあります。
「そのアドバイスもう結構!」と、面と向かって言えないのであれば、仕草でさりげなくメッセージを伝えましょう。
例えば、腕組みは自分の領域に相手が入ってくるのを防ごうとする仕草。相手の意見に同意したくないときは、意識的に腕を組むと良いとのことです。
ほかにも、『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』では、下記のような仕草が紹介されています。
・右肩を下げる・・・不機嫌、ちょっとイラっとしている
・左肩を下げる・・・退屈、話題を変えたい
・右肩を前に出す・・・もういいじゃないですか、もうやめましょうよ
・左肩を前に出す・・・私はあきらめません
おのころさんによれば、体の仕草は言葉以上のメッセージを発信することができ、相手とのバウンダリーを引くのに有効とのこと。腕を組んだり、肩を上げ下げしたりするくらいならとても簡単ですよね。
はっきりと口に出すのとは違って、すぐには効果が表れないかもしれませんが、押し付けがましい人からのアドバイスが始まったら、ぜひ上記の仕草を意識的に行って自分の領域を守るようにしましょう。
■2:愚痴ばかりの人の対処法
「上司のせいで仕事がうまくいかない」「景気のせいでこんな会社しか入れなかった」など、なんでも他人や環境、状況のせいにして愚痴ばかり言う人がそばにいると、うんざりしますよね。
実際、ネガティブな感情というのは感染しやすく、愚痴っぽい人をまともに相手にすると自分の体調が悪くなってしまう恐れもあるとのこと。
否定的な空気に汚染されてしまわないように、愚痴ばかりの人とはなるべく場を共有しないようにしましょう。
もし、愚痴を言う人と話をしなければならない状況になっても、話を聞くのは5分だけにすること。その後は、スマホの着信に目を向けたり、そばを通る人に挨拶したりなどして、その場を離れる機会を探りましょう。5分経過した時点で、「あっ、すみません。ちょっと納期が押していて…」と仕事を口実に強制的にシャットアウトするのもいいかもしれませんね。
共感力の高い優しい人ほど「人の話はしっかり聞かないと失礼だ」などと考えがちですが、愚痴をまともに受け取っても自分の健康を害するだけです。また、愚痴を聞いたところで相手のネガティブ思考が改善されるわけでもないので、ここは自分の身を守ることに徹しましょう。
■3:悲観的な人の対処法
「でも」「どうせ」「だって」と悲観的で心配ばかりしている人は、職場の雰囲気を盛り下げるムードブレイカー。上記の「愚痴ばかりの人」とネガティブという共通点がありますが、他人のせいにするのではなく、自信のなさを主張したり、自分を責めたりする言い方が目立ちます。
この手の人に安易に「もっとポジティブになれば?」「いちいち心配したって仕方がないよ」などと正論を述べても、「でもそんなことできない」「だって気になるものは気になる」「どうせ私はネガティブ」などと3D用語で反撃されるのが関の山。うまく付き合うには、その人のよいところを見つけて褒めてあげましょう。
というのも、悲観的な人は、心配性であるがゆえに細かいことを丁寧に行う資質があるのだそうです。
ただ、相手の不安や心配事を聞いているだけでは、自分までその後ろ向きの考え方に染まってしまうことにもなりかねません。その人がこだわって完璧主義といえるほど丁寧に遂行していることについて「すごいね!」と褒め続けて、相手の自尊感情を育ててあげましょう。
■4:嫌味を言う人の対処法
「いいね、お気楽で」「そんなことも知らないの?」など、いちいち嫌味を言う人と仕事しなければならないのは苦痛の極みですよね。このタイプに対しても「すごいですね!」という単純な褒め技が有効とのこと。
というのも、嫌味を言う人というのは、「自分はこんなに耐えている」「こんなことも知っている」などと自分の努力や能力をアピールしたいのだそうです。周囲から認められたくて仕方がないのに、承認欲求が満たされないがゆえに余計なひと言が口をついて出てしまうのかもしれません。
自分を嫌な感情にする相手を持ち上げることに抵抗がある人も多いでしょうが、嫌味を言う人ほど褒められることに慣れていないため、褒めてくれる相手には心を開いて味方になってくれる可能性が高いのだそう。
嫌味を言われたらただ苦笑いで流すのではなく、ひとつ言われたら、3つ褒め返すくらいの気概で臨みましょう!
■5:張り合ってくる人の対処法
何気ない会話のなかで、いちいち張り合ってくる人っていますよね。例えば、「最近、残業が多くて…」とこぼせば「私だって今週はもう●時間超勤している」。「次の休みは北海道に行く予定なんだけど」と言えば「私が北海道に行ったときには」と話をかっさらう。
この手のマウンティング女子は、常に自分が一番でありたいという欲求を抑えられない性格。矛先をそらすには、その人がとてもかなわないと思える人物に意識を向けさせることが有効とのことです。
その人がどんな人を尊敬しているのか、憧れの人、ファンになっている芸能人や作家のことを聞き出しましょう。その話題を会話の中心にすれば、矛先がそれて、むやみに目の前の相手に張り合うことは少なくなるそうです。
相手に気分よく憧れの人物について語らせて、無益なマウンティング合戦に巻き込まれないようにしましょう。
■6:イライラを伝染させる人の対処法
いつも不機嫌モードを全開にしている人が職場にいると、「怒らせてはまずい」と変な緊張感が蔓延して仕事に集中できず、生産性が下がりがちですよね。
どこに地雷が埋まっているかわからないからといって、腫物にさわるような扱いをするばかりでは、ますます相手の不機嫌を助長するばかりで事態は一向に改善しません。イライラを伝染させる人に対しては、敢えて相手の懐に飛び込んで、敬意の念をもってお付き合いしましょう。
というのも、この手のタイプは、自分が粗末に扱われたり、少しでも不利な状況におかれたりしていないか神経をとがらせてイライラを発動しているのだそう。裏を返せば、特別扱いや丁寧な物言いにも感度が高く、尊重されると素直に喜びます。
だからこそ、「おはようございます」などとしっかり挨拶を交わしたり、相手が少し大変そうにしているときに進んで手伝ってあげたりすること。周囲が敬遠したくなるような人物こそ、ツボさえ突けば実は非常に与しやすい相手ともいえるのです。
■7:上から目線で話す人の対処法
「私も昔はそうだった」「そんなに甘くはないよ」など上から目線のアドバイスに耳をふさぎたくなることはありませんか?
上から目線のアドバイスに対しては、はじめの「押し付けがましい人」の項目で紹介した仕草でやんわりと拒絶するのがひとつの方法。
また、上司など本当に立場が上というのではなく、対等な立場なはずの同僚などからの上から目線発言が気になる場合は、シャークケージという対処法もおすすめとのことです。
シャークケージとは、「檻の中のサメが暴れだす」というのが語源。上から目線発言をこれまで甘受していた人が、「それどういうこと!?」といきなり強烈に怒るという手法です。一気に怒った後、冷静になって「ごめん、興奮して言い過ぎちゃった」と関係を取り直しましょう。
というのも、上から目線発言が多い人というのは、その人のなかで「自分が上で相手が下」という図式ができあがってしまっています。それが間違いだと気づかせるためには、シャークケージのような一種のショック療法に頼るのが非常に有効なのです。
いきなり態度を豹変させるのは勇気がいること。ですが、このままストレスの溜まる関係を続けてもいいのか、それとも、一時的に気まずくなっても状況を打開したいのか、決めるのは自分次第です。「もう上から目線発言は懲り懲り!」というのであれば、思い切ってシャークケージにトライしましょう。
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いずれも日常のちょっとした心がけでできることばかりですよね。職場の人間関係に悩んでいる人はぜひ今日から実践してみてはいかがでしょうか。
『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』おのころ心平・著 同文舘出版
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美