ジープ・ブランドの中核、ラングラーが2018年に11年ぶりのフルモデルチェンジを施されて登場。それを記念した導入限定車がこの「アンリミテッド サハラ ローンチエディション」。現在はすでに完売しているため、というか発売と同時にほぼ完売だったようだが、この3月1日より、通常モデルの「アンリミテッド サハラ」の受注が開始され、こちらも順調な立ち上がりを見せているという。無二の魅力を放つクロスカントリー車の走りっぷりを、自動車ライターの佐藤篤司氏が試した。

パートタイムとフルタイムを備えた4WD

ラングラーは先代モデルから4ドアボディが選べるようになり、以来売れ筋となっている。
ラングラーは先代モデルから4ドアボディが選べるようになり、以来売れ筋となっている。
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最小回転半径は先代の7.1mから6.2mに。細道でも取り回しがしやすくなった。
最小回転半径は先代の7.1mから6.2mに。細道でも取り回しがしやすくなった。

 さて新たなラングラーだが、オフロード性能をさらに強化したと同時に、これまで以上に乗り心地、居住性、室内などのクオリティ、そして実用性を大幅に向上させて登場した。11年ぶりともなれば見た目もそれなりに、と思うのだが、新型のデザインはあくまでも伝統を守っている。ジープが1941年に誕生以来、脈々と守り続けてきた丸型ヘッドライト、7スロットグリル、そして台形ホイールアーチとボクシーなフォルムは、最新の「JL型」と呼ばれるラングラーになっても、現代版としての解釈を加えながら、まったく古さを感じさせない佇まいとして成立している。

 よく観察するとLEDライトを採用するなど、ディテール面ではモダンに進化を遂げているのだが、その全体像は大きく変化せず、世界で通用するアイコンとして成立しているのだからたいしたものである。フロントマスクを一目見ただけで、ラングラーだと瞬時に分かるのは当たり前として、さらに他のどこから見ても、まごうことなきラングラーとして認識されるのだから、何とも凄い存在感である。

 こうして伝統的なデザインを維持しながら生まれ変わったが、その中身は外観以上に大幅な進化を見せている。とくにキモとなる4WDは、オフロードでも、市街地でも、高速道路でも、気兼ねなく4WDで走れるようになった。これまでは一般路の通常走行では、ほとんどの場合、後輪駆動で走り、オフロードや雪道のようなシーンでドライバーが4WDに切り替えていた。ところが今回から、このマニュアルで切り替える伝統的なパートタイム4×4に加え、自動的に前後輪に駆動力を分配するフルタイム 4×4システム(セレクトラック® フルタイム4×4システム)を初採用しているのだ。ちなみに8速ATのシフトレバーの左横にある副変速レバーを操作すれば、走行中でもモードを変更できる。

 例えばクルーズ用では燃費なども考慮して4×2レンジの「2H」、雪道や砂利道などの未舗装路に有効な4×4レンジ「4H」、そして悪路や岩登り時などに対応した最大の駆動力を発生するローギアードの「4L」といったパートタイム4×4はこれまでどおり。今回はこれに加えて、自動的に前後輪のトラクションを配分し、オン・オフ問わず4×4を使用できるフルタイム4×4の「4H AUTO」モードが搭載されたのだ。つまり日常的な使い勝手なら、4H AUTOモードに入れておけば問題なしだ。

ジープの変わらぬ個性に惹かれる

コクピットまわりはぐっとモダンになった。それでもオープン走行時に雨に濡れても不具合が起きにくい耐候性が確保されている。始動スイッチは防水シールド済みだ。
コクピットまわりはぐっとモダンになった。それでもオープン走行時に雨に濡れても不具合が起きにくい耐候性が確保されている。始動スイッチは防水シールド済みだ。
オートモードが付いても、クロスカントリー車に副変速機は欠かせない!
オートモードが付いても、クロスカントリー車に副変速機は欠かせない!

 まず2Hを試してみると、旧型よりもかなり軽快な感じで走り出したことに感心。旧型ではそれなりにキャビンに侵入してきていた振動や騒音が、確実に低減している。きっと、ワイルドさが売りだといっていたジープファンにとっても、この快適さは歓迎されると思う。次に4H AUTOモードをセレクト。後輪駆動を基本として、電子制御によって必要に応じてトルクを前輪に伝えるモードだが、タイトターン時に少しばかりの引っかかりを感じることがあったものの、ごく普通のトルクスプリット4WDとして使えたのである。「だったら副変速機は要らないじゃないか」と思うかもしれない。が、それはジープの理念が許さないのだろう。あくまでもラングラーは道を選ばない強者でなければいけない。そのために、そしてジープを愛し続けてくれる人のためにも、自らモードを選べるという魅力を残していたのかもしれない。

 そんな思いを感じつつ、しばらく走った。質感が圧倒的に上がったキャビンで太めのステアリングを握る。ガッチリとしたシートだが、当たりはソフトで体をしっかりとホールドしてくれる。8速ATと、静々と回ってトルクで走らせる感じの最高出力284馬力、3.6ℓ V型6気筒DOHCエンジンが組み合わされた走り出しも、力強く実にスムーズ。普段使いしやすい4WDといえる。

 ボディは強化された高張力スチールと軽量アルミニウムを組み合わせによって、強度を最大限向上させていると同時に、軽量化も達成している。それでもオフロードでの走破性能や耐久性を重視するために、ボディー・オン・フレーム式の構造と前後ともにストローク感のあるコイルリジッドという足まわりは踏襲。路面のうねりなどで時々、ぐらりとボディが揺れることもあるが、それはこうした構造ゆえ仕方ない部分でもある。もちろん不快さはないから、ジープならではの個性と捉えていいだろう。

 どこから見ても伝統を感じさせるデザインと、それに包み込まれた最新のジープテクノロジー。「進化」をこれほど魅力的に伝えているクルマも珍しく、だから余計に惹かれてしまう。

着脱式の屋根を備える。
着脱式の屋根を備える。
力強いエンジンは、8速ATと組み合わせることで低燃費化を実現。
力強いエンジンは、8速ATと組み合わせることで低燃費化を実現。
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<ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ ローンチエディション>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,870×1,895×1,840mm
車重:1,980kg
駆動方式:4WD
エンジン:3,604cc V型6気筒 DOHC
トランスミッション:8速AT
最高出力:209kW(284PS)/6,400rpm
最大トルク:347Nm/4,100rpm
¥5,300,000(税抜)※ローンチエディションの価格・ただしこちらのモデルの販売は終了しています。

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この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。