世界中の人々が写真の存在を知り、その魅力の虜となった20世紀。当時、一線級のカメラをつくっていたのはドイツである。19世紀にフランスで発明され、イギリスで発展した木製暗箱カメラは一部の富裕層に向けられた工芸品だった。その後に登場した精密機械工業の申し子である金属製カメラの多くはドイツで大量に生産され、大衆の羨望の的となる。
ドイツに生まれたカメラが20世紀の写真史を動かした!
ローライの数々のファッション写真を生み出してきた美しき二眼レフ
あまたあるドイツ製カメラの中でも、ひときわ大きな輝きを放つ名機と呼ばれるカメラがある。一生一台の買い物と言っても差し支えないほど高価で、その価格に釣り合う類い稀なる性能を持った夢のカメラ。そして、気鋭の写真家にとって新たな視点を開拓する道具となり、写真の世界を変えていく資質を備えたカメラ――それがライカであり、コンタックスであり、ローライであった。
3つの個性は、それぞれの役割のもと、世界を見つめる眼として働いてきた。アンリ・カルティエ=ブレッソンがパリ、サン・ラザール駅裏で奇跡のスナップショットを撮れたのはライカを携えていたからである。ノルマンディー上陸作戦に米軍と共に参加したロバート・キャパの震える手には敵国であるドイツ製のコンタックスが握りしめられていた。可憐な表情を見せるオードリー・ヘップバーンのポートレートは、セシル・ビートンの手に包み込まれた『ローライフレックス』で撮影された。それぞれのカメラにはドラマがあり、その優秀さは撮影された数々の作品により証明されている。
一台の名機を机の上に置く。そして時折、操作してみる。全自動ではなく、人間とカメラが密に協力し合うことで一枚の写真を撮っていた時代のカメラ。ひとつひとつのノブやレバー、ボタンには役割が当てはめられ、写真を撮るための内部機構と連携している。
何もかもソフトウエアで処理される現代にあって、純粋で精密な機械=カメラを操ることには大きな意味がある。これらのカメラは、機械としての美、それを操作する楽しさを想起させてくれるのだ。
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- 戸田嘉昭・唐澤光也(パイルドライバー)