ジョージアン様式の邸宅。マホガニーのデスク。純銀のティーセット。ちょうどいい具合に(ここがポイント)汚れたクリケットのマレット……。ラルフ ローレンという名前を聞くだけで、おとぎ話のように豊かなイメージが脳髄を駆け巡る。それも仕方がないだろう。だって彼が50年近くにわたって私たちに見せてくれたのは、単なる洋服や香水といった「モノ」ではない。伝統的かつ贅沢な、究極の暮らしの「イメージ」だったのだから。欧米人でも上流階級でもない私にとってその世界は見果てぬファンタジーだが、机上くらいは夢を見たって許されるだろう。というわけで私のアンティークのデスクの上には、このブランドのフォトフレームや置き時計が飾られている。それはたった2平米に満たないささやかなラルフ ローレンワールドではあるが、私の心を1920年代のニューヨークに誘うくらいの引力は持っているのだ。
- TEXT :
- 山下英介 MEN'S Preciousファッションディレクター
- BY :
- MEN'S Precious2016年春号 静謐なる「書斎の名品」より
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭、唐澤光也(パイルドライバー)スタイリスト/石川英治(tablerockstudio)文/山下英介