かつて机上の必需品でありながら、今は使う人がめっきり減ったインクブロッター。万年筆のためだけにつくられた机上の文房具は、その昔、必需品であった。万年筆をきちんと使いたいなら、かならず押さえておきたいものである。

 このインクブロッターを使ってみると、太字の万年筆を好む人には必需品だと実感できる。

 書いた直後、インクブロッターを筆跡の上でコロンと転がせば、余分なインクが吸い取られ、文字が綺麗に定着。指を汚したり、重ねた紙にインクが移ることもない。
 また単に実用的なだけでなく、万年筆で書き、ブロッターを使う、という一連の所作は、実に古典的で密かな満足感を与えてくれもする。
 万年筆の名門、モンブランにも、このインクブロッターがある。全面がイタリア産フルグレインカーフスキン張りで仕上げられ、雰囲気は重厚そのもの。実際にも重いのだが、これがプラスに作用し、軽い力で確実に仕事をこなしてくれる。
 机上にあっては、決して目立つ存在ではないインクブロッター。だが、そこにあるだけで威厳と伝統を感じさせる、希有な名品である。

威厳と伝統を感じさせる、希有な名品

『インクブロッター』¥61,000[長さ175×幅70×厚み45㎜]交換用吸い取り紙がセット。(モンブラン コンタクトセンター)
『インクブロッター』¥61,000[長さ175×幅70×厚み45㎜]交換用吸い取り紙がセット。(モンブラン コンタクトセンター)

革製品の品質の高さでも認められているモンブラン。このインクブロッターは、イタリアの革製品産業の中心地、フィレンツェにある自社のレザーセンターで、丹念につくられている。

インクブロッターについて、知っていただけただろうか。クラシックな文房具良さが見直されている今、インクブロッターにも熱い注目が集まっている。現代においても、万年筆はギフトの定番。せっかくプレゼントするのであれば、このインクブロッターも合わせてみてはいかがだろう?

※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
名畑政治 時計ジャーナリスト
BY :
MEN'S Precious 2016年春号 静謐なる「書斎の名品」より 
クレジット :
撮影/戸田嘉昭、唐澤光也(パイルドライバー)スタイリスト/石川英治(tablerockstudio)レイアウト/大塚將生 構成/堀 けいこ 文/名畑政治